著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
「言語力」で社会科の科学化を
兵庫教育大学教授岩田 一彦 
2008/3/14 掲載
 今回は岩田一彦先生に、新刊『「言語力」をつける社会科授業モデル 小学校編』について伺いました。

岩田 一彦いわた かずひこ

昭和17年4月生まれ。
兵庫教育大学教授。兵庫教育大学連合学校教育学研究科(博士課程)長。
〔主な著書〕『社会科 間違いやすい・紛らわしい用語指導辞典』『社会科固有の授業理論30の提言』『社会科授業研究の理論』(いずれも明治図書)、『小学校社会科の授業分析』東京書籍、他多数

―次期学習指導要領の中で、「言語力の育成」、「言語活動の充実」は各教科を横断する大きなキーワードとして挙げられていますが、「言語力の育成」においての社会科の役割とはどういったものでしょうか。

 「言語力」は方法論だけで育てることはできないものです。教養知、暗黙知、科学知の知識の蓄積があって、初めて、豊かな言語力が発揮できます。内容教科としての社会科は、こういった知識を育てていく中核的教科です。また、社会科で育てている資料活用能力等の諸能力も言語力に直接的に結びついているものです。

―「言語力」の育成にあたり、今の社会科授業に欠けているもの、授業化にあたっての課題は何でしょうか。

 「欠けている」というよりは、社会科のあるべき方向性として求め続けているものが、クローズアップされてきたと思います。それは、説明、解釈、論証、資料批判といった、社会科の科学性を高める方向性です。「授業化にあたっての課題」は、これらの用語を意識しながら、社会科の科学性を高めるための教材研究を深めていくことです。

―どのような活動・授業によって、「言語力」は身につくのでしょうか。本書でも詳しく紹介されていますが、いくつか教えてください。

 「『なぜ疑問』を追究し法則性を発見・検証する授業」は、事象間の関係を追いかけていく活動ですので、「言語力」を育てていく中核的活動になります。単独で存在する知識は忘れやすいものです。それに対して、知識同士の結びつきが強い知識は、身についた知識となっているものです。社会科では、知識のネットワークを構築していく学習活動を多彩に展開しているので、「言語力」の形成に有効性が強いものになっています。人間は日々様々な意志決定を行っています。社会科では「合理的意志決定能力」の育成を大事にしています。価値判断の場に立たされ、意志決定を行っていく授業は、「言語力」育成の重要な場を提供しています。

―今まで「見えない学力」とも言われてきた「言語力」を評価する際には、何がキーワードになってくるのでしょうか。

 「問いに対して、どのような具体的事例で答えることができるか。」が、一つのポイントになります。先に述べました「教養知、暗黙知、科学知」は、問われた際に、具体的事例でどのように答えられるかに関わってきます。どういった質の具体的事例が挙げられたかが、評価の対象となります。次には、「事象間をどのように結びつけて説明しているか。」が、二つめのポイントとなります。これを評価するためには、説明文の評価手法を開発していくことが重要です。

―最後に、全国で社会科の指導をされている先生方に一言お願いします。

 「言語力をつける社会科授業」の展開は、社会科の科学化を一層推し進めるのに有効です。また、説明力の高い社会科授業を展開していけば、それは「言語力」の育成にも、有効に働くものです。「言語力」が取り上げられることによって、社会科授業の在り方を考えていく良い契機になると考えています。

(構成:及川)

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