GIGAスクール構想で変える!1人1台端末の授業づくり
1人1台端末導入で、授業が確実に変わります。そして、仕事術も確実に変わります。具体的な実践のヒント・授業のノウハウを伝授!
1人1台端末の授業づくり(16)
タブレット端末時代の課題づくりB
課題2.0の「闇」
香里ヌヴェール学院小学校樋口 万太郎
2022/9/10 掲載
  • 1人1台端末の授業づくり
  • 授業全般

 1回目2回目と課題2.0について書いてきました。
 (課題2.0とは、無意識に協働したくなる課題、タブレット端末のよさを感じる課題などのことです。詳しくは、これまでの記事をご覧ください)
 今回は課題2.0の「闇」について書いていきたいと思います。

1 【人工的な問い】と「天然の問い」

 私は、拙著「3つのステップでできる! ワクワク子どもが学び出す算数授業♪」(2021、学陽書房)にて、【人工的な問い】と「天然の問い」ということを提案しています。
 【人工的な問い】とは、

  • 教師が仕掛けて、生まれてきた問い
  • 教師の思惑、意図が入りすぎているように感じる問い

 「天然の問い」とは、

  • 教材に対して、子ども達の中から出てきた自然な問い

と定義づけています。
 (【人工的な問い】と「天然の問い」に優劣はありません。また、どちらも単元において必要だと考えています。)
 【人工的な問い】と「天然の問い」と考え始めたのは、自分自身の授業が【人工的な問い】ばかりだったからです。【人工的な問い】によって、子どもはアクティブになります。子どもたちも自ら動き出そうとします。
 しかし、果たしてそれでよいのでしょうか。裏を返せば、教師が仕掛ける人工的な問いがなければ、子どもはアクティブにならないということです。子どもたちも自ら動き出そうとしないかもしれません。つまり、【人工的な問い】によって、アクティブになることは人工的なアクティブ、自ら動き出すことは人工的な動きとも考えることができるということです。
 さて、ここまで【人工的な問い】と「天然の問い」について書きましたが、課題2.0とどのような関係があるのでしょうか。そうです。

課題2.0が【人工的な問い】と似ているのではないか

ということです。これが「闇」の部分です。

2 課題2.0と人工的な問いは似ている

 課題2.0が【人工的な問い】と似ているのではないかということは、課題2.0ということを提案して以来、自分でもうすうす気づいていたことです。
 ここまでに紹介した課題2.0を改めて紹介します。

  • 「アナウンサーのように噛まずに音読する」という課題
  • 「見開き1ページを1分で音読する」という課題
  • 「36÷3の計算の仕方をこれまでの考えを使って、説明する」という課題

 課題2.0について子どもにアンケートを実施したところ、

  • どのようなことをすれば良いのかわかりやすい
  • どこまですればよいのかがわかりやすい
  • とても楽しい!

といった回答が複数回答としてありました。確かに、課題2.0にはこのような効果があるのでしょう。
 ただ、見方を変えると、

どのようなことをすればよいのか、どこまですればよいのか、楽しいのかということを先生が人工的に作り出している

ということになります。
 これでは、前述のように課題2.0がなければ、子どもはアクティブにならないということです。子どもたちも自ら動き出そうとしないかもしれません。自立とは程遠い先生からの指示待ち人間になってしまうかもしれません。
 課題2.0が【人工的な問い】にしても、「どのようなことをすればよいのかわかりやすい」「どこまですればよいのかがわかりやすい」「とても楽しい!」と子ども自身が思うのであればそれでいいじゃんと言われたこともあります。
 それも一理あるのですが、目指す子ども像に違いがあります。
 私が目指す子ども像は、「自立する」子どもです。
 「自立する」子どもでは抽象的すぎます。そこで、少し解析度を上げてみると、

  • 問いを発見し、解決することができる
  • 協働することができる
  • 学びを深めることができる

などの姿を私は自立している姿だと考えています(そのための個別最適化、協働的だと考えています)。
 1つ目の「問いを発見し、解決することができる」は、問題発見力をイメージしています。これまでは、問題解決力が大切だと言われていましたが、これからの時代は問題発見力が大切です。

問題解決力とは、与えられた問いを解決する
問題発見力とは、自ら問いを発見し、自分なりに解決をする

といったように、与えられているのか、自ら問いを発見するのかで大きな違いがあります。課題2.0は与えられている課題になり、どちらかといえば問題解決力となってしまいます。

3 課題2.0のその先へ

 では、課題2.0が効果的ではない、有効ではないかといえばそうではありません。子どものアンケートにもあったように、課題2.0により、「どのようなことをすればよいのかわかりやすい」「どこまですればよいのかがわかりやすい」「とても楽しい!」と子ども自身が気づくことで、

  • 問題を解決するためにはどのようなことをすれば良いのか
  • 問題をどこまで解決すれば良いのか
  • 学習とは楽しいものである

といったことを身につけたらいいのです。
 そして、身につけた先の課題、そう、

課題2.0を超えたシン課題

へと課題をさらにアップデートすればよいのです。

 シン課題については次回以降に!

【参考・引用文献】
・樋口万太郎「3つのステップでできる! ワクワク子どもが学び出す算数授業♪」学陽書房、2021年

樋口 万太郎ひぐち まんたろう

1983年大阪府生まれ。大阪府公立小学校、大阪教育大学附属池田小学校を経て、2016年より京都教育大学附属桃山小学校教諭。「子どもが楽しむ・教師も楽しむ」「子どもに力がつくならなんでもいい!」をモットーに日々の算数授業を行っている。著書に、『子どもたちの学びが深まるシン課題づくり』『GIGAスクール構想で変える!1人1台端末時代の算数授業づくり』『GIGAスクール構想で変える!1人1台端末時代の授業づくり』『GIGAスクール構想で変える!1人1台端末時代の授業づくり2』『GIGAスクール構想で変える!1人1台端末時代の国語授業づくり 物語文編』『GIGAスクール構想で変える!1人1台端末時代の国語授業づくり 説明文編』『GIGAスクール構想で変える!1人1台端末時代の学級づくり』(明治図書出版)などがある。

(構成:及川)

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