「単元を貫く言語活動」ここが知りたいQ&A
「単元を貫く言語活動」に関する疑問・質問について徹底解説し、最新の国語授業づくりの様々な課題解決をフルサポートします!
水戸部先生に聞く!「単元を貫く言語活動」Q&A(14)
思考力を高めるノート指導の工夫
文部科学省教科調査官水戸部 修治
2015/5/15 掲載

単元を貫く言語活動の授業では、ノート指導の際にどのようなことに気を付ければよいでしょう。

まず、ノート指導の主なねらいを確かめてみましょう。子供の側から見れば、次のようなことが挙げられるでしょう。

  • 学習のねらいや自分の考えなどを記述することで、学習の見通しを立てたり考えをよりはっきりさせたりする。
  • 授業中に提示された友達の考えや教師が板書した事柄を書き留めることで、自分の課題解決に必要な情報を整理する。
  • ノートを読み返すことで、前時までの、あるいは本時の学習内容を振り返る。

 ノートを活用するということは、単なる機械的な作業ではなく、子供たちの学びをより主体的で協働的なものにしていくことなのです。ですから、単に教師の指示通りに書き写させるのではなく、子供たち自身が思考・判断・表現・交流の拠点として、ノートを活用できるようにすることが大切です。
 また、教師の側から見れば、ノートの記述内容を把握することで、子供の思考やつまずきなどを察知し、指導に生かしやすくするといった評価機能も持っています。その際、あくまでも指導のねらいに応じて、ノート指導を行っていくこととなります。
 例えば学習のまとめとして、「感想でも何でもいいから書こう」などと指示してしまうのではなく、「今日の学習で学んだことのうち、次の時間に(あるいは今度同じような学習をする際に)、生かせそうなことを書こう」などと指示することで、本時のねらいが一人一人の子供にどの程度身に付いたかがとても把握しやすくなります。

ポイントがよく分かりました! でも、言語活動を取り入れた授業では、ワークシートを書いたりリーフレットを仕上げたりするのに時間がかかって、ノート指導の時間がなかなかとれません。どうしたらいいでしょう。

確かに、これまでの実践ではワークシートやリーフレット型ツールが盛んに開発され、授業改善を大きく押し進めてきました。そうしたことをより日常的に実践できるようにするには、ノートを十分活用することが効果的です。
 例えば下の写真は、低学年の「物語を読んで大好きな一文を紹介しながら、物語の感想を伝えよう」という単元を貫く言語活動の学習のノート記述例です。

2015年5月号図1学習課題「心に残った一文を見つけて、感想を書こう」

 自分の選んだ本の紹介に向けて、教科書教材を読んで心に残った一文を見つけ、感想をまとめることができるようにすることが学習のめあてです。しかし、子供たちにとっての本来的なめあては、あくまでも自分が選んだ本の心に残る「大事な言葉や文を書き抜くこと」(指導事項エ)です。そこで、教科書で学ぶ際には、ノートに、作品を紹介するために欠かせない大事な一文を丁寧に書き抜き、その感想をまとめてノートに記述します。
 こうすることで、指導のための準備の時間も節約することができますし、子供たちは自分のノート記述を拠点にして、友達との交流を通して、感想をより明確にもつこともできるのです。

ノートには、学習のまとめを書かせています。でも、Q1で言われたように、「何でもいいから書いてみよう」と指示したり、教師のまとめを書き写させたりするだけになりがちです。どんな工夫がありますか。もっと具体的に教えて下さい。

学習のまとめとして、「何が分かったか」だけではなく、「何ができるようになったか」「それを今後どのように活用できるか」を自覚できるようにすることが大切です。
 例えば中学年において、「登場人物の性格」を主体的に捉えることをねらいとして、ABワンセット方式の学習過程を組んだ場合について考えてみましょう。

Aの時間
 教科書教材について、複数の叙述を関係付けて読み、大好きな登場人物の性格を捉える。

Bの時間
 自分の選んだ作品の大好きな登場人物の性格を、複数の叙述を関係付けて捉え、紹介する。

 ABワンセット方式(詳しくは『「単元を貫く言語活動」を位置付けた小学校国語科学習指導案パーフェクトガイド 1・2年/3・4年/5・6年(全3冊)』を参照)とは、Aの時間の次に、Bの時間の学習を行うことで、教科書教材での学びを、自分の選んだ作品の読みに適用できるようにするというシステムでしたね。こうした場合、Aの時間の学習の振り返りの記述として、「今日学んだことを、次の時間(Bの時間)にどのように生かせそうかを、ノートに書いてみましょう」と指示することが考えられます。
 「1つの文からだけではなく、性格がよく表れている複数の叙述を関係付けて、大好きな登場人物の性格を捉えてみたい」などと記述できた子は、本時の学習が身に付き、次時の学習も円滑に進められそうですね。これに対して、「性格をつかむためにがんばりたい」などと記述している場合は、具体的にどう読めばよいのかを、まとめとして書くように助言してみましょう。
 ノート記述から、次時の学習に課題がありそうだと判断される子供に対しては、本時の学習を振り返らせるとともに、次時に丁寧に個別指導を行うよう心掛けましょう。

ここをチェック!授業改善のためのポイント

単元を貫く言語活動を位置付けた授業づくりに向けて、教室の言語環境をよりよいものにするためには、次のポイントに留意しましょう。

  1. ノートを単なる機械的な作業ではなく、子供の主体的な思考・判断を表現できる場として位置付けていますか。
  2. ノートに記述するよう指示する際には、何をどのように書くのかを、指導のねらいに応じて明らかにしていますか。
  3. 子供のノート記述を、指導と評価に生かしていますか。

水戸部 修治みとべ しゅうじShuji Mitobe

 文部科学省初等中等教育局教育課程課教科調査官、国立教育政策研究所教育課程研究センター総括研究官・教育課程調査官・学力調査官。小学校教諭、県教育庁指導主事、山形大学地域教育文化学部准教授等を経て、平成20年10月より現職。
 『「単元を貫く言語活動」を位置付けた小学校国語科学習指導案パーフェクトガイド 1・2年/3・4年/5・6年(全3冊)』『単元を貫く言語活動のすべてが分かる!小学校国語科授業&評価パーフェクトガイド』『「単元を貫く言語活動」授業づくり徹底解説&実践事例24』『小学校国語科 言語活動パーフェクトガイド 1・2年/3・4年/5・6年(全3冊)』など、著書多数。

(構成:木山)
コメントの受付は終了しました。