著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
日々の板書に頭を悩ませていませんか?
岡山県岡山市立城東台小学校教諭大前 暁政
2012/4/3 掲載
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  • 指導方法・授業研究
 今回は大前暁政先生に、新刊『スペシャリスト直伝! 板書づくり成功の極意』について伺いました。

大前 暁政おおまえ あきまさ

昭和52年生まれ。現在、岡山市立城東台小学校教諭。理科の授業研究が認められ「ソニー子ども科学教育プログラム」に入賞。著書に、『スペシャリスト直伝!理科授業成功の極意』『プロ教師の「子どもを伸ばす」極意―学級&授業づくりマスターBOOK―』(明治図書)、『必ず成功する!授業づくりスタートダッシュ』(学陽書房)、『NHKおじゃる丸 クイズでおじゃる 目指せ小学校クイズ王』(執筆協力、NHK出版)などがある。

―本書のまえがきでも触れられていますが、板書については初任者指導などで、「美しい板書を」「構造的な板書を」と指導されることが多いようです。それに対し、先生は本書で、「板書はシンプルで、わかりやすいものに」と提案されています。その点について、教えて下さい。

 私の目指している板書は、「子どもを伸ばす板書」です。
 子どもを伸ばすためには、わかりやすい板書にする必要があります。
 そのため、「シンプルで、わかやすい板書」をするようになりました。
 
 板書のやり方は、人によって違ってもいいと考えています。
 ところが、現在、初任者の多くは「美しい板書」や「構造的な板書」、「学習の流れがわかる板書」にせよと、指導されています。
 もちろん、こういった「板書」も大切なときもあるでしょう。
 しかし、それを一律に初任者に強要するから、おかしなことになります。
 指導された初任者は思います。
 「授業では、板書を必ずしなくてはいけない。」
 「いつも、模造紙を用意して、ペタペタ貼らないといけない。」 
 「あとで見て、学習の流れがわかるようにしないといけない。」
 このように思っている若手教師はたくさんいます。
 板書の必要のない場面で、ダラダラと板書をしている授業も見ます。
 中には、子どもそっちのけで、一時間中、教師が板書ばかりしている授業すらあります。
 
 これは、1つの板書スタイルだけを絶対視するから起きる弊害です。
 そうではなく、もっと柔軟にいろいろな板書スタイルを取り入れればいいと考えています。
 
 本書は、様々な板書スタイルを紹介するものです。
 読者の方に、1つの板書の型として参考になればと思っております。

―先生は本書の中で「板書は子どもにとって有益かどうかが大切」と述べられています。子どもにとって有益な板書にするためのポイントはどういったものでしょうか。

 有益な板書とは、「子どもを伸ばす」ことに寄与する板書です。
 そのため、子どもにとって有益な板書にするためのポイントは、「授業でどんな力を、どうやって子どもにつけたいのか」をはっきりさせておくことです。
 
 授業は、何らかの目的があって行われます。
 水泳なら、「25mを泳がせる力を養う」などという目的があります。
 国語なら、「文章の書き方を身につける」などの目的があるでしょう。
 このような授業の目的を果たすために、何らかの良い機能を果たした板書が「有益な板書」です。
 
 そのため、「授業でどんな力を」、「どうやって身につけさせるか」をはっきりさせておく必要があります。
 その上で、板書をどうするかを考えるのです。
 黒板ぎっしり板書することもあるし、たった数行だけの板書のときもあります。
 しかし、教師が考えている目的を達成するために、板書が役に立っていれば、それは有益な板書なのです。

―本書2章では、「各教科ごとの板書づくりの極意」についてまとめられています。本書で詳しく述べられていますが、各教科ごとのポイントについて、教えて下さい。

 教科によって、板書の型があります。
 国語なら、教師の発問を書いて、その後に子どもの意見分布を書くのが基本です。
 理科なら、問題を書いて、その後に実験方法を書くのが基本です。
 ある程度の型はありますが、型にはまらない板書スタイルもあります。
 本書では、「各教科の基本となる板書スタイル」だけでなく、「様々なタイプの板書スタイル」を紹介しています。
 例えば、FG(ファシリテーショングラフィック)を使った板書スタイルなどです。
 また、フラッシュソフトをスクリーンに映し、それを使って授業を進めていくスタイルも紹介しています。
 様々な板書スタイルを知り、それを身につけてもらうことができるようになっています。

―3章では、「板書のコツ」について、まとめていただいていますが、障がいをもつ子に対応した板書づくりについても述べられています。その工夫について教えて下さい。

 研究授業を見に行くといつも思うことがあります。
 それは、「豪華絢爛な板書が多い」ということです。
 黒板いっぱいの、模造紙、短冊、矢印、図、言葉、カラフルな色・・・。
 大人でも、何が書いてあるのかわからないものまであります。
 こういった板書がすばらしいという風潮が、今までありました。
 そろそろ、私たちはその板書を見直すときがきているのではないでしょうか。
 無駄に情報が多い板書だと、混乱する子どもがいます。
 勉強が苦手な子。
 発達障害をもっている子。
 そのような子が真っ先に、授業についていけなくなります。
 「誰が見ても、わかりやすい。」そんな板書だと、子どもも安心します。

―最後に、読者の先生方へメッセージをお願いします。

 板書について自信のない教師が数多くいます。
 原因は、「大学で教えられなかったこと」です。
 大学で教えられないのですから、自分のイメージだけでとりあえず板書をしなくてはいけません。
 そんな現状を打破するために、本書は発刊されました。
 「板書についてちょっとだけ自信がない人。」
 「構造的な板書や、美しい板書を強要されてきた人。」
 「発達障害をもつ子を担任している人。」
 そんな人に、是非本書を手にとっていただきたいと思っています。

(構成:及川)

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