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プリントを配布するときに騒がしいのです。
少しでも隙ができると、すぐにおしゃべりをしてしまいます。
おしゃべりに悩む若い先生は多いようです。
どのように対処しているかを尋ねると、同じような答えが返ってきます。
それは、「教師が注意をして、静かにさせている」ということです。
「おしゃべりを止めなさい。」
「うるさいよ!」
4月は優しく注意していたのですが、5月ぐらいから、きつく注意するようになり、6月になると、怒鳴るようになっている。
そんな若い先生が少なくありません。
きつく注意しないと、おしゃべりが止まらなくなってしまっているのです。
では、「教師がいる間も,おしゃべりが頻発する」、「何かやろうとするといつも、おしゃべりを止めさせるところから出発しないといけない」場合。
いったいどうすれば、おしゃべりをなくせるのでしょうか。
「教師一人 対 子ども集団」という構図で注意をするのは、効果的ではありません。
この手法では、限界があるのです。
やんちゃな子どもたちであれば、教師の言うことを素直に聞かないこともあるでしょう。その結果、教師の注意の仕方がエスカレートしていって、最後は毎日怒鳴るといったことになるのです。
この「教師一人 対 子ども集団」という構図を変えなくてはなりません。
「子どもたち同士」で、注意し合える関係をつくっていくべきなのです。
言ってみれば、「子ども達 対 子ども達」の構図にして、集団の中で、望ましい行動がとれるようにしていくのです。
例えばプリントを配る際、うるさいのであれば、次のように言います。
「静かになった列からプリントを配ります。」
そうすると、状況は一変します。
いつまでもおしゃべりをしようとはしなくなります。
早くおしゃべりを止めた列からプリントを配ってもらえるからです。
これで、教室はだんだんとシーンとなっていきます。
この言葉かけを続けていると、やがて、変化が訪れます。
プリントを配ろうとしただけで、子どもたちは「あっ、静かな列からプリントを配るから、おしゃべりを止めよう」となるわけです。つまり、「プリントを配る前は、静かにしておきなさい」ということを暗黙のうちに教えているのです。
さらに、何度かやっていると変化が見られてきます。
それは、いつまでもおしゃべりをしていた子を、他の子が注意をするようになるのです。
子ども同士で、互いに注意し合って、おしゃべりを止めさせようとするのです。
つまり、集団の中にもともとある「教育力」が発揮されるようになるのです。
こうなると、「教師一人 対 子ども集団」という構図は崩れます。
「教師一人が注意する」といった状況から、「教師は何もしなくても、子ども同士で注意し合う」といった状況に変わるのです。そして、自然と、おしゃべりがなくなるというわけです。
教師一人が注意して、子どもをきちんとさせようとするのではなく、子ども集団の中の教育力を利用すべきなのです。
もう一つ例を挙げます。
例えば、補教に入った学級が荒れていたとしましょう。
教師が授業を始めても、いっこうにおしゃべりが止みません。
注意をしても、おしゃべりを続け、ふざけているとしましょう。
普通は、こんな状態でも、知的に満足させる楽しい授業をしていれば、だんだんと授業に集中して、自然と静かになります。荒れている学級でも、興味のある楽しい授業だと、授業に集中できるのです。
しかし、仮に、楽しい授業をしても静かにならなかったとしましょう。
仕方ないので、次のように言います。
「おしゃべりをしていると、先生の声が聞こえないので、授業が切れてしまいます。授業が切れた分、授業を延ばすことにします。」
これを聴いたとたん、「おい!静かにしろよ」と、やんちゃ同士で、互いに注意をし始めます。そして、さっと静かになるのです。
ここからは、楽しい授業をして、「おしゃべりをせずに授業に参加してよかったな」と思わせればよいのです。
集団の中で、規律を守ろうとする雰囲気をつくるように導いてやれば、教師一人で注意をし続けるよりも、何倍も効果的に規律が浸透するのです。
子ども同士で、規律を守ろうと注意し合える関係をつくる方向に、指導することが大切なのです。