- マスターしたい指導技術集
- 教師力・仕事術
1学期と2学期では授業のスピードは違います。
これは、だんだんと子どもが鍛えられてきたからです。
反対に、3学期になっても遅々として授業が進まないなら、あまり鍛えられていないということかもしれません。
例えば、算数の問題文を読ませる場面。
1学期には、本文を丁寧に読ませます。
まず、教師がお手本で読んでやります。
次に、子どもにも斉読させます。
それも3回ぐらい読ませます。
最後に、教師がもう一度問題文を読んでやります。
子どもたちは、範読を聴いて、問題文を理解します。
ここまでやっておいてから、「式を書きなさい」と指示します。
多くの子が、式を書けるはずです。
しかし、毎回何度も読ませていると、子どもの頭は鍛えられません。
そこで、だんだんと、読ませる回数を減らしていくようにします。
例えば、いつもは3回読ませていたのに、子どもに2回読ませただけで、「式を書きなさい」と指示するのです。
すると、子どもに変化が現れます。
のんべんだらりと問題文を音読するのではなく、「音読しながら問題文の意味も考えておかないとまずい」と思うようになるのです。
そうしないと、「式を書きなさい」と教師から指示が出たときに、パッと式が書けないからです。
音読の回数を減らすだけで、緊張感が生まれます。
子どもの頭も、鍛えられます。
このように、のんべんだらりと毎回同じことをやるのではなく、少しずつレベルをあげて授業を進めるようにします。
いわば、抵抗が少なくスムーズに流れる授業ではなく、あえてハードルを用意して、抵抗が生じるようにしていくのです。
教師にとってみれば、授業を「ほんの少し変えただけ」です。
しかし、子どもにとってみれば、「ずいぶん抵抗のある授業になった」と感じます。
1学期と2学期と3学期では、だんだんと子どもにとって抵抗の大きな授業になっていかなくてはならないのです。
理科なら、「実験方法で、どんなものがあるかな?」と尋ねます。
最初、子どもはきょとんとしています。
今まで実験方法を考えることなどなかった子どもほど、何も言えなくて困っています。
でもそれでいいのです。最初は試みに尋ねてみるのです。もし、それで子どもが実験方法を一つでも考えることができたのなら、力強くほめます。
そして、「これから先、自分で実験方法を考えることができたらいいね」と助言します。
発問に対する答えも、少しずつ高いものを求めていきます。
1学期は子どもが答えを言っただけで、何を言ってもほめて認める先生が多いことでしょう。
しかし、だんだんと質の高い意見を求めていくようにするのです。
「当てずっぽうで何でも答えるのではなく、写真にヒントがありますからよく見なさい。先生が提示している写真にはちゃんと意味があるのです。」
「今までの授業で先生が尋ねてきたことを考えてから意見を言いなさい。」
「前に出た◯◯さんの発表から考えなさい。」
「黒板に書かれてあることに、ちゃんとヒントがある。それを参考に考えなさい。」
いつまでも当てずっぽうの意見を認めてほめるのではなく、時には質の高い考え方、意見の出し方を教えていくようにするのです。
このような「抵抗」のある授業をすることで、子どもに、「もっとすばやく考えなさい」とか、「学習の流れを意識しなさい」とか、「友達の意見をきちんと聞いておきなさい」とか、そういうことを教えていくことができます。
指名ですら、1学期は一人ひとり丁寧にゆっくり当てていたのを、2学期はパッパと指名していくようにするのです。指名を速くしただけで、抵抗のある授業になります。
これだけで、「ちゃんと聞いておきなさい」、「すぐに答えられるように考えておきなさい」、「ぼーっとしてはいけませんよ」、「先生は待ちませんよ」、といった指導になっているのです。
一番恐れなくてはならないのは、学習に余裕が出てくると、緊張感がなくなることです。
授業では、適度な抵抗が子どもに生じるようにしなくてはいけないのです。
算数の問題を読む回数を一つ減らしただけでも、それは、抵抗のある授業になっています。子どもが抵抗を感じ、鍛えられるような授業にしていきたいものです。