1 条件を踏まえた遠足作文
山ですってんころりん!
「つかれた〜。」
「がんばれ、がんばれ。」
私達は今、山に登っている。それも、石がごつごつしている所だ。
すってん!
「大丈夫!?」
すってん!
言ってるそばから私もころんだ。
「あははー。ここすべるよね。」
と、言っていたが、後ろの人たちは全然ころばなかった。
私がドジだからなのだろうか。それとも、少し急いだからだろうか。それとも、山の砂はすべるからだろうか。
まだ意味は分からない。
でも全然痛くなかったから、どうでもいい。
しかし、けがをしなかったから良かったが、もう、こんなことになりたくない。 (原文ママ)
これは今年度から担任している5年生が書いた遠足作文であり、担任して丸3週間が経った4月25日に書いた作文である。
この作文を書く前に、子どもたちに6つの条件を示した。その条件通りに書いて上記のような作文ができあがった。もし何の条件も示さなければ、「4月24日木曜日に筑波山へ遠足に行きました。」という平凡な書き出しで始まる作文となったであろう。そのような作文を書き続けても作文力は向上しない。
では、どんな条件を示めせば子どもは表現豊かに作文するようになるのか。その6つの条件を考えてみた。
2 作文上達のための6条件
条件@ 400字以内(ただし、原稿用紙20行目まで使う)
だらだらと書かず、400字に限定するからこそ子どもは表現を工夫する。「狭い土俵があってこそ相撲の技術は磨かれる」と『論文の書き方』(岩波新書)で清水幾太郎氏は述べている。まさにその通りである。
原稿用紙の最後の1行まで使うことで、子どもは考えを絞り作文を書く。そのラスト1行に作文力が凝縮される。もし2〜3行を空欄にして提出する子どもがいれば、毅然として最後まで書くように指導しなければならない。
条件A 1場面限定
1場面に限定すれば、「○月○日どこに行きました。まず何をしました。楽しかったです。次に何をしました。疲れました。」といった単なる出来事と感想を順次羅列する作文にはならず、1つの場面を深く掘り下げて表現するようになる。
広く浅い作文では表現力はいっこうに磨かれない。狭く限定して深く思考するからこそ子どもの作文力は向上する。
条件B 1文目の工夫
「動き」「台詞」「音」「心情」など、五感を使った1文目の書き出しにすれば、不思議なもので自然と2行目以降の作文も表現豊かになり、1場面に限定される文章となる。
条件C タイトル=主題
タイトルは最後に書くのが原則である。この作文で何をいいたかったのか。いわゆる主題をタイトルにすることで「筑波山遠足」や「楽しかった遠足」などの金太郎飴のようなタイトルとならなずにすむ。
条件D オチ
オチのある話にするためには文章構成を工夫しなければならない。したがって、オチのある文章は序破急や起承転結の構成となる。
例示した作文に「すってん!?」と最後にもう1つ付け加えればオチとなり、私は評価Aをつける。思わず読み手が「ぷっ」と笑ってしまうオチを意識した作文を書かせたい。
条件E 文体の統一(常体)
文末を常体で統一することで文章にリズムが生まれる。敬体では読み手に内容が伝わりにくい。小さな違いであるが大きな結果を生むのが常体と敬体の差である。
3 模範作文を印刷して配布する重要性
作文後、模範となる作文を印刷して配布することも子どもの作文力向上には欠かせない。「まねる」ことから「学び」がスタートする。また、何としても次は印刷されたいという意欲づけにもなる。作文指導のみそである。(※向山型作文指導を修正追試)
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これは文学を書くには適しているかもしれないが、論説を書くには適していない。
しかし実際に生徒たちが大人になって求められる能力は、魅力的な文学を書く能力ではない。
自己推薦文にしろ、志望動機にしろ、小論文にしろ、
論理的に物事を説明したり、自己の主張の正当性を担保できるような文章である。
作文教育をやめて、論文教育に切り替えたほうがいいのではないだろうか。
ぷっと笑えればAなのでしょうか?
この遠足作文は、書く活動の中のどこに位置づけて実践されているのでしょうか?