突然ですが、
明日、韓国語10単語のスペルテストを行います
と言われたら、どうされますか。
おそらく韓国語10単語の読み方がわからないことにはどうにもなりませんので、まずはその単語の「読み方」を勉強すると思います。読み方がわからないまま、すなわち「文字と音との繋がり」を学習しないで、単語を暗記するのは苦痛で仕方がないと思います。
しかし、全国の中学校(特に1年生の英語学習初期段階)の英語の授業では、この「文字と音との繋がり」を十分に教えないまますぐに文字指導に入っています。
言い換えれば、例えばbookがなぜ「ブック」と読むのか、「make」をなぜ「メイク」と発音するのか十分に指導されないまま、「それはそういう読み方だから、何度もノートに書いて、暗記しなさい」という、「指導」とはかけ離れた授業が展開されているのが現状ではないでしょうか。
文字1つ1つの音が繋がった結果が英単語の発音と考えよう
bookは、「bという子音」「ooという二重母音」「kという子音」がつながっている結果ですし、makeは「mという子音」、後半部分は「マジック(サイレント)e」を知っていれば初見で簡単に読むことができます。これを理解できれば、「took」、「take」や「Mike」の読み方も簡単ですよね。
こういった簡単な「文字と音との繋がりルール」(フォニックス)を知っていれば、中学校で学習する多くの単語(例外が多いので全てではありませんが……)を初見で読むことができますよね。
そして、初見である程度の数の単語を読めるという状態を作っておけば、生徒は音読活動に自信を持って取り組むことができますし、教師は発音指導が短くて済むので、浮いた時間を他の活動に充てることもできるでしょう。
指導しているフォニックスルール
フォニックスルールの中から、私が生徒に教えているルールは5つあります。代表的なものばかりです。
1.子音
授業では、アルファベットは単語の中に入ると、1つ1つに「仕事」(仕事読み)があるんだよ、と表現しています。母音(aiueo)以外のアルファベット、すなわち子音の発音をまずはしっかりと学習させます。特に、「bやpなどの破裂音」や「kやsなどの無声音」は何度も練習させ、1人1人が正しく発音できているかチェックしていきます。
2.母音
母音の5つ(aiueo)も並行して学習させていきます。特に定着率が低い「u」は何度も練習し、「ユー」にならないように指導する必要があります。
3.二重子音
「ch」や「sh」などの二重子音と呼ばれる組み合わせも指導していきます。学習者にしてみれば、別々の「仕事」をしていた2つのアルファベットが、特定の組み合わになったら違う音になるので、定着が低く難しいと言えるでしょう。さらに二重子音を定着させる上で障害となるのが、chに代表される2つ以上の「仕事」を持つものです。chは「チッ」「クッ」「シッ」と発音されるので、指導に注意が必要です。また、「gh」のように、単語の最初にある場合と最後にある場合で発音が異なるものもあります。複雑ですが、学習者にとってはこれを乗り越えれば、初見で読める単語はかなり増えていると言えるでしょう。
4.二重母音
次は、「ea」や「ie」などの二重母音です。二重母音に関しては、ポライトボエルと呼ばれるルールの学習とし、学習者の負担を考え「一文字目をアルファベット読みする」という説明にとどめます。「数多くの例外を覚え、中学校で出てくるすべての単語を初見で読めるようになること」を目標としているわけではなく、「ある程度のフォニックスルールを覚え、できるだけたくさんの単語を所見で読めること」で、後の単語学習負担を軽くすることが目標ですので、これに関しては、あまり細かく指導する必要はないと考えています。
5.マジックe
最後はマジック(サイレント)eです。このルールは、理解さえすれば読める単語が劇的に増えますので、「単語の最後がeの場合、その前の母音をアルファベット読みする場合が多い」と例を提示しながら説明しています。さらに、「cutとcute」など、マジック(サイレント)eがつくことで発音が全く変わるペアも提示できると、より生徒の学習につながるでしょう。
以上、中学校の英語初期指導の現状から、フォニックするに関する簡単な考え方、また、実際に指導しているフォニックスのルール5つでした。
従来のように単語1つ1つの読み方を教えていくのではなく、「なぜその英単語は、そういう発音になるのか」を考えて、フォニックスで紐解いて指導していくことで、劇的に単語学習に関する負担を減らすことができるのです。
