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漢字集めゲームを「詰め込み式」でやる!?
『学習探検カード』という本の中で漢字集めゲームを紹介したことがあります。
たとえば「コウと読む漢字」をたくさん集めようというような学習ゲームです。教室で使いやすいように、課題と記入欄をセットにしたワークシートを作りました。子どもたちとワイワイガヤガヤ。シートを使うと黒板に「コウの字」が溢れるしかけです。
ところが、その本を作って何年かして「なんてものを作ったんだ!」というお叱りメールを保護者の方からいただきました。担任の先生がそのワークシートを宿題に出したんだそうです。そしてその宿題は、マス目全部を一人で埋めてくるようにというものだったそうです。宿題を出された子どもはうんうん唸っても出来なくて、保護者の方に泣きついたとか。
確かにそれはちょっとひどい。わたしの趣旨(レシピ)とは違うと返信しました。
学習ゲームアイデア「マッキーノ」
「たのしい授業」編集委員会編『たのしくドリル・マッキーノ』(2005・仮説社)に、愛知・名古屋市の牧野英一氏が開発した、暗記を楽しくするための「マッキーノ」という学習ゲームが掲載されています。
ゲームの基本は「ビンゴゲーム」です。化学記号や漢字、数式などの暗記をするために工夫された、様々なバリエーションがあります。
漢字マッキーノ(小学生版)は次の通りです。
- 縦3マス×横3マスのビンゴ用紙を配布し、子どもはその脇に記された14項目の漢字から9つを選んでマス目に書き込む。
- 全員が書き終えたら、教師はシャッフルしたカード(14項目)から1枚を引いて、そこに書かれた漢字を読み上げる。
- 子どもは読み上げられた漢字がマスに書いてあったらチェックをする。
- カードを次々読み上げる。縦・横・斜めのいずれかの方向に一列(3マス)揃ったら「マッキーノ」 と宣言する。一番早く上がった人が「早上がり賞」。教室には次々と「マッキーノ」という声が上がる。
- 教師がカード9枚を読み上げた時点でゲームは終了。教師は何列上がったかをたずねる。一番多く上がった子が「最多列賞」。一列も上がらなかった子が「ゼロ列賞」。教師は子どもの書いたカードを回収し、正誤を点検する。
- この手順で毎日1回のマッキーノを5日間行い、5日目のマッキーノのあとに漢字テストを行う。テストの合格ラインは8割とする。
このマッキーノという方法の面白さは、「ビンゴゲーム」を繰り返し遊ぶうちに、何度も何度も漢字を書いて、その結果として、気がついたら漢字を覚えてしまったというところにあります。このビンゴゲームを遊ぶには漢字を書く必要性があるということです。
また、その面白さを倍増させるために、普通のビンゴゲームでの「勝利」である「早上がり賞」の他に「最多列賞」「ゼロ列賞」というような「賞」を設定した点が凄いです。
特に、「ゼロ列賞」は秀逸です。ビンゴゲームの本来からすれば「ビンゴ」が完成しなかったわけですから「負け」になるところを、逆転の発想で「賞」にしてしまっています。この逆転の発想の背景にはきっと「詰め込み式」とは異なる教育観があります。
「マッキーノ」の学びのしかけ
こんなにのんびりした方法ではなくて、もっときびしく漢字テストをやることもできるはずです。もちろんビシビシやるだけではなく、ところどころで子どもたちを励まして、教師の優しさを示したりしながら漢字テストに挑戦をさせます。教師と子どもの実態がうまくマッチさえすれば、80点どころか100点連発の学級も出てくるでしょう。だから、この方法が全ての教室におけるベストの方法かどうかは議論の余地があります。
しかし学習嫌いの子の多いクラスで漢字を学ばせるよい方法の一つであるとは思います。教師の厳しさと優しさをベースにした熱血指導が通りにくい学級が普通に存在するようになってきています。教師の力に依存しない方法も検討をしてもよいかなと考えます。