- 著者インタビュー
- 授業全般
古今東西に伝わる授業技術を調べ、そして現代でも十分に通用する技術としてまとめたのが本書です。
授業技術には、歴史があります。
中には、数百年前から伝わる授業技術もあります。
そのため、本書を書き上げるにあたり、古今東西の文献を調べる必要がありました。
読んだ本は、数千冊にのぼります。多くは絶版であり、手に入れにくいものでした。
そして、検証10年。
昔から伝わる「授業の技術」の中で、現代でも通用するものは何か。
実践を通しながら、効果を確かめてきました。
第1章は、最も重要な技術、7つについて解説しました。
これはいわば、教え方の黄金律とも呼べるものです。
子どもに分かりすい授業をするためには、必須の知恵となることでしょう。
授業が進むにつれ、子どもが《わくわく》してくる。
これが、授業展開の最大のポイントです。
良い授業は、授業が進めば進むほど、子どもが《わくわく》するように組み立てられています。
組み立て方は一つではありません。
例えば、理科では最初に疑問をもたせることをよくします。
疑問をもたせておいて、子どもに追究させるわけです。
反対に、社会科では、ある程度学習を進め、情報が子どもの中に蓄積されてから、意見の分かれる発問を入れることがよくあります。
情報が蓄積されている状態ですから、討論まで発展するというわけです。
このように、組み立て一つとってもいろいろなやり方があります。
多くのやり方を知っておくことで、教科や単元が変わっても、応用できます。
学校教育は、やがて学校がなくなっても、自立して生きていくことのできる人間を育てる営みです。
であるならば、授業も、自立を視野に入れて行われなくてはなりません。
自立のためには、様々な姿勢を子どもに育てる必要があります。
その中の一つが、「自分で考えて選択する」姿勢です。
誰かに依存するのではなく、自分の道を自分で切り開く姿勢です。
その姿勢を育てるためには、授業において、子どもに選択させる場面を取り入れていくことが大切になります。
教師の考えを押しつける授業がありますが、これでは、「自分で考えて選択する」姿勢は育ちません。
一番のポイントは、「考える場面」を用意することです。
講義形式の授業では、考える子どもは育ちません。
子どもが受け身になってしまうからです。
かといって、「何でも子どもに任せよう」としても、やはり考える子どもは育ちません。
「丸投げ」になってしまうと、子どもは途方に暮れてしまうからです。
考える子どもを育てるには、それなりの方法があります。
4章では、7つの技術を紹介しています。
一番のポイントは、『教師の意識』です。
「一人ひとりの違いを生かして授業をしよう。」と教師が意識できているかどうかです。
せっかくいろいろな考え、体験をもつ子どもたちが一斉に集まって授業を受けているのです。これを生かさない手はありません。
集団には、教育の力があります。集団の力を利用することで、子どもの力を伸ばしていくことができます。
子ども同士の交流を取り入れた教育実践が、大々的に行われたのは、大正自由教育の時代でした。
子ども同士の交流をうまく取り入れる方法を、是非知ってほしいと思います。
子どもは「ほめて、励まして」育てるのが基本です。
肯定的に評価をされることで「自分はもっと頑張れるんだ」、「今は、できないけど、少しずつできるようになっているんだ」と思えるようになります。子どものやる気が出てきます。
ところが、特別支援に対応した授業のやり方を知らないと、「ほめる、励ます」ことができないのです。ここが、実は多くの人が勘違いをしているところです。
「ほめる、励ます」ためには、授業の中に特別支援を要する子への配慮が入っていなければならないのです。
そうしないと、「叱る・注意」が増えてしまうのです。なぜなら、教師の授業が特別支援に対応できていないと、発達障害をもつ子に無理が出てくるからです。
全ての教師は、特別支援に対応した授業のやり方を学ぶ必要があります。
授業の技術は、昔からありました。
師範大学では、教科書もあり、学生にきちんと教えられていたのです。
ところが、戦後、大学では授業の技術を教えてもらう機会が激減しました。
教育実習に一任されているのが現状です。
「授業の技術を全てまとめた本が必要なのだ」と考えてから10年。
ようやく1冊の本が完成しました。
本書は、先人の知恵がいっぱい詰まった「授業技術大全書」です。
先人の知恵を、後進に継承するための本です。
是非、多くの知人に、本書の存在を紹介してほしいと思います。
そして、全国津々浦々の教室で検証され、さらに新しい授業の技術を生み出す契機にしていただければと思います。