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- 幼児教育
保育は何よりも目の前の一人ひとりの子どもに対する理解から始まります。資質も成育歴もそれぞれに異なる一人ひとりの子どもが、今、何に関心をもち、どのように感じ、どう実現したいのかを敏感に感じ取り、受けとめることのできる「感性」が保育者にとって最も大切な能力の一つだと言えるでしょう。
「感性」とは、ひとことで言うなら既存の概念や知識にとらわれることなく、自分自身の感覚を通してものや事柄の本質を捉える力、個人の認識の能力のことです。勿論、概念や知識は私たちが生活する上でなくてはならない重要な認識の方法です。しかしそれらが「ひらかれた感性」と結びついて、初めて生きた創造的な認識の力となるのです。
31種類のエクササイズは大きく 「1 身体感覚をひらくエクササイズ」と「2 五感をむすぶエクササイズ」の二つから構成されています。1は、触る、見る、聞くなどを軸にしながら日々の慌ただしい生活の中で慣習や概念で固まっている身体感覚をゆっくり解きほぐすことを目的としています。そして、2では1で刷新された個々の感覚を意識的に結びつけて表すことを試みます。それらの表現の体験を通して、今まで見過ごしてきた身の回りの小さな自然の営みや、その一部でもある自身の感覚の変化に気づくことができるようになるでしょう。それは、子ども時代の感覚を呼び戻すとともに対象化して、子どもの表現を援助できる力に必ずつながっていきます。
よい保育者は、一人ひとりの子どものよいところを見つけて引き出していくことがとても上手です。それは、まず自分自身がありのままの自分をみつめ、どんな小さなことでも自分のよいところや得意なことをみつけ、それを生かして人と関わっていこうとする気持ちが土台となっています。自分を表現するというのは何か特別なことではなく、身近な人と関わっていきたいという素直な気持ちの表れのことなのです。
長年の夢を叶えられ、本当におめでとうございます。不安と緊張で一杯のことと思いますが、先生の一所懸命な気持ちに子どもたちはきっと応えてくれます。子どもたちの笑顔を励みにしながら、一緒に感性と表現力を豊かに育んでいってください。