著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
連絡帳を信頼関係構築の架け橋に!
東京都豊島区立西巣鴨小学校主任教諭前川 直也
2011/8/16 掲載
 今回は前川直也先生に、新刊『保護者と信頼関係を築く連絡帳の文例集』について伺いました。

前川 直也まえかわ なおや

豊島区立西巣鴨小学校主任教諭
昭和62年度より東京都の小学校教諭。専門は道徳教育。通常学級(低・中・高学年)及び特別支援学級での担任を経験。

―本書では、連絡帳の文例が多岐にわたって掲載されています。保護者対応には個別面談や電話対応もありますが、それらとは異なる、連絡帳を活用した保護者対応のよさは何でしょうか。

 連絡帳には、教師の手書きの文字が綴られるわけで、ぬくもりや心遣い、誠実さが視覚的に伝わるよさがあります。時系列に記されるので、後から振り返ることもできる、記録の役割も果たせます。保護者からの連絡や質問、意見などに対しても、Q&Aのように記せます。子どものけがやけんかなどの対応の際にも、連絡帳は、保護者への第一報の役割を果たします。ちょっとした子どものよさやがんばりも、その日に伝えられます。

―「連絡帳を書きたいけれど、時間がない」という先生もいらっしゃるようです。先生はいつ連絡帳を書いているのですか。時間を生みだすコツは何でしょうか。

 私も連絡帳に向き合う時間は、いつもほとんどありません。他の先生方と一緒です。私は、子どもたちが給食を食べている間に、一気に書いていきます。私が工夫していることは、指導中あるいは休み時間などに、@誰に、Aどんなことを、Bどのように書こうとするのか、心の中でつぶやく瞬間をつくっていることです。子どものよさや成長の足跡、私自身が感動したことを、どのように伝えるか、そのようなことをいつも考えています。 

―本書には、授業場面や休み時間など、子どもの様々な様子を伝える文例とともに、子ども理解に役立つ様々な視点も紹介されています。先生が子ども理解を行ううえで大切だと考えていることを教えてください。

 子ども理解を行う際、その子自身のよさや可能性の発見に努めています。そのためには、子どもを多面的に見ることが大切です。いつでも、どこでも、子どもの小さな変容、小さな伸びを見つめています。できなかったことができたとき、叱られたことが改善されたときには、おおいにほめます。子ども理解には、始まりがあっても終わりはないと思っています。子どものよさを見つめようとする、あたたかい眼差しを大事にしています。

―本書では、クレーム対応の文例も紹介されています。クレーム対応のポイントは何でしょうか。また、クレーム対応をするとき、連絡帳はどのように活用すればよいのでしょうか。

 親の思いにどれだけ寄り添うことができるかが大事です。とにかく誠実に、迅速に対応します。連絡帳には、短くても正対した返答を心がけます。必要に応じて、管理職や同僚にもすぐに相談し、対応の言葉を一緒に考えます。無理に長く書こうとせず、夕方、電話をかけることを記すなど、連絡帳をワンクッションの役割ともします。そのようなときにも、子どものその日のよさをさりげなく記すことができたらよいと思っています。

―最後に、保護者との関係づくりに悩む、若手の先生方へメッセージをお願いします。

 保護者との関係づくりは、どの教師にとっても、難しいものです。私も同じです。大切なことは、子どもとの関係づくりです。子どものよさを基盤とした理解と、その発信方法です。まずは、日頃の挨拶から始まり、人間関係、協力関係づくりです。保護者は、わが子をまるごと理解し、大事にしてくれる、愛おしく感じてくれる教師を望んでいます。指導技術以上に、先生自身の熱意と優しさ、誠実さ、謙虚さがとても大切だと思います。

(構成:茅野)

 

コメントの受付は終了しました。