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「もう、いくつ寝ると、夏休み〜♪」
じめっとした空気に、子どもたちの熱気、エアコンのない教室は温帯モンスーンの空気そのままに、これからもっと暑くなる夏を予感させます。
そんな空気の中、一時の清流は、子どもたちが「できるようになった!」「わかった!」「楽しい!」という時に見せる笑顔です。そんな素敵な笑顔を目の当たりにした時、私たちの仕事の最高の報酬は、実はこの「子どもたちの笑顔」なんだなと、思います。そんな素敵な報酬を得られるこの仕事は、やはり最高(幸)だなと思います。
さて、今回は連載第2回目、「実践編」「理論編」の2つのコンテンツのうち、「実践編」を紹介していきたいと思います。
【席替え】試行錯誤でみんな納得
@ 席替えは「学園天国」?!
「学園天国」という曲を知ってますか? 小泉今日子? フィンガー5?(笑) 席替えで、好きなあの娘と隣の席になれるか?という学生時代のドキドキを描いた名曲です。
席替えの具体は、この明治図書のコンテンツに多くの方の素晴らしい実践があるので、そちらの方に譲りますが、席替えの権限を子どものリーダーに与えるという特権を認めるところから、このシステムの動きが始まります。
選ばれたリーダーに、席替えに関するすべての権限と責任を与えるのですが、大事なのは教師が子どもを信頼し任せきることです。「好きにしていいが、その責任はリーダーにある」ことを説明しておきます。
まず、席替えの方法から任せます。
席替えの方法
- 選ばれたリーダーが決める
- 上位の子、数名で相談して決める
- クラスみんなに席替えの方法を聞いて希望の多いやり方で決める
3は、一見、民主的でいいようですが、リーダーに選ばれても自信がない子がとる方法です。結果、席に配慮が必要な子(見えにくい、聞こえにくい)を除く子がくじ引きで決めるという、これまでと変わらないやり方になりがちで、そんな決断だったらこのリーダーでなくてもよいなと判断され、リーダーが変わることが多いです。
クラスみんなから信頼され、託されたリーダーなのだから、1の「自分がすべて決めて」よいのですが、最初はそこまでやっていいのかなという迷いがあり、結果、2の「上位数名で相談する」方法をとることが多いです。
ところが、数名で決めていると、何人かの自分の意見と合わない子の考えで、すべて自分が思うようにできないことが起こってきます。そうすると、せっかくの権限を行使できなくてもったいない、という思いが出てきて、1の方法に動いていきます。
A “好き放題”から“バランス感覚”へ
最初は、自分の好きな人を周りに集めた「同姓ハーレム」状態を短絡的に作りたがる傾向があります。サッカー部同士、野球部同士、バレーボール部同士など、同じ趣味嗜好をもつ子どもたちを集め、楽しい席を作ります。
リーダーを中心にした座席はなにやら楽しげ、片隅に追いやられた子たちは、不満があります。さらに、リーダー周辺は、授業中ついついしゃべってしまい、周りに迷惑をかけ始めます。そこで先生が一言、「リーダー、この座席はうるさくて授業しにくい。責任を取れ」。
かくして、次の選択でリーダーが変わり、座席も変わります。次のリーダーは前のリーダーと同じ轍は踏まないよう、ちょっとバランスを取った座席にしてきます。それでも、席の隣が同姓という線は変わりません。ついつい話がまた盛り上がってしまい、けじめがつかない状態が生まれます。
そこで再び先生が、「リーダー、この席も授業しにくいな〜。もうちょっと、落ち着いて授業できる座席にしなさい」と言います。といっても先生が決めるのでなく、あくまで子どもに任せます。結果が悪かったら考え直し、試行錯誤していくと、最終的には男女が隣同士のペアとなり、各班ごとにリーダーシップが取れる班長クラスがバランスよく配置された座席に行き着くのです。
はじめから、教師側がこうしなさいと決めたルールでなく、子どものリーダーを中心に試行錯誤しながら出した結論は、どの子の中にも腑に落ちた席替えの方法になり、ルールや秩序を集団の意志として決定していける、またとない学習の機会となるのです。
【掃除・片付け】困った時のリーダー頼み
何か学級で困った場面が出てきた時も、リーダーの出番です。掃除がなかった日の翌日、教室の床にゴミがあり、汚れています。そこで先生が一言、「教室が汚いね。リーダー解決してください」。そうするとリーダーはみんなに、「一人3つずつゴミを拾ってください」という指示をだし、たちどころに教室はきれいになります。
ひまわりの種をポットにまき、大きくなったので学級園に植え替えの作業をした時のことです。おおかたの植え替えが終わり、片付けに入ろうとしていました。あたりを見ると、移植ごて、使い終わったポット、じょろが散乱しており、なんと誰のものかわからない植え替えが終わっていないひまわりのポットが、1つ残されています。
通常だと、ここで先生の出番で、どうするかの指示を出すのですが、困った時のリーダー頼みなので、先生は一言「リーダー、片付けを頼みます」。
この時点でリーダーがある程度育ってきていたので、どんな行動を取るか楽しみに見ていました。すると、まずリーダーは「みんな集まってください」と子どもたちを集めました。そして次のように指示を出したのです。
「移植ごては1班の人が洗って元の場所に片付けてください。ポットは2班の人が集めて先生のところに持って行ってください。じょろは3班の人が倉庫に返してください。4班の人は先に教室に帰ってプリントやノートを配ってください。残ったひまわりはぼくが植えます」。このリーダーの株が上がったのは言うまでもありませんが、リーダーを目指す子のお手本にもなっています。
クラスのみんなが上を向く!
リーダーになったことのない子は、「一度はリーダーになりたい!」と思い、一度リーダーを経験した子は、「またリーダーになりたい!」と思うようになります。そうすると、みんなが上を向いた集団になっていくのです。
たとえば、ゴミを平気で床に捨てていた子がリーダーになった時、落ちているゴミを進んで拾う姿が見られるようになりました。リーダーを続けたいから、いいことをしようという動機付けになっています。
先生におべっかを使う子どもがたいていクラスにいますが、このシステムが機能していると、先生によく見られるより、クラスのみんなからよく見られないとリーダーになれないので、みんなに対して優しくしたり、いいことをしていくようになります。結果、みんなの気持ちや、やる気がいい方向に向いていきます。
教師の働きかけは、「リーダーに任せる」「リーダーどうにかしなさい」だけです。ただし、心の底から子どもを信頼し信じ切ることが肝要です。間違ったことも、経験していくとそれが正しいことをしていく糧になります。リーダーを中心にみんなが学び合い、高め合う姿が自然と生まれてきます。それは、居心地のよい空間を創ろうとする人間の根源的な力によるものかもしれません。この仕組み、ぜひお試しください。
ちなみにこの実践、小学校高学年ではなく、小学3年生のものです。
次回は理論編です。