著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
アイデアあふれる板書の活用が道徳授業を変える!
東京家政学院大学教授長谷 徹
2011/8/24 掲載
今回は長谷徹先生に、新刊『小学校道徳 効果的な板書のアイデア』について伺いました。

長谷 徹はせ とおる

 東京学芸大学卒業 同附属竹早小学校教諭 東京都足立区教育委員会指導主事 都立多摩教育研究所指導主事・統括指導主事 東京都練馬区教育委員会指導室長 東京都港区立港南小学校長 同麻布小学校長 日本体育大学講師 東京家政学院短期大学教授等を経て現職に至る 小学校学習指導要領指導書道徳編作成協力者(平成元年) 小学校学習指導要領解説道徳編作成協力者(平成10年) 心のノート作成協力者会議委員 東京都小学校道徳教育研究会長 全国道徳特別活動研究会長

―本書には、道徳授業における、板書を活用したたくさんのアイデアが掲載されています。ズバリ、先生が考える道徳授業における板書の役割とは何でしょうか。

 三つあります。一つは「授業が見え、振り返りができる」ということです。子どもにとって、授業がどう展開し自分はどう考えてきたか、友達はどう考えたかが見えるということです。二つには「より心に響く資料提示の工夫が可能だ」ということです。サイドボードやスクリーンにまで範囲を拡大すれば資料を提示する手立てが様々に工夫できます。さらに「子ども参加型の授業が工夫できる」ということです。自分の考えをボードに貼ることや、貼ったカード等を貼り替えることなど、子どもたちが積極的に授業に参加することも板書の工夫で可能になるということです。

―道徳授業と教科の授業の板書では、どのような違いがあるのでしょうか。道徳授業だからこそ、気をつけたい板書のポイントなどはありますか。

 道徳授業だからこそ気をつけたい板書のポイントですが、道徳授業では、子どもたちの考えや感じ方を中心にして授業が展開していきます。また、ねらいとする道徳的価値の自覚に向かって板書も整理されていきます。したがって、発問の1から順に発問と児童の反応を時系列的に板書するという活用の仕方だけでなく、対立する意見等を左右に分けて視覚的にもわかりやすく展開していくといった工夫も大切です。 

―若い先生方の中には、「道徳授業では、子どもの発言をすべて板書した方がいいのか?」という疑問をお持ちの方もいらっしゃるようです。先生はどのようにお考えですか。

 子どもたちの反応を一つひとつ板書していくことは、一人ひとりを大切にするという視点からとても大切なことだと思います。気持ちとしてすべて板書するという意識を忘れないことは重要です。しかしながら、授業では時間的にも空間的にも、すべてを取り上げることは不可能です。反応を整理しながら板書することが必要だと思います。

―本書には、ネームプレートを用いて、子ども自身が板書に参加する実践も紹介されています。子どもとつくる板書には、どのような利点や留意点があるのでしょうか。

 道徳授業は、多様なものの考えや感じ方と出会うところです。資料の中の登場人物に共感したり反論したり、友達の考えや感じ方を受け止めたりしながら、自分なりの考えや感じ方を深めたり広めたりすることが大切です。そのためには、まず自分の考え等の意思表示を明確にすることが必要です。そこにネームプレート活用の利点があります。留意したい点は、考え等が変わったときには、変わった理由や背景を子ども自身にも明確にさせるということです。

―最後に、読者の方へメッセージをお願いします。

 今、表現力を高めることが求められています。子どもたちの表現力を高めることはもちろんですが、先生方の表現力を高めることも必要です。板書は先生方の表現力の表れでもあります。子どもたちとつくる板書、授業がよく見える板書、ボードだけにこだわらず広く空間を活用する工夫等々、道徳の時間の特質を踏まえた上で、大胆に、そしてダイナミックに板書を創造してほしいと期待しています。

(構成:茅野)

 

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