- マスターしたい指導技術集
- 教師力・仕事術
50m走の記録を測ったのに、走り終えた子は応援をしようともしない。まったく最近の子は応援もできないんですよ。
ノートをたくさん書こうとしない。まじめに授業を受ける気がないのかしら。
ついつい、教え子のことで、愚痴を言ってしまう。
そんな会話に注意したいものです。
教師のタブーの一つに、「教え子の悪口を言う」があります。
これは、やってはいけません。
なぜなら、悪口を言ったら、そこで指導がストップしてしまうことがあるからです。
指導がうまくいかないのを、教え子の質のせいにしてしまうからです。
『教え子の質に文句を言わない。』これは、プロとしての心得です。
さて、この場面、教師の何が問題なのでしょうか。
まず、50m走の場面。
「走り終えた子が、応援しようとしない」という話でした。
この場合、「先に望ましい行動を示す」ことをしなかったのが、だめなのです。
授業の前に言っておくべきだったのです。
「走り終えた人は、応援をしてあげてね。」
こう説明するだけで、子どもの意識の中に、教師の考える「望ましい行動」が入ります。
「応援することも知らない」子どもが悪いのではありません。「こういうときは応援をするんだよ」と教えない教師が悪いのです。
さらに言えば、「応援」といっても、具体的に、どのような応援を、どの程度すればいいのかが分かりません。
そこで、お手本を見せたり、説明したりといったことが必要になります。
「50m走はね、後半だんだん苦しくなってくるから。40mぐらいのところで並んで座って。がんばれー!って、手をたたきながら応援してあげてね。(やってみせる。)」
そのあと、できている子をほめていきます。
ほめることで、望ましい行動が子どもに定着していくのです。
2番目の例「ノートをたくさん書こうとしない。」も同じです。
ノートをあまり書かない集団を受けもったとしましょう。
授業の開始、次のように望ましい行動を示します。
「ノートをしっかり書くと、書く力もつくし、頭も賢くなります。今日は、自分の考えを書くときに、3行を目標に書いてごらん。」
あえて、3行という「ちょっと頑張ればできそうなゴール」を示します。
すると、今までノートをあまりとらなかった子も、少し頑張ろうとします。
いつもは、1行ぐらいの子が、3行ぐらい書くのです。
教師から見ると微々たる差に思えますが、その子なりに、教師の「望ましい行動」の話を聞いて、頑張ったのです。
いつも1行。でも今日は3行。
こういった「教師から見ると微々たる差に思える頑張り」を見つけて、ほめます。
「よく頑張ったね。ノートをたくさん書くのはとても良いことなんだよ。」
望ましい行動を先に示すことで、必ず頑張る子がいます。
その子をしっかりとほめると、望ましい行動が定着し、広がっていきます。
『先に望ましい行動を示す』
↓
『望ましい行動をする子が現れる』
↓
『教師がほめる』
↓
『望ましい行動が広がっていく』
このような、良いサイクルができれば、学級に望ましい行動がだんだんと広がっていくのです。
教師が愚痴を言う必要はなくなります。
子どもの質に愚痴をいう前に、自問すべきです。
「望ましい行動を、先に子どもに示していただろうか?」
「その望ましい行動をとった子を、見つけてほめていただろうか?」
子どもの質に納得いかないなら、どういう方向で伸ばしたいかを、先に子どもに示すべきなのです。