著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
ライフワークにおける専門性加算のスピリットを
九州大学大学院人間環境学研究院教授八尾坂 修
2008/5/9 掲載
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  • 教職課程・教員研修
 今回は八尾坂修先生に、新刊『教員免許更新制度』について伺いました。

八尾坂 修やおさか おさむ

九州大学大学院人間環境学研究院教授(教育行政学・学校経営学)、博士(教育学)。昭和26年1月生まれ。国立教育研究所主任研究官(現・国立教育政策研究所)、奈良教育大学助教授・教授勤務後、現職。現在、中央教育審議会専門委員(特に教員養成部会)。文部科学省視学委員。
〔単書〕『アメリカ合衆国教員免許制度の研究』風間書房、『現代の教育改革と学校の自己評価』ぎょうせい、『学校改善マネジメントと教師の力量形成』第一法規、『教職大学院―スクールリーダーをめざす―』協同出版ほか。

―平成21年4月から本格実施されることになる「教員免許更新制度」。ワーキンググループの専門委員でもいらっしゃった先生から、その導入のねらいと意義についてお聞かせ下さい。

 教員免許更新制は、免許状の有効期間の到来時にあわせて、その時々で求められる教員として必要な資質・能力が確実に保持されるよう必要な刷新(リニューアル)とその確認を行う制度です。導入の意義として、すべての教員が社会状況や学校教育が抱える課題、子どもの変化に対応して、その時々で必要とされる最新の知識・技能等を確実に修得することが期待できることです。しかも教員免許状は国・公・私立学校を通じた教員資格であることから、設置者や地域のいかんを問わず、教員全体としての専門性向上の促進効果、教育の機会均等の保証にもより適切に応えることができます。

―「教員免許更新制度」の具体的な中身とはどういったものでしょうか。本書でもQ&A形式などで詳しく紹介されていますが、概略をお聞かせ下さい。

 ア.普通免許状および特別免許状の有効期間は10年間です。有効期間の満了の際、免許管理者は更新講習(直近2年間で30時間以上)を修了した者について、本人の申請により更新します。イ.受講対象者は、更新制施行前の旧免許状(終身有効)所有者、施行後の新免許状を有する現職職員と教員採用内定者のほか、教員となる可能性がある者(たとえば、復職を希望する者、今後教員として採用される可能性のある者など)に広く受講を認めています。更新の要件を満たさなかった場合、免許状は失効しますが、同様の講習の受講により再授与の申請は可能です。

―「教員免許更新制度」実施にあたって、これからの課題・取り組むべきポイントは何でしょうか。受講する教員の問題、修了認定する大学・法人の問題、運用上の点からいくつかお聞かせ下さい。

 教員養成・免許制度のあり方についての基本的スタンスは、国民の尊敬と信頼を得ようと日々努力している教員を励まし、支援することにあることは確かです。更新制の導入は教員として日常の職務を支障なくこなし、自己研鑽に努めている方であれば、通常、更新されることが期待されます。講習内容も最新の知見に関する内容(特別支援教育、組織の一員としてのマネジメント・マインドの形成、情報セキュリティ、安全確保といった危機管理の問題、学習指導要領改訂の動向、指導法、指導の背景となる専門的内容など)です。受講上の条件整備も考慮されています。ライフワークにおける自己啓発としてアクティブに、かつ自信をもって参加していただきたいと思います。受講上の心配があったら何でも開設者などに問い合わせることも肝要です。

―来年度からの実施に先行して、全国101の大学・法人で今年から教員免許更新制が試験導入され、中にはユニークな講習・特色を打ち出しているところもあります。講習カリキュラムの観点はどういったものでしょうか。本書でも詳しく紹介されていますが、いくつかお聞かせ下さい。

 開設者である大学などには、できる限り学校の実態に即した、かつ受講者のニーズ、課題意識を反映した内容が期待されます。教育の最新事情に関する事項(教職についての省察、子どもの変化、教育政策の動向、学校内外での連携・協力についての理解、必修12時間)、教科指導、生徒指導その他教育内容の充実に関する事項(選択18時間)の履修です。講義のみではなく、ケーススタディ、グループ討議などの工夫がなされています。また長期休業中を主たる受講機会としますが、夜間、週末、インターネット等を活用した遠隔教育の実施など、多様な受講形態を確保することにしています。

―最後に、教員免許状取得者、取得予定者、教育委員会や大学の関係者など、教員免許更新制度にかかわる方々に一言お願いします。

 更新制をマイナス思考でとらえるのではなく、専門性加算の発想が大切です。とくに講習開設者である大学などには、教育委員会や学校などの協力や参画を求めるなど、講習の工夫においてまさに連携が期待されます。しかも講習内容の質を確保するため講習受講者に対する事前調査を行い、その結果を講習に反映すること、また今後の講習内容の改善のために、受講者からの事後評価および公表を行うなど、これまでの教職課程では考えられなかった視点が求められています。更新講習が教員養成や現職研修への波及力をもち、教師の資質向上全体に寄与する、開かれた、前向きのスパイラルを可能にしていただきたいと思います。

(構成:及川)

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