- 著者インタビュー
- 算数・数学
日方先生:最初からよいレポートを書くことはできませんし、書くことが苦手な生徒も当然います。本校では、まずレポートを書かせる最初の段階で、本書にある「レポートの書き方」というプリントを配布し、説明してきました。また、同級生や上級生が書いたよいレポートを折に触れて見せることで、次第によいレポートを書くことができるようになります。
よいレポートとは、なにも高いレベルの内容が書いてあるものだけとは限りません。「ここまではわかったけど、ここからはわかりませんでした」もよいレポートです。自分なりの言葉で、ていねいに書くことが大切です。
松永先生:レポート作成は、生徒にも労力がかかりますし,教師がそれに目を通してコメントを書くのにもそれなりの時間を要します。無理をせず、まずは学期に1回くらいの気持ちで取り組んでみてはいかがでしょうか。少し余裕があれば、学期に2回にしてみてもよいと思います。本校では、1つの単元で1つのレポートということを目安に実践してきました。生徒が書いたレポートには、1時間の授業の様子がライブ形式で個性豊かにまとめてあったり、新たな課題を見いだし多様な考え方で追究してあったりしますから、毎回楽しみながら新鮮な気持ちで読ませてもらっています。
髙木先生:生徒の知的好奇心をくすぐり、授業中に生徒がしっかり考えるような授業を行うことが大切です。ときには発展的な学習内容を扱うこともありますが、決してそればかりとは限りません。基本的な内容であっても、生徒が多面的に考えることができたり、課題づくりができたりする場面があればよいと思います。授業中にしっかり考えたことをレポートにまとめるという作業を通して、自分の考えを再構築し、わかっていたつもりでいたことに気付いたり、さらに疑問点を発見したり、自分なりの発展があったりするものです。
日方先生:基本的には、生徒の考えを読み取り、そしてそのアイデアの数学的な価値を認めるコメントを返すことでしょう。先生からのコメントが何よりの評価だと思います。その上で、優秀な作品は数学の掲示板などで学年全体に紹介すると、紹介された生徒は自信をもつことになりますし、それを見る生徒は、よい作品に触れることでレポートのまとめ方のレベルが上がっていきます。
また、観点別に評価することも可能です。例えば、課題の発展のさせ方などから「関心・意欲・態度」を、説明の仕方や図の用い方などから「技能」を、課題解決に対する考え方やアイデアなどから「見方や考え方」を評価することができます。
髙木先生:まずは、本書を参考に一度実践してみてください。実践なくして成功はありません。教師が無理と思っている間は、生徒の可能性を伸ばすことはできません。本書の中でも紹介していますが、このレポート実践は本校だけのものでなく、一般の公立中学校でも成功しているものなのです。半信半疑で実践した先生も、実践後は「予想以上の生徒たちのがんばりに驚かされた」ということをよくおっしゃいます。何を隠そう、私自身も「本当にこんなレポートが書けるのか…」と疑った一人だったのです。また、レポート実践は絶対にこうでなければならない、なんてこともありません。失敗を恐れずぜひ挑戦してみてください!