著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
目指せ!子どもたちが憧れる弾き歌いマスター
相愛大学人間発達学部教授岩口 摂子
2012/3/28 掲載
 今回は岩口摂子先生に、新刊『「表現」がみるみる広がる!保育ソング90』について伺いました。

岩口 摂子いわぐち せつこ

相愛大学音楽学部ピアノ専攻卒業。国際ロータリー財団奨学生として、インディアナ大学大学院に留学。関西フィルとの共演のほか、ソロリサイタル、デュオリサイタル等を開催。著書として『ピアノが弾ける3つのステージ』(東音企画)のほか、「定着化した保育歌唱教材における歌詞の特徴について」(教育実践学研究第10巻第1号)をはじめ論文も多数。宮城学院女子大学助教授を経て,現在,相愛大学人間発達学部教授。

―保育者向けの歌の本はたくさんありますが、本書ならではの一番のウリを教えてください。

 子どもの音楽的な感性と表現力を育てるために、保育者には、音楽的な表現の技術と、歌を保育の中で使いこなすアイディアの両方が求められます。本書は、使う人のピアノレベルに応じて演奏でき、同時に保育のいろいろな表現活動に活かすことができるアイディアが満載です。保育の勉強をしている学生さんや、まだ経験の少ない先生たちの強い味方です! たくさんの保育実践集が出版されている中で、特に歌と造形活動をコラボしたあそびを多く提案している点は、本書の大きな特徴といえます。

―本書に収録した伴奏の多くがオリジナルの編曲になってますね。ピアノが苦手な保育者でもすてきな弾き歌いができるように、どのような工夫がされているのでしょうか。

 基本的に右手は歌の旋律をなぞっていますが、左手はポジション移動を少なくしたり、同じ音のパターンを繰り返したりして弾きやすくしました。またフレーズ感や音の軽さを出すために、休符を入れたりして、音の長さが音楽的な表現につながるよう工夫した曲もあります。簡易伴奏は単調になりがちですが、音楽の世界を広げてもらえるよう、親しみのある旋律を使いながらも、おしゃれな音使いにしたり、さまざまな性格の曲に変化させました。

―書名にも「表現」という言葉がありますが、子どもたちの特に音楽的な表現力を引き出すためには、保育者は日ごろ、どのようなことを心がけるとよいのでしょうか。

 まず保育者が楽しく、美しく、かっこよく歌ったり、演奏したりして、子どもが憧れるプレイヤーになりましょう。日ごろからいろいろな音に気づかせてあげて、音のおもしろさや美しさ、リズムを感じることの楽しさ、歌をおぼえて歌えることへの達成感を感じさせてあげましょう。そして子どもがどんな演奏をしても、受け止めることが大切です。子どもが好きだからといって特定の歌や音楽に偏らず、いろいろなジャンルの音楽を体験させてあげたいですね。

―本書では、「春」「初夏」「夏」「秋」「冬」「早春」「その他」の7つに分類して、90の曲が収録されています。数ある歌の中から、どのような視点で選曲されましたか。

 保育者養成に長く携わってきた著者や編集協力者たちが、現場でよく歌われている歌、歌い継いでほしい歌、表現活動が展開しやすい歌ということを基準に選曲しました。それらの中で、多く選ばれた曲が今回の選曲になっています。

―最後に、弾き歌いにチャレンジしようという保育者に向け、メッセージをお願いします。

 はじめは、歌だけでもOKです。歌えたら右手を、右手が弾けたらコードの根音を一緒に、根音で物足りないなら三和音を入れて、三和音が入ったらリズムで変化をつけて、そして楽譜どおりにと、段階的に子どもたちにおろしていきましょう。もう一つ大事なことは決めた指使いを守って弾くということです。指使いを守ると、効率的に練習できるだけでなく、自然にいろいろなテクニックも身についていきます。
 さぁこの本で、あなたも子どもが憧れる弾き歌いマスターを目指しましょう!

(構成:木村)
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