著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
『学力向上のTOSS算数ワーク』発刊によせて
TOSS代表向山 洋一
2004/10/15 掲載
  • 著者インタビュー
  • 指導方法・授業研究
メールマガジン創刊号の著者インタビューでは、向山洋一先生に、『向山洋一全集・第5期 学力向上のTOSS算数ワーク』の発刊にまつわるエピソードをお伺いしました。

向山 洋一むこうやま よういち

 1943年生まれ。1968年、東京学芸大学社会科卒業。2000年、東京都大田区立多摩川小学校退職。日本一のインターネット教育情報ポータルサイトを運営するTOSS代表。千葉大学非常勤講師、上海師範大学客員教授、日本教育技術学会会長、日本言語技術教育学会副会長。月刊『教室ツーウェイ』・『向山型算数教え方教室』・『家庭教育ツーウェイ』、隔月刊『向山型国語教え方教室』編集長。

―向山先生は数々のヒット教材を企画された経歴をお持ちだと伺ったのですが…。

 私は、大型教材企画の責任者を20年にわたって担当してきました。
 例えば、20年前の「進研ゼミ小学校講座」の教材企画です。教材「チャレンジ」は、各教科書対応で月に2回発行、1学年で24冊となり、6学年で144冊の教材でした。教科書会社別ですから、1年間で500冊近くになります。基礎・基本もあれば、発展教材もあり、学習ゲーム、学習パズルもある、最先端の教材企画でした。

―具体的にはどのように企画されたのでしょうか?

 20年前にして、国語教材は「分析批評」でした。附属小学校の先生方を中心に、100名ほどの若く優秀な教師を、ライターとして私が選抜しました。
 このライターの先生方は、著名な実践家に成長し、大半の人は本を世に出しました。
 教材会議の時、単に「良いものを選ぶ」という教材の作り方はせず、最初に私が「基本計画」を、明確に打ち出しました。例えば、「国語読解は『分析批評』を基本として、駿台予備校、藤田修一先生の記号論のような組み立てをとり入れてよい。自分1人で学習して、公立高校に入学できる学力を保証するのがねらい。したがって『テストの解き方』は、きちんと指導する」というようにです。

―最初に向山先生の基本方針を示されたわけですね。

 そうです。そして、その基本方針に沿って、見本原稿を書いてもらい「論文審査」をし、すべての「原稿」の良・否をはっきりさせ、「書き直し」の方向を示しました。選抜された人々であるだけに優秀でしたが、最初から合格するのは1人か2人で、ほとんどの人が書き直しとなりました。こうしてできあがった「向山プロデュース」の教材は、ほとんど日本一になりました。

―『学力向上のTOSS算数ワーク』もその流れで作られたのでしょうか。

 今回の全集は、もともとはセシール通信教育教材として開発したものです。
 10年以上前に、セシールが「幼児通信教育」を開始した時、初代開発責任者は私でした。幼児、母親から圧倒的な支持をうけ、年齢別6コースで、23万人の会員がいました。わずか1年で、進研ゼミを抜いて、幼児教材では日本一になったのです。
 その後、セシールは、経済状況の変動もあり「本業にもどる」ことを決定しました。その時すでに、私は「小学校教材・中学校教材」の開発に着手し、ほぼ完成していましたので、通信教育からは撤退するセシールから、版権を引き継いだのです。セシールもせっかくの日本教育界の財産を埋れさせるのは、国家的損失であると考えたのでしょう。
 そして、江部・樋口編集長の強いすすめで、向山全集の1つとして出版することになりました。
 企画会議は、高松の国際ホテルで、全国から百数十名のライターを集めて行われましたが、他の教材同様、まずは、私が基本方針を示し、原稿を審査し、書き直しを指示しました。「できない子への配慮」、「できる子への配慮」、そして「子どものやる気を引き出す配慮」が綿密になされるよう工夫された本シリーズが、二度、三度の執筆者会議を経てできあがったのです。

―来年度からの小学校の教科書では、削減された内容が「発展教材」として取り上げられますが、本シリーズでは削減前のすべての内容を取り上げているそうですね。

 江部編集長は、「今見てもすばらしい教材だ。これだけの教材は現在でもない」と高い評価を与えてくれました。
 この教材を与えれば、必ず、子どもたちは熱中して学習に取り組むでしょう。また、新しい教育界の動きの中で、新しい教材として「帯の時間」「朝学」「発展学習」「自宅学習」用として活用されることと思います。
 保護者に、児童・生徒の家庭用教材として、全国書店で購入されるようすすめていただけるとありがたいです。もともとは通信教育用として作った教材なので、自宅用として十分に活用いただけると思います。しかも通信教育に比べれば、はるかに安く入手できるのです。
 教育界の財産が世に出ることができ、感激の心でいっぱいです。

(構成:木山)

コメントの受付は終了しました。