GIGAスクール構想で変える!1人1台端末の授業づくり
1人1台端末導入で、授業が確実に変わります。そして、仕事術も確実に変わります。具体的な実践のヒント・授業のノウハウを伝授!
1人1台端末の授業づくり(15)
タブレット端末時代の課題づくりA
香里ヌヴェール学院小学校樋口 万太郎
2022/8/10 掲載
  • 1人1台端末の授業づくり
  • 授業全般

 前回の続きです。前回は、

  • 普通の速度で動画をみる
  • (説明文、物語文の)音読をしましょう
  • 36÷3の計算の仕方を考えよう

といったよくある課題から、
「アナウンサーのように噛まずに音読する」という課題
「見開き1ページを1分で音読する」という課題
「36÷3の計算の仕方をこれまでの考えを使って、説明する」
といった課題へとアップデートをしようということを書きました。
 私はよくある課題を「課題1.0」、そしてアップデートした課題を「課題2.0」と呼んでいます。タブレット端末を使った実践は「課題2.0」になっておくことが求められます。今回も課題2.0について、述べていきます。

1 3年生「道のりときょり」の実践

 3年生「道のりときょり」の学習で、巻尺が登場します。そこで、「巻尺で測定をする」という経験を子どもたちに積ませよう、そしてもう1つのことをねらいにたて、授業をつくることにしました(もう1つのねらいは後述)。6月中旬の実践です。
 実際の授業では、

「巻尺を使って、測定をしよう」

と課題を子どもたちに提示しました。これは課題2.0です。
 ただ、課題を提示して、「はい、どうぞ!」では、課題2.0から課題1.0にレベルダウンをしてしまいます。私は子どもたちに、

「じゃあ、測定をしたいものをグループで10個選んでごらん」

と言いました。1人ではなくグループで10個です。なぜ、個人ではなくグループで10個にしたのか、理由は簡単です。
 巻尺は個人ではなく複数でないと測定することができない
からです。
 また、測定をしたいものを事前に決定することはあたりまえと思われるかもしれませんが、こういったきめ細やかな指導?支援?が必要です。こういった細やかな指導?支援?がないとどんなによい問題も機能しなくなります。
 実際に測定していくことで、子どもたちは測定の仕方を学んでいきます。いきなりはうまくいかないかもしれません。しかし、グループで試行錯誤していく中で、子どもたちは測定の仕方を学んでいきます。
 実際に、子どもたちが活動をしていくなかで、
「そこ、0にあっていないよ」
「まっすぐなっていないよ」
「え!?どうやって読むの!?」
といった声がきこえてきました。

2 どうして課題2.0なのか

 「巻尺を使って、測定をしよう」がどうして課題2.0なのか解説をしていきます。
 前述通り、巻尺は複数人で取り組まないといけません。つまり、
協働する必要性があるから課題2.0
と思われた方もいることでしょう。それもあります。
 しかし、それ以上に、子ども目線で考えると、

算数の授業は基本的に教室で行うという日常

算数の授業なのに教室からとびだして行うという非日常

といったように、
通常とは違う非日常の環境
から課題が2.0になっているように感じます。
 家で食べるカレーと同じ材料・にもかかわらず、キャンプファイヤーで作るカレーの方がおいしく感じることと似たような構図があるように思います。
 もちろん、こういった非日常生活を演出するだけで課題2.0になるのではありません。そのように課題を作り出すと、
活動あって学びなし
という状態になることもありえます。

