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『SCHOOL SHIFT 2』刊行特別インタビュー(2)
「シフト」はどこから生まれてくるのか
東京学芸大学附属小金井小学校鈴木 秀樹
2024/8/2 掲載
新刊『SCHOOL SHIFT 2(スクール・シフト2)』の刊行を記念した特別インタビュー。第2回は、著者の一人である東京学芸大学附属小金井小学校 鈴木秀樹氏にお話を伺いました。

鈴木 秀樹すずき ひでき

東京学芸大学附属小金井小学校教諭。慶應義塾大学非常勤講師。東京学芸大学ICTセンター所員。慶應義塾大学大学院社会学研究科教育学専攻修士課程修了。私立小勤務を経て2016年より現職。ICTを活用したインクルーシブ教育、学習者用デジタル教科書、生成AIを活用した授業づくり等が主要な研究テーマ。単著に『ICT×インクルーシブ教育 誰一人取り残さない学びへの挑戦』、編著書に『Face to Faceの教育から、学びのSide by sideへ  Microsoft 365 Educationを活用した小学校の学級づくり・授業づくり』等(いずれも明治図書)。

―GIGAスクール構想の実現と、生成AIの登場。今や日々、学校教育にも新しいテクノロジーの波が押し寄せています。そのようなシフトの只中にあって、現場の先生方が大切にすべきことは何だと感じておられますか。

 GIGAスクールとも生成AIとも関係ない答に思われるかもしれませんが、「『よい学習指導とは何か』という問いを、その目的についても方法についても真剣に問うこと」だろうと考えています。恩師である故沼野一男先生の受け売りなのですが、ICTや生成AIといったテクノロジーを活用していくことは教育現場において変えることのできないことだろうと思います。では、そうしたテクノロジーで代替することのできない、人間教師でなければできない指導とは何か。それを追い求めていく姿勢こそが一番大切ではないでしょうか。

―『SCHOOL SHIFT 2』でも、「児童の学びに寄り添うこと」へのシフトを説かれています。そのために、まずはどのようなことから、「シフト」を始めるとよいでしょうか。

 眼の前の子供をよく見ること。そして、その子供が学びやすくなるようにするために、自分が普段、行っている何かを少しだけ変えてみること、でしょうか。例えば、極めて集中力の低い子がいたとします。黒板に書かれた本時の「めあて」をノートに書くだけで疲れてしまい集中を保つことができない。だったら「めあて」を板書するのをやめてみる、みたいに。
 というようなことを言うと「めあてを板書しないなんてあり得ない」みたいなことを言われるわけですが、今まで自分が「こうすべきものだ」「こうするものだと教わった」ようなことを思い切ってやめてみるところから新しい発見を得られることは多々あります。
 自分が今までやってきた「当然だ」と思っていたことを疑ってみる。「シフト」ってそういうことだと思います。
 ちなみに僕は「めあて」を板書しないどころか、そもそも板書しません(笑)。

―学校教育のさらなる「シフト」に向けて、読者の先生方一人一人にいま、伝えたいことは何でしょうか。

 「AIを授業で活用するための3つのステップ」というテーマで講演を頼まれたことがあります。その時、頭を捻って考え出した3つのステップは以下のようなものでした。

  1. 教師としての基礎的な指導力の確立
  2. 生成AIの活用が教科の目的達成に効果をもたらすような授業の構想力
  3. 自身の授業実践を常に批判的に捉え直す覚悟

 「AI」ではなくて「ICT」でもこの3つのステップは同じだと思います。
 でも、これっていかにもICT批判派が言いそうなことではないでしょうか。ICT活用を積極的に進めている方の中には「何かというと『教科の本質こそ大切だ』『ICTは所詮ツールだ』などと言われて気が滅入っているのに、なぜ鈴木はそんなことを言うのか」と訝しる方もいらっしゃるかもしれません。
 なぜ敢えてこんなことを言うのか。それは、そういうことを言われても仕方のない隙をICT推進派が自ら作っているのではないか、と危惧しているからです。
 正直なところ、最近目にする「このツールを使ったらこんな簡単に授業ができました!」「このツールを使うのが最先端です!」という実践のアウトプットの中には眉をひそめたくなるものが少なくありません。
 「ツールの話はともかく、あなたのその授業で児童はどんな見方・考え方を働かせたのですか」「その授業であなたは児童にどんな資質能力を身に着けさせたいと考え、それはどの程度、実現することができたのですか」というように問い質したくなるときがしばしばあります。
 アウトプットすることは大切です。しかし、パッと見た目は格好良くても中身の伴わない実践をアウトプットされたらICT批判派を勢いづけるだけです。それでは意味がないですよね。
 学校教育を更に「シフト」させたい、と考えている先生方に送りたいメッセージは「ちゃんと授業しましょう!」ということです。「シフト」はちゃんと授業しようとするプロセスの中から生まれてくるのだと考えています。

(構成:大江)
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