- 学級リーダー
- 学級経営
新しい年度がスタートしました。1年後のイメージはおもちですか? どの子にも笑顔と自信があふれ、クラスが活発で、知的好奇心に満ちあふれた空気に包まれ、1年間の学びの成果をじっくり実感している子どもたちの姿、思い描けていますか?
先生が10人いたら、それぞれ10人の学級経営の方法があると思います。音楽が得意な先生は音楽を中心にした、ディベートが得意な先生はディベートを中心にした学級経営を仕掛けていくと思います。
しかし、得意がなくてもだれにでも取り組め、だれもがそれを実践することで学級経営がうまくいく方法(スキル)があったら試してみたいとは思いませんか?
10回にわたって紹介してきたこのアースリーダーズクラブのリーダー選びシステムを方法として取り組んだ私の実践ですが、このシステムの素晴らしいところは、だれがやっても簡単に集団づくりがうまくいくという点です。しかし、うまくいくためにはいくつかのコツあるので、今回はそれを紹介したいと思います。
クラスを変えるにはリーダーの「選び方」を変えよう
まずすることは、クラスのリーダーを選ぶ仕組みを、これまでやっていた方法から変えるということです。学級委員長や代表委員、呼び名は違うかも知れませんが、クラスのまとめ役としてのリーダー決めを、これまで立候補・推薦で候補者を選出し、多数決やくじで決めていた、または先生が指名していた方法から、この「多段階信託変更リーダー選出システム」に変えるのです。
シンプルに言えば、大きくすることはこの1点のみです。普遍のルールや選出方法は、過去の回で紹介しているので、そちらを参照してください。
新システムを機能させる4つのコツ
これまでのリーダーというのは、いわば中間管理職のようなもので、先生に期待され、みんなをまとめなければいけない反面、みんなの意見をまとめて先生にも伝えないといけないというジレンマを抱えていることもありました。先生と子どもの両バサミに合い、ストレスを抱えていたり、このポストでは思っていたほどのことができない、と感じた子どもも多かったのではと思います。
このシステムが「絵に描いた餅」にならず、しっかり機能していくために必要なコツを4つ提示します。ただし、対象は小学校3年生以上になります。
多段階信託変更リーダー選出システム
うまく機能するための4つのコツその1 子どもに権限を与えろ
その2 一度与えた権限は途中で取り上げたりせず、どんどん拡大すべし
その3 多くの失敗をさせろ
その4 子どもの力を信じ切れ
ただいま紹介した4つのコツを、実際の場面とともに考えてみましょう。
その1 子どもに権限を与えろ
〜リーダーの権限は無限大?〜
最初から大きな権限を与えると、これまでそういうことに慣れていない子どもたちは、バランスを考えたり、学校や学級のルールを考えたりすることができないため、なかなかうまくいきません。
最初は、「席替え」の権限を与える程度がちょうどよいです。通常、先生が決めたりくじ引きで決める座席を、選ばれたリーダーに一任します。
座席の決め方から決めてよいので、これまでのやり方を踏襲してくじ引きでもよいし、出席番号順でもOKです。最初は、おそるおそるどこまでやってよいか探りながらの席替えですが、教師の方から「リーダーの好きに決めていいんだよ。せっかくなんだから自分の好きなようにしてみればいいじゃん!」と背中を押します。
そのあたりから、これまでの常識を覆し、「こんなことやっていいんだ!」とリーダーの頭はパラダイス状態になります。ここで、リーダーが調子に乗って好き放題すると、今までそのリーダーを信託していた子どもたちは、たちまちそのリーダーに見切りを付け、別のリーダーに信託先を変更するので、すぐにリーダーが交代します。
次のリーダーはその轍を踏むまいと、最初のリーダーより慎重に、かつ自分の思いを座席に込めて決めていきます。これを繰り返していると、多くの子どもたちから支持を得る、バランス感覚をもったリーダーが現れてきます。そうすると、最初の安定期が訪れます。
ただ、ここで注意が必要なのは、「勉強を教える」という学習活動に関しては、授業の最終責任者である先生が権限と責任を負わなければならないということです。子どもに権限を与えるのは、あくまで集団の決めごとやルールについてのみであるということが、ここでの大事な境界線になります。
その2 一度与えた権限は途中で取り上げたりせず、どんどん拡大すべし
〜先生なくとも子は育つ!〜
決してやってはいけないのが、これまでの権限を制限したり取り上げる、ということです。権限を制限してしまうと、このシステムは成り立ちにくくなります。もう少し突き詰めていくと、最終的には先生の監視や制御なしでも、このシステムは機能していくことになります。
この仕組みは、学級担任にとって都合のよいリーダーの育成が目的ではなく、子どもの集団にとって理想的なリーダー像をみんなで試行錯誤しながら見つけ、そのリーダー像に一番近い人がだれなのかを決めていくゲームのようなものです。私のように学級経営に利用するのも画期的ですが、子どもたちがその可能性に気がついたなら、先生不在でも勝手に育ち合って高め合って素晴らしい集団が形成される仕組みでもあるといえます。
中・高校生用ページも開設ちなみに、アースリーダーズクラブのHPには、そのような集団形成をめざす中学生・高校生のために、全国の中学校・高等学校名が掲載されたページが用意されています。
この仕組みを継続していく中で、子どものリーダーの力量が上がるということは、同時に集団としての力量も上がっていることになります。そうなればこっちのもの。どんどん権限とそれに伴って生じる責任を増やして、もっともっと鍛えていくことができます。
クラスに何か問題が起こったとき、先生は一言「リーダー任せた。どうにかしなさい」と言うだけで、リーダーを中心に問題を解決する動きがはじまり、先生が介入するより早く、しかもみんなが納得する形で問題が解決します。
その3 多くの失敗をさせろ
〜失敗は未成功ととらえよう!〜
失敗はそこだけを見るとまずい経験だと思ってしまいますが、成功までのプロセスととらえれば「未成功」ととらえることができます。この未成功の積み上げが子どもに本物の生きる力、考える力を付けるのだと確信しています。
失敗、大いに結構。それは、こうするとうまくいかないという財産をみんなで共有しながら育っている貴重な過程だからです。
その4 子どもの力を信じ切れ
〜信じ切る力が子どもの可能性を開花させる!〜
最後は陳腐な言葉になるかもしれませんが、先生が子どもの可能性と輝きをどこまで信じ切ることができるかということです。結果、本来資質や力をもっていなくても、先生が信じることで、そういったものはできてくるものです。
自分の小学校時代を思い出してください。本当に些細な先生のほめ言葉が、案外ずっと心に残っていたりするものです。「この子はできる!」という、根拠はないけれど情熱的に思ってくれる本気の大人の存在は、子どもの可能性を開花させるのに十分なエネルギーとなるのです。
「案ずるより産むが易し」。やってみてまずければ、やめればいいだけの話。やってもいないのにあれやこれや考えるのは時間がもったいないです。ぜひ、この仕組みお試しください。
- 本連載で紹介の「多段階信託変更リーダー選出システム」の集計サイト「アースリーダーズクラブ」
http://www.earth-leaders.com/