- 単元を貫く言語活動Q&A
- 国語
今まで単元の導入では、教科書の全文を通読させて、初発の感想を書かせていました。ただ、それだけでは子供たちが学習の見通しを立てにくいようです。導入をどう工夫したらよいでしょう。
国語科以外の各教科等では、教科等の特質を生かした導入の工夫が多く見られます。例えば社会科では、社会的事象と出合わせ、問題を見出させるなどの工夫が行われることが多いでしょう。
そこで、国語科の単元の導入でも、次のような点を実現できるようにしたいものです。
- 子供たちが、単元のゴール、つまり単元を貫く言語活動の最終的な姿についての見通しをもつこと。
- 子供たちが、これまでの学習を振り返りながら、単元の学習をどのように進めていけばよいのか、どんな言葉の力を身に付ければよいのかについて見通しをもつこと。
- 子供たちが、単元の学習や、ゴールに向かって、期待を膨らませられること。
実際にどのように導入するのかを構想する際は、単元のねらいや発達の段階、子供たちの実態に応じて多様に工夫する必要がありますね。
実は、子供たちが見通しをもちやすいように、言語活動ツールのモデルをつくって提示したこともあったのですが、子供たちが思うようにのってきてくれません。どうしたらいいのでしょう。
単元を貫く言語活動の授業では、リーフレット型言語活動ツールがよく用いられるようになりました。このツールのモデルを提示してみたのですね。よい工夫です。
ただ、単元の第1時間目に、突然ツールモデルを示して「今日からこれを作ります。」などと指示しても、意欲や見通しをもてない子供も出てきてしまいます。
例えば単元の導入の10日ほど前から、単元で取り上げる関連図書などを教室に置いてみてはどうでしょう。教卓のすみに何冊か置いても効果的です。休み時間などに子供たちが集まってきたタイミングをうまくとらえて、「この本は、先生がみんなと同じ○年生の時に、大好きで読んだんだよ。」などと紹介していけば、多くの子供たちが自然に手に取って読むことでしょう。そしていよいよ第1時間目には、多くの子供が関連図書に触れた状態で導入をすることができます。その上で、お手製のツールモデルを提示すれば、効果抜群です。
また、「話すこと・聞くこと」「書くこと」の話題や課題の選定に当たっては、子供たちの関心事について日頃から情報収集し、それらを生かす工夫も有効です。
学校や学級、児童の実態に応じて、こうした工夫を是非行ってみて下さい。
リーフレット型ツールのような形が見えるものについては分かりました。けれど、例えば朗読発表会などの言語活動の場合は、どのように工夫すればよいのですか。
高学年では、指導事項の、
ア 自分の思いや考えが伝わるように音読や朗読をすること。
を指導する際の言語活動として、朗読発表会を位置付けることが考えられますね。
朗読は、音読に比べて、作品から受け止めた解釈や感動を、表現性を高めて伝えることに重点があるのが特徴です。つまり、指導事項にもあるように、自分の思いや考えを表現することが特に大切になります。
一般的には、朗読CDなどを聞かせてイメージをもたせることが多いようです。
例えば、異なる朗読家の2つの朗読を聞き比べる導入を行ってみたらどうでしょう。どちらもプロの朗読家ですから、優劣ではなく、同じ作品を朗読するのにも表現の仕方に違いがあること、その違いは、読み手が作品をどう受け止めたかによって生じることなどに気付くことができるのではないでしょうか。
このように、導入も指導のねらいを明確に把握し、単元を貫く言語活動の特徴を明らかにすることによって、工夫の糸口が見えやすくなります。
さあ、もうすぐ夏休みが明けて、子供たちが学校に戻ってきます。よい導入を期待していますよ!
ここをチェック!授業改善のためのポイント
単元を貫く言語活動を位置付けた授業づくりに向けて、ねらいにあった導入を効果的に位置付けた指導を実現させるには、次のポイントに留意しましょう。
- 単元の指導のねらいを明確に把握して、そのねらいに応じた導入を工夫していますか。
- 言語活動のツールモデルを、子供たちに示すだけではなく、見通しや期待が持てるような手立てを工夫していますか。
- 子供たちの関心事などを日頃から把握し、課題設定などに生かしていますか。