授業改善
教頭になって5年。
私が最も力を入れてきたのは、学校全体の授業力向上である。
学力向上の問題、学級崩壊の問題は、いずれも授業の問題である。近年増えてきた保護者からのクレームも授業に端を発していることが多い。
安定した学校運営、信頼される学校づくりを進めるためには、教師集団の授業力向上が欠かせない。
授業評価表の作成
校長の了解を得て、一昨年度から授業評価表による授業改善に取り組んできた。
授業評価表とは、授業を評価する観点をあらかじめ示しておき、それが、どの程度達成できているかを評価するための表である。本年度は、3年目となり以下の項目で実施している。
【教師の授業行為】
1 子どもたちに視線を注ぎながら、話をすることができていたか。
2 ノート作業など、書く活動を適度に組み合わせていたか。
3 授業に参加しにくい子に声をかけるなどの、対応ができていたか。
4 教師のむだな言葉を削る努力をしているか。
5 シャワーのようにほめ言葉を浴びせていたか。
【学習ルールの定着度】
6 ノートに、定規を使って直線を引いていたか。
7 呼ばれたら「はい」と返事をして立つことができたか。
8 文末に「です」「ます」などをつけてきちんと話すことができたか。
評価をするのは、教頭である私
授業を参観し、「5 あてはまる」「4 おおむねあてはまる」「2 ほとんどあてはまらない」「1 あてはまらない」の4段階で評価する。
評価項目はできるだけ具体的にした。「思考力」「教材解釈」などの抽象的な文言はできる限り避けた。観察者の主観が色濃く反映されてしまうからである。
コメントを記入する欄も設けた。ここには、評価をした理由、改善するための方向性、教材論など、気づいたことを自由に書けるようにした。
教頭の強みは、普段の授業を継続して観察できる点にある。授業評価の観点をあらかじめ示しておき、達成度を伝えることを通して授業改善を進める、これが、授業評価表導入のねらいである。
授業評価表の運用
授業評価表は、研究授業、校内での公開授業などに活用した。
昨年度の活用実績は1人の教員について2回から3回というところである。1人3回を目標にしたが、30名を越える教員がいるので、これが精一杯だった。
「数値による授業評価は、教員の反発を招く」という危惧を抱かれる方も多いと思うが、これは、運用の仕方次第である。
まず、低い評価をつけた場合は、必ず理由を書き、どう指導していくとよいかを書くようにした。また、感謝の言葉も忘れずに書いた。
授業評価表とは直接関係がないが、普段から授業の様子や子どもたちの様子を見に行き、気づいた点を指摘したり、難しい子への対応の相談に乗ったりしてきた。月1回の模擬授業研修も私が講師となって行ってきた。
授業評価表についての年度末アンケートでは、回収できた教師全員が(回収率83パーセント)「次年度も継続してほしい」のところに○をつけている。
授業は変わったか
授業評価表によってどのような成果があったか。
授業に落ち着いて取り組む児童が、学校全体で増えたというのが実感である。
こうした実感を持つようになった理由を先のアンケートをもとに述べたい。
質問項目は、授業評価表の8項目である。どの程度達成できたかを「5 達成できた」「4 おおむね達成できた」「2 あまり達成できなかった」「1 達成できなかった」の4段階で自己評価してもらった。
「5」「4」が80%を超えた項目は、以下の通りである。
1 子どもたちに視線を注ぎながら、話をすることができていたか。(90%)
2 ノート作業など、書く活動を適度に組み合わせていたか。(83%)
6 ノートに、定規を使って直線を引いていたか。(100%)
「6 ノートに、定規を使って直線を引いていたか」というのは、ノート作業を丁寧にするということの象徴でもある。子どもたちは確かに丁寧に書くようになった。学習になかなか集中できなかった子の中にはノートが激変した子も多い。作業を中心に授業を組み立てることによって、授業も安定してきた。
一方、評価が低かったのは、次の項目である。
4 教師のむだな言葉を削る努力をしているか。(36%)
5 シャワーのようにほめ言葉を浴びせていたか。(33%)
教師の言葉を削るというのは確かに難しい。私自身も、むだな指示、むだな発問を出して混乱させてしまった経験を数多く持つ。子どもをほめるということもそうである。
ただし、授業後の反省などで「むだな言葉が多かった」「子どもをほめていない」等の言葉がずいぶんと聞かれるようになってきた。意識して取り組んでいる証拠だと考えている。
「授業改善に向け、教頭は積極的に動くべきだ」というのが私の提言である。
授業改善のために「教頭だからできる」ことは、たくさんある。
授業評価表はその1つである。
教師は教えることのプロである。管理職である教頭は、立場上そのプロ集団の上に立つことになる。当然のことだが授業に対する深い知見が求められる。
授業評価表をつけることは、授業に対する知見を深める上でも効果がある。評価表を渡すという行為を通して教頭自身が評価されているからである。
私自身もまだまだ未熟である。未熟であるからこそ、学び続けていかねばならないと考えている。
わが校の教頭先生も、社会を見てくださっているのですが、すごく
ありがたいです。どんどん見せていただける方が、嬉しいです。