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学年全体で、お楽しみ会をしたときのことです。
そのお楽しみ会では、学級対抗でゲームをすることになりました。
ゲームの企画は、子どもたちで行います。
実行委員を立候補で決め、リーダーになってもらいました。
学級からは、多くの子が、リーダーに立候補しました。
リーダーは、ゲームを考え、チームを盛り上げるという役を担います。
さて、当日です。
リーダーの想定通りには、なかなか事が運ばないこともあります。
思い通りに、子どもたちが動いてくれず、リーダーが四苦八苦する場面もありました。
最初は、なかなかゲームを盛り上げられなかったリーダー達。しかし、会が進行するにつれて、少しずつ、みんなを盛り上げることができてきました。
そうして、最後のゲームでのこと。
私の学級が、最後の最後、大逆転で、100点差をつけられて負けてしまったのです。
それまではよい勝負をしていただけに、学級全体が意気消沈してしまいました。お楽しみ会が終わって教室に戻るときも、ショックで下を向いてしまっています。中には、不満そうな顔をしている子もいます。
特に、リーダーの落ち込みぶりは激しく、顔面蒼白といった感じになっていました。
さて、こういうときにどう教師は対応すればよいのでしょうか。
せっかく協力ができて、良いムードが漂い始めたのに、最後の大逆転で、負けてしまったのです。こういうときには、教師は頑張ったリーダーに、必ずフォローを入れなくてはなりません。
教室に帰ってから言いました。
「最後の最後。クイズ勝負で負けてしまいました。
もし、最後のクイズ勝負がなければ、優勝していたのです。
最後の勝負まで一番得点が高かったのは、みなさんでした。
一番協力できていたのだと、先生は思っています。
でも、「最後の最後に大逆転」というのはゲームではよくあることです。
リーダー達は、あえて、大逆転の点数を用意してくれていたのです。
だから、残念だったけど、そういうことはあるのです。
先生が立派だと思ったのは、みんなが負けた瞬間に、文句を言わなかったことです。
普通、最後に100点差をつけられたら、腹が立つよね。
でも文句を言わずにいた。それがすごいなって先生は思いました。
結局、一番負けになったけど、でも最後まで、よく協力できていて、優勝に一番近かったのも、みんなでした。
だから一番負けではなくて、本当は優勝していたチームですから、じぶんや仲間に拍手を送りましょう。」
このように、出来事の意味づけを語ってやると、子どもは納得するものです。
さて、この後です。正直者が報われるように、フォローを入れていくのです。
「さて、みんなが優勝に一番近かったのも、楽しくゲームができたのも、協力ができたのも、盛り上がったのも、リーダーのおかげです。今日のお楽しみ会はとても充実していたと、先生は思います。リーダーのみなさん、お疲れ様でした。みんなで「よく頑張ったね!」の拍手をしてあげましょう。」
このように、リーダーをした子どもたちの頑張りを認めなくてはならないのです。
リーダーが一生懸命頑張ったのに、最下位では、立つ瀬がなくなります。
最下位で終わっても、良かった点はあるはずであり、その点を挙げて、価値付けしてやることが大切なのです。
もう一つ例を挙げます。
これも、あるイベントを学年全体でやることになったときのことです。
一人のやんちゃな子が、イベントの開催場所をすっかり忘れて、遅刻してきました。
遅刻のため、そのイベントを始めるのが、遅くなったのです。
このとき、そっと声をかけました。
「失敗は仕方ないです。でも、失敗のままで終わるのではなく、挽回するのが大切です。」
すると、その子はイベントを盛り上げようと、大きな声で応援したり、進んで活動に参加したりしたのです。
私はそれを見て、教室に帰ってから子どもたちに話しました。
「先生はとても嬉しいことがありました。それは、遅刻してきたAさんです。遅刻はしてきたんだけど、その後、人一倍、イベントを盛り上げてくれました。
普通は、遅刻したら恥ずかしくて、小さくなってしまいますよね。でも、挽回しようと、一生懸命頑張ったのです。これは、心が強い人しかできませんね。Aさんは、心が強いなあと思いました。
少々失敗しても、挽回すれば失敗も帳消しになります。みんなも見習ってほしいと思います。」
こう言うと、その子は、顔を紅潮させながら、会心の笑みを浮かべました。
多少失敗しようが、正直に頑張っている子は、しっかりと認めることが大切です。正直者が報われるからこそ、前向きな気持ちが学級に浸透してくるのです。