中学校に進級してきたからといって、慌てて文字指導に入る必要はなく、まずはフォックスを中心とした音声から指導していき、英文を書いていく上での細かなルールはその後に回します。私は上記の内容を、入学してきた中学1年生の4月から2ヶ月近くをかけて、徹底的に指導するようにしています。当然ですが、最初の定期テストは音声中心の作問(約8割がリスニングによるフォニックス関係の問題)となります。その英語学習初期段階の2ヶ月近くは教科書をほとんど開かないことになりますが、生徒は2ヶ月でかなりの数の単語を自力で読めるようになっていますので、その後の進度に全く影響はないのです。
私たち、日本語話者の日本語習得を思い出してみると、「50音表」を必ず成長のどこかで練習しています。「か」と「い」と「ま」という3文字を読めることで、「かいま」だけではなく、「かい」と「いま」を同時に読めるようになります。この「英語版50音表」に当たるのが「フォニックス」であると考えられます。
まずは文字と音との繋がり(フォニックス)を生徒に指導し、その後の単語学習の負担を軽くさせてみてはいかがでしょうか。もちろん、2ヶ月という短い期間ですべて教えることは不可能に近いので、その後の3年間をスパイラルに指導していく必要がありますが、そこで培われた文字と音とを結びつける力は、高校でも活かされるとさえ考えています。
年度末、年度初めは膨大な業務量をこなしていますので、4月に導入しようと思ったら、年内にまとめておく必要があるのかも・・・。
何にしても、フォニックスの実践集みたいなものはないのでしょうか。
導入すべきとは分かっているので、優れた実践指導本みたいなものがあれば、ぜひ買いたいと思いますが。指導要領にフォニックスが入っていないとしても、英語教師はその良さはわかっていますから、ぜひ中学校の英語授業×フォニックス的な実践本を書いてほしいなと。
とりあえず、このページ、うちの中学校の英語教師全員に伝えました。有益な情報をありがとうございました。若いのに、すごいですねこの先生。
変な研修するくらいなら、この先生が講師になって学校への導入の仕方とか実践とか講演してくれればいいのに。文字と発音とのつながり?で苦労する子供って多いですよ、うちの子供もそうでした。実践の本とか少ないのにもびっくり。
と思ったら、この先生、小学校勤務!?
この先生が勤務している自治体、大丈夫?損してない?
どう考えても、ここまでの技術とか考え方持っている人、中学校(または高校)でしょ。
私に人事権あるなら、中学校にずっといてもらって、当然、毎年中1を指導してもらう。
まぁ、ここまで考えている人なら、どの学年もしっかり力つけられるんだろうけど。
特別、著書はないみたいだけど、この先生がこれからどこまで行くのか、楽しみ。
ここまでの先生、塾や民間からの引き抜きとかもきっとあるんだろうなぁ・・・でもとにかく多数の生徒に指導してほしいから普通の中学校でやっていってほしいな。がんばってください!
分かりやすい。
頼む、実践本を書いてくれ。書いてくれたら、絶対買う。
あと、そこまでどうやって学校に浸透させたのか、も知りたい。
というかフォニックスの実践本なんていらない英語教師いるの?のレベル。
教えて3ヶ月、やはり音との文字との連結がうまくいっていない生徒は、おいていかれています。最初の数ヶ月、下手したら数週間で、三年間の英語の勉強が決まるのかなと思っています。
そんな時にこの記事に出会い、フォニックスを導入している先生がいらっしゃることを知りました。この先生のお話をぜひ伺いたい。夏の研修で来てほしいくらいです。連絡先聞くわけにはいかないです・・よね?
英語の授業は英語でとかいう妄想より、こういった生徒の理解に徹底的に寄り添ったやり方が大切かなと感じます。おそらく、連絡をしてうちの地区で講演して頂くのは難しいと思うので、ぜひ先生のフォニックス授業の詳細や具体的手法、導入に至るまでを形にして頂けたら・・。
>最初の定期テストは音声中心の作問(約8割がリスニングによるフォニックス関係の問題)となります。その英語学習初期段階の2ヶ月近くは教科書をほとんど開かない
すげぇ!なかなかここまでできないよね。
20年以上教師をしていますが、これは生徒の才能というか感覚的な部分が大きいと思っていました。そしてそれがない生徒はどんどん遅れていく。
しかし、この記事を読んでそうではないと確信しました。
フォニックスをなんとか取り入れて、4月から生徒に指導したい。
実践的なことをまとめたものがあればいいんですけど。