- 『SCHOOL SHIFT 2』刊行特別インタビュー
- 教育学一般
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前作『SCHOOL SHIFT』は一般的な教育書に比べて発行部数も多い中で、刊行から3か月で重版になり、おかげさまで好評を博しています。
本作も、目指すものは前作と変わっていません(前回のインタビューをご参照いただければ幸いです)。しかし、「SCHOOL SHIFT」――文字通り学校教育の転換――に貢献したいと考えたとき、前作では扱いきれなかった概念や領域もまた無数に存在しています。
生成AIの台頭はちょうど前作執筆中に起こったものでしたが、人間の身体的機能の拡張である機械に対して、生成AIは頭脳的機能を拡張するという点で、今後も様々なインパクトを学校教育にも与え続けるものと考えます。だとすれば、さらに前作でも掲げた「SCHOOL SHIFT」という事象がより一層推進されることになるだろうと推測しています。そのような中で、前作に引き続き「SCHOOL SHIFT」に貢献する羅針盤の続編として活用していただきたいと思い、出版に至りました。
本作では、学校教育現場における「今」と「未来」に焦点を当てようと内容を考えました。
テクノロジーの発展と浸透は、教育とテクノロジーの従来の関係性を大きく変えました。前回は、DXという文脈でテクノロジーと学校教育を取り扱いましたが、今回はより広く視野を広げ、より良い学校教育・教育実践を創るためのテクノロジーと学校教育の関係性について、理論的な話から政策的動向と現場での実践まで取り扱うことで、前作と関連させつつ、さらに厚みを持つように配慮しました。これが1章になります。
また、テクノロジーが学校教育に影響を与えることによって、授業の形も変わっていきます。社会が複雑化・高度化して、より一層「学び」の価値が高まる中で、「学び」という営みから授業をとらえ直し、学びの創造とデザイン、それらを授業で行うために必要な概念と実践について、2章では扱っています。
この1、2章が教育環境と教育方法のSHIFTだとすれば、それを実践する学校組織に焦点が当たると思います。先生一人一人がより良い教育実践を行い、かつそれが組織によってさらに良くなるような学校組織に必要なことは何か? その視点でリフレクション(内省)やウェルビーイング、働き方改革、教師の学びという概念を中心に取り上げました。
実は前作『SCHOOL SHIFT』と関連する内容も多く、続編としてさらに理解が深まるようになっています。
今は価値観も多様化し、新たな社会に向けた胎動を感じます。同様に、学校教育も様々な教育実践や方法・概念が登場し、まさに百花斉放だと思います。何が良いのか、何を信じていけばいいのか、みんなが探し求めている時代と言えます。
しかし、正解はありません。自分なりに試行錯誤して自分自身や教育実践などをデザインしていくことが大切です。この営みの連続を一人一人が為すことによって、新たな学校教育が創られていく。「SCHOOL SHIFT」の実現が成し遂げられるのではないかと思います。
一燈を提げて暗夜を行く。暗夜を憂うること勿れ。只だ一燈を頼め。(佐藤一斎『言志四録』)
私たちの社会や学校教育、そして私たち自身、先生もまさに先が見えない暗夜を行くようなものです。そんな時だからこそ、学び、変わり続ける自分たち(一燈)を信じ、行動していきましょう。VUCA時代・人生100年時代という暗夜を行くみなさんに、本書が何らかの形で貢献できれば幸いです。