著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
5つの視点をもって学級経営をしよう!
岐阜県公立小学校教諭長瀬 拓也
2014/1/28 掲載
 今回は長瀬拓也先生に、新刊『ゼロから学べる学級経営―若い教師のためのクラスづくり入門―』について伺いました。

長瀬 拓也ながせ たくや

 1981年岐阜県生まれ。岐阜県立中津高等学校、佛教大学教育学部教育学科卒業。横浜市立小学校教諭、岐阜県公立中学校教諭を経て、現在、岐阜県公立小学校教諭。専門は、学級組織論、教育方法学、社会科教育。高校生の時、中学校教員だった父親が白血病で他界し、教師になることを決意する。NPO法人授業づくりネットワーク理事、教育サークル「未来の扉」代表代行、クラス・マネジメント研究会代表。
 2004年に「わたしの教育記録」(日本児童教育振興財団)新採・新人賞を受賞。主な著書に『新版 若い教師のための読書術』(学事出版)、『教師のための時間術』『誰でもうまくいく!普段の楽しい社会科授業のつくり方』(黎明書房)、『学級経営・授業に生かす!教師のための「マネジメント」』(明治図書、編著)『THE 教師力〜若手教師編〜』(明治図書、共著)などがある。

―本書で提唱されている、「SRRC=G(サーク・ジー)」の視点について、教えてください。

 初任の頃、私は学級経営にとても苦労しました。多くの本を読んだり、先輩達から学んだりしていましたが、常に手探りで、行き当たりばったりの学級経営でした。そこから、学級を経営する上での視点をもつべきだと考えるようになりました。視点をもつことで、「ここを直そう」とか「ここは違うな」と省察したり、修正したりできると考えたのです。
 横浜市の野中信行先生や、早稲田大学の河村茂雄先生に学びながら、考えたのが、と名付けた次の5つの視点をもつことでした。

G:ゴール…クラスの目標や願い・思い
S:システム…クラスを動かす仕組み
R:ルール…クラスの約束
R:リレーション…クラス内の関係づくり
C:カルチャー…クラスの文化・雰囲気づくり

 この5つを意識し、どこに力を入れていくかを考えていくことで、学級経営を省察できると考えました。とくに、「自分はこの5つの視点でどこにこだわるのか、どこをこだわりたいのか」を考えることで、より自分にあったクラスづくりができるようになるのではないかと思います。
 

―では、G:ゴールについて、最も大切にすべきことはなんでしょうか。

 伝え続けることだと思います。
 クラスの在り方や目標を子ども達に語り続けることです。しばしば、このことを忘れてしまったり、いい加減になっていたりするからです。
 しかし、ゴールが教師としての思いでもあります。伝え続けるということが大切なのだと思います。

―S:システムには、日直や当番、給食や掃除など、学級運営の要ともいえる要素がたくさん詰まっています。つい、あれもこれもと考えてしまいがちだと思うのですが…。

 まず、子ども達にとって、クラスにとって何が必要かを考えることが大切です。
 4月のはじめに、どうしても「あれもこれも」となりますが、何よりもまず優先順位を決め、定着させていくことが重要です。

―R:ルールは、なかなか定着しないことも多いと聞きます。どのような工夫が効果的でしょうか。

 この質問は難しいですね。定着しないからこそ「指導」は存在すると思います。私が尊敬する、故家本芳郎先生は、「指導」とは「納得」であると述べています。でも、なかなか簡単にうまくはいかず…、そこに教育する意義がありますね。子ども達が納得し、「さあ、やろう」と思うようなしかけが教師には必要なのだと考えています。

―R:リレーションやC:カルチャーは、特に学級独自のカラーが出やすい・出しやすい部分だと思います。先生がいま、最も力を入れている活動があれば、ぜひご紹介いただけますか?

 私は社会科が専門なので、最近は、ワークショップで社会科を学習することができないかと張り切って取り組んでいます。もちろん全てがそうした授業になるわけではありません。しかし、子ども達が動き、汗をかき、たくさんしゃべり、熱くなるような授業を一つでも多く創り出していくことで、子ども達の関係や文化は高まっていくと考えています。
 ただ、最も取り組んでいる活動といわれると、実はあまりないというのも答えです。
 つまり、関係づくりや文化づくりは、すぐにできるものではありません。私の場合は、「書く」ことを学級活動や学級文化の中で大切なものとして位置づけています。子どもも私もたくさん書いて、伝える。そうした活動を繰り返しています。特効薬はありません。しかし、続けていくことで、漢方のようにじわじわと効いてくると思います。リレーションもカルチャーも続けることが大切ですね。

―最後に、新しい年度に向けて、学級経営を頑張りたい!と思っている読者の先生方、またこれから先生になる方へ、メッセージをお願いいたします。

 肩肘をはらずに、楽な姿勢でいきましょう。張り切るけど無理はしないという意識が大切だと思います。また、読者の皆様の周りには実は多くの「学級経営名人」がいます。ぜひ隣の席の先生から学ぶことを続け、自分の学級を省察してみてください。そして何よりも大切なことは、「続ける」ことです。
 無理なく効果的に「続ける」ことをめざしていきたいですね。

(構成:林)
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