3 活動後

 このような課題では、測定後、教室でどのようなものを測定し、どのような結果になったのかを全体で交流するといった場面を行いがちです。
 交流していくなかで、「私も調べたものを発表したい!」といった子どもを引き出したり、
「他にも◯◯を測定してみたい!」「私たちもそれを測定してみたい!」、
同じものを測定したにもかかわらず結果が異なったときには、「もう1度測定しなおしたい!」といったアクティブな子どもの姿を引き出すことができることでしょう。
 しかし、全員とは限りません。他のグループが測定したことに正直興味がないと考える子どももいるのではないでしょうか。もちろん、しっかり聞くことで新たな発見や自分の知らなかったことを知ることができたり、発展的に考えることができるたりするかもしれません。ただ、授業の熱が盛り下がるということが多くあることが現状です。
 今回の実践では、簡単に測定結果をし終えたあとに、
「誤差ランキンベスト3をつくろう」
という課題を追加で提示しました。
 グループで測定するものを10個決めた後、それぞれに長さの予想を立てていました。その予想の長さと測定した長さの差を求め、その中からベスト3を作る
という活動です。
 子どもたちは自然とグループで誤差を求める活動を始めます。予想は一人ひとり違います。いえ、「自然」と書きましたが、
・多くのグループが測定の結果を特定の子が持っている
・ここまでグループ活動をしている
ということまで考えて、このような活動を設定していました。つまり「仕掛け」ているのです。「おもしろ問題」「おもしろ課題」をしたらよいというわけではないのです。
 課題1.0から課題2.0にアップデートするための鍵の1つが「仕掛け」なのです。
 誤差を求めた子たちから自分たちの誤差はどうだったのかを話し合うようにしました。
 子どもたちは、誤差だけでなく「最初の予想」と「測定結果」を交えながら話をしていました。

4 もう1つのねらいとは

 冒頭でもう1つねらいがあると書きましたが、このねらいとは、
次時以降で行う距離の計算につながる経験
です。次時以降では1km=1000m、そしてkmとmを交えた距離の計算をしていきます。この実践で取り組んだ距離の計算は既習です。
 その既習をkmとmを交えた距離の計算で活用することができるように
 さらに、
 kmとmを交えた距離の計算と既習の計算の仕組みは同じであることに気づくために
ということを次時以降のねらいとして、考えていました。このように、1時間単位で授業を考えていくというよりも、単元を通して考えていくことが課題2.0には求められることになります。
 ちなみに本実践は2時間で行いました。
@ 課題を提示
A グループで10個決める
B予想を立てる
C実際に測定する
D誤差ランキングベスト3を決める
E振り返りを書く
といった流れを2時間で行いました。時間配分は実際に授業中の子どもたちの様子をみて決めていきました。

5 この授業でタブレット端末は?

 この連載のテーマは、タブレット端末ですので、最後に触れておきます。この時間、子どもたちはどこでタブレット端末を使ったでしょうか。
 1つ目は、測定するときの結果のメモ代わりとして使っていました。
 2つ目は、測定した結果の写真を撮っていました。
 3つ目は、測定した結果を教室で送り合っていました
 鉛筆や消しゴム、ノートを持っていくよりもタブレット端末、巻尺だけで手軽に活動に取り組むことができます。うん。子どもたち普段使いができていますね。

 さて、今回も課題2.0について書いてきましたが、課題2.0には弱点?デメリット?もあるのです。そういった話は次回に!

樋口 万太郎ひぐち まんたろう

1983年大阪府生まれ。大阪府公立小学校、大阪教育大学附属池田小学校を経て、2016年より京都教育大学附属桃山小学校教諭。「子どもが楽しむ・教師も楽しむ」「子どもに力がつくならなんでもいい!」をモットーに日々の算数授業を行っている。著書に、『子どもたちの学びが深まるシン課題づくり』『GIGAスクール構想で変える!1人1台端末時代の算数授業づくり』『GIGAスクール構想で変える!1人1台端末時代の授業づくり』『GIGAスクール構想で変える!1人1台端末時代の授業づくり2』『GIGAスクール構想で変える!1人1台端末時代の国語授業づくり 物語文編』『GIGAスクール構想で変える!1人1台端末時代の国語授業づくり 説明文編』『GIGAスクール構想で変える!1人1台端末時代の学級づくり』(明治図書出版)などがある。

(構成:及川)

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