著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
子どもが夢中になるフラッグフットボールにトライ!
日本体育大学大学院教授橋 健夫ほか
2010/4/9 掲載
 今回は橋健夫先生と吉永武史先生に、新刊『小学校「戦術学習」を進めるフラッグフットボールの体育授業』について伺いました。

橋 健夫たかはし たけお

日本体育大学大学院教授
1943年、京都府生まれ。東京教育大学大学院修士課程体育学研究科修了、大阪大学助手、奈良教育大学助教授、筑波大学教授を経て、現職。

吉永 武史よしなが たけし

早稲田大学スポーツ科学学術院専任講師
1972年、熊本市生まれ。上智大学文学部社会学科卒業、筑波大学大学院修士課程体育研究科修了、筑波大学大学院博士課程体育科学研究科単位取得退学、東京女子体育大学専任講師を経て、現職。

―フラッグフットボールとは?

 フラッグフットボールは、アメリカンフットボールを簡易化したもので、身体接触を避けるために、タックルの代わりに左右の腰から下げたフラッグを取ることでプレーが止まるというルールになっています。ゲームでは、プレーごとに作戦タイム「ハドル」が設けられ、チームでどのような戦術を使うかを考えたり、1人ひとりの役割を明確に決めてからプレーを行います。そのため、子どもたちにとって作戦の成否やその原因がわかりやすい教材です。

―新学習指導要領のボール運動領域は、種目主義を超え、「ゴール型」「ネット型」といった学習内容の分類で示すようになりました。この変更で体育の授業はどのように変わるのでしょうか?

 学習指導要領がこのように改訂された背景には、子どもたちは生涯を通じていろいろなボールゲームに関わっていく可能性があるため、これからの授業では、種目固有の技能ではなく、「型」に共通する動きや技能を系統的に身につけることが大切であると考えられたことがあります。
 「型」に共通する動きとして、フラッグフットボールが属するゴール型では「サポート」(味方チームがボールを保持している場面でパスを受けることのできるポジションへ移動する動き)があげられます。バスケットボールやサッカーでは、ゲームが流動的なため学ぶのが難しいこの「サポート」ですが、ゲームが1プレーごとに展開されるフラッグフットボールでは非常に学びやすいという特徴があります。

―書名にある「戦術学習」というのはどのような学習なのでしょうか?

 これまでのボールゲームでは、技術を習得することを中心とした授業やゲームを繰り返すことを中心とした授業が多くみられました。しかし、子どもたちの中には、なかなかゲームが上手くならず、ボールゲームを楽しめないケースも少なくありませんでした。
 この問題を解決していくために近年関心を寄せられているのが、個々の技能をどのようなゲーム状況で発揮するかという戦術を学習の中心に位置づけた「戦術学習」という学習モデルです。この学習モデルは、子どもたちの戦術的気づきを重視しながら技能を高めていきますので、それが実際のゲーム場面で活きた技能として発揮されるようになります。
 本書ではフラッグフットボールを通して、具体的に述べています。

―「フラッグフットボール」に取り組んでみたいと思われる先生には本書をどのようにご活用いただくのがよいでしょうか?

 本書は、子どもたちの発達の段階や学習目標に応じたフラッグフットボールの授業づくりができるように内容を構成しています。
 第1章ならびに第2章では、授業づくりのポイントや、ボールゲームのカリキュラムづくりに役立つ、フラッグフットボールから他のゴール型のボールゲームへの学習成果の転移などについて解説しています。
 第3章では、学習目標に応じたフラッグフットボール授業の実践例を紹介しています。
 さらに、授業ですぐに使えるように、子どもたちの作戦づくりに役立つフォーメーションやプレーの種類も豊富に掲載しています。

―最後に読者の先生へのメッセージをお願いいたします。

 フラッグフットボールは、子どもたちみんなが夢中になるボールゲームです。その教育的価値は、ゲームパフォーマンスの向上や体育授業に対する愛好的態度を高めることはもちろんのこと、子ども同士の絆を深めることにもあります。フラッグフットボールに取り組んだ先生方からは、「希薄だった子ども同士の人間関係が、何事においても積極的に励まし協力し合うような濃密な人間関係に変わりました」というコメントがたくさん届いています。
 ぜひフラッグフットボールにトライしてみてください!

(構成:佐藤)

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