著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
心に迫る自作資料で生徒が語り出す!
東京都多摩市立多摩中学校主幹教諭三浦 摩利
2014/9/1 掲載
今回は三浦摩利先生に、新刊『中学校道徳 自作資料集―生徒が思わず語り合いたくなる24の話―』について伺いました。

三浦 摩利みうら まり

東京女子大学文理学部英米文学科卒業。
平成21年4月〜平成23年3月までの2年間、東京学芸大学大学院教育学研究科において、道徳教育について研究。研究テーマ「話し合い活動をいかした道徳の時間〜中学校における道徳の時間を活性化するために〜」
東京都多摩市立多摩中学校主幹教諭。東京学芸大学大学院教育学研究科修士課程修了(平成22年)。東京都教員研修のための認定講師(中学校道徳)。東京教師道場(中学校道徳)リーダー。
(主な著書)
『教職のための心理学』(共著)ナカニシヤ出版
『新中学校道徳指導細案』(共著)明治図書

―本書には、全内容項目の資料と指導案や活用のポイントが収録されています。どれも思い入れのある資料だとは思いますが、「特におススメ!」という資料を教えてください。

 『ゴリラの真似をした彼女を好きになった』です。内容項目2-(4)男女の敬愛がテーマです。このテーマはやりにくいとか、良い資料が少ないという声を聞きますが、中学生時代は異性に対して関心が強くなる時期なので、中学生が憧れるような男女の敬愛の資料を書こうと思いました。自分自身の成人式で、小学校時代に好きだった人から「お前って中学校時代、何事にも一生懸命だったよな」と言われてすごく嬉しかったので、「タイムマシーンがあったら、当時の自分に教えてあげたい。どんなに励みになったことか!」と本気で思いました。もし、中学校時代、男の子にみんなの前でほめられたらうれしかっただろうな…と中学生の頃のピュアな気持ちを思い出して書きました。

―本書のタイトルは『中学校道徳 自作資料集―生徒が思わず語り合いたくなる24の話―』ですね。先生が実際に授業された中で、この資料ではこんな語り合いがあった…というエピソードがあれば教えてください。

 『コロはコロなんだよ!』という資料は生徒に人気があります。この資料を使って授業をしたところ、ペットを飼っている生徒の気持ちと、飼っていない生徒の気持ちでは、だいぶ隔たりがあることを感じました。
 実際にペットの死を経験している生徒の思いはかなり強く、主人公の「また、新しい犬を飼えばいい」という言葉に激怒していました。ペットを飼っていない多くの生徒は、それに対して「そんなに怒らなくても…」と驚いていました。人間の死は大きいことと受け止めても、動物の死を重く受け止めていない生徒は多いと感じました。核家族化が進んでいる現代の生徒たちにとって、生命尊重を考える授業は貴重であると思います。

―ところで、既存の資料もたくさんある中で、先生が資料を自作される理由は何ですか?

 目の前の生徒の実態に合った資料を作りたいという思いが強くあるからです。自分が作った資料なので、教師の説話ではどういう思いでこの資料を書いたのか話すこともできます。インタビューを通して書いた資料は、書ききれなかったことがたくさんあるので、そのことを話すこともできます。特に、内容項目4-(8)郷土愛は、生徒にとって自分の地域のことが書かれていると、既存の資料よりも生徒が喜びます。
 

―資料の題材はどのようなところから発掘されるのでしょうか? 何かコツはありますか? また、資料化する際に気をつけていることがあれば教えてください。

 生徒とよく話します。また、班ノート(班での交換日記)を読んで、生徒の考えていることを参考にします。生徒にとって切実な問題は何か、関心事は何か、どういう人物に憧れているか等アンテナをはっています。また、テレビ、インターネット、雑誌、本、新聞、映画、友人との会話など…すべて参考にしました。
 生徒にとって胸に響き、共感でき、よりよく生きる道筋を考えやすい資料作りを心掛けました。生徒がこういう自分になりたいと思っているところに結び付く価値や、憧れをもつ価値に関する資料は、生徒の心の動きをよく考えて書きました。

―最後に、本書の資料を活用して「道徳授業に取り組もう!」という読者の方にメッセージをお願いします。

 もし、自分の学校で、お手持ちの資料が生徒の実態に合わないな…と感じたら、本書の資料を活用してみてください。本書の資料は、生徒にとって「そういうことってあるある!」「同じようなことを体験したことがあって、考えやすい!」とリアリティーをもつことを大事にしているので、考えやすいものが多いと思います。
 指導案のページの「こんな風に活用して!」の部分を参考にしてください。いじめ問題、キャリア教育、国際理解教育、オリンピックなど…、最近の教育課題や話題に関する資料もあります。生徒が思わず意見を語り合いたくなる道徳の授業ができるのではないかと思います。ご意見、ご感想をいただけるとうれしいです。

(構成:茅野)
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