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「言語力」は方法論だけで育てることはできないものです。教養知、暗黙知、科学知の知識の蓄積があって、初めて、豊かな言語力が発揮できます。内容教科としての社会科は、こういった知識を育てていく中核的教科です。また、社会科で育てている資料活用能力等の諸能力も言語力に直接的に結びついているものです。
「欠けている」というよりは、社会科のあるべき方向性として求め続けているものが、クローズアップされてきたと思います。それは、説明、解釈、論証、資料批判といった、社会科の科学性を高める方向性です。「授業化にあたっての課題」は、これらの用語を意識しながら、社会科の科学性を高めるための教材研究を深めていくことです。
「『なぜ疑問』を追究し法則性を発見・検証する授業」は、事象間の関係を追いかけていく活動ですので、「言語力」を育てていく中核的活動になります。単独で存在する知識は忘れやすいものです。それに対して、知識同士の結びつきが強い知識は、身についた知識となっているものです。社会科では、知識のネットワークを構築していく学習活動を多彩に展開しているので、「言語力」の形成に有効性が強いものになっています。人間は日々様々な意志決定を行っています。社会科では「合理的意志決定能力」の育成を大事にしています。価値判断の場に立たされ、意志決定を行っていく授業は、「言語力」育成の重要な場を提供しています。
「問いに対して、どのような具体的事例で答えることができるか。」が、一つのポイントになります。先に述べました「教養知、暗黙知、科学知」は、問われた際に、具体的事例でどのように答えられるかに関わってきます。どういった質の具体的事例が挙げられたかが、評価の対象となります。次には、「事象間をどのように結びつけて説明しているか。」が、二つめのポイントとなります。これを評価するためには、説明文の評価手法を開発していくことが重要です。
「言語力をつける社会科授業」の展開は、社会科の科学化を一層推し進めるのに有効です。また、説明力の高い社会科授業を展開していけば、それは「言語力」の育成にも、有効に働くものです。「言語力」が取り上げられることによって、社会科授業の在り方を考えていく良い契機になると考えています。