教育オピニオン
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教育エッセイ(第3回)
子どもたちに「ものをつくる」喜びを!
奈良教育大学附属中学校教諭福田 哲也
2010/6/25 掲載

 「理科離れ」という言葉が、珍しいものでもなくなり、日本の教育の定位置につこうとしている。おまけに、子どもたちが「ものをつくる」という経験も乏しく、技術立国日本の未来が危惧されている。その原因は、ゲームやインターネット等によるものだと口をそろえて言われているが果たしてそうであろうか? 大人は、子どもたちにものをつくる場を提供しているであろうか? また、「ものづくり」の面白さを教えているだろうか? ものができたときの喜びを共有しているだろうか?

挿絵
 私は中学校の理科教師であるが、「ものづくり」の面白さに魅了され、その効果から、教育に「ものづくり」を取り入れることの重要性を訴える一人である。みなさんは、マインドストームというロボットキットをご存じだろうか。レゴ社が開発した教育用ロボットキットである。7年前、そのキットを使って、日米の中学生どうしで火星探査機のモデルをつくるプロジェクトをおこなった。部品が多様な上に、改良が簡単にできる。おまけにコンピュータによって、動きを制御することができる。子どもたちは、キャタピラを駆使したり、6輪駆動にしたり、また、昆虫のような探査機も…。その過程は、たんに手先の器用さだけでなく、子どもたちの創造力も掻き立てた。

 昨今、国内外で多くのロボットコンテストが開かれるようになったが、このマインドストームを使ったロボコンが世界規模に発展している。ロボコンにのぞむ過程において、子どもたちがさまざまな課題に直面し、試行錯誤を繰り返し、それを克服する様は、研究所や企業の科学者や技術者の営みとオーバーラップする。とはいえ、ロボット技術では優れた技術を世界に発信している日本であるが、正直のところ、日本のロボット教育のレベルは決して上位ではない。しかしながら、たんに悲観するだけでなく、子どもたちに少しでも「ものづくり」の面白さを伝え、ロボット教育の推進に努めたいと考える。

福田 哲也ふくだ てつや

1966年生。筑波大学第一学群自然学類卒業。
文部科学大臣賞科学技術賞受賞「青少年のための先進的なロボット教育の普及啓発」(2007)、第4期中央教育審議会小中理科部会委員(2007)。
編著書に「中学校新教育課程 理科の指導計画作成と授業づくり」、共著書に「中学校新学習指導要領の展開」「学力がつく総合的な学習の構築」(いずれも明治図書)などがある。

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