著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
情熱だけでは乗り切れない! 今、部活動指導に必要なこと
大阪市立上町中学校教諭杉本 直樹
2015/1/29 掲載
  • 著者インタビュー
  • 教師力・仕事術
 今回は杉本直樹先生に、新刊『部活動指導スタートブック 怒鳴らずチームを強くする組織づくり入門』について伺いました。

杉本 直樹すぎもと なおき

1980年大阪市に生まれる。
現在,大阪市立上町中学校で国語科教諭として勤務。
前任校から野球部を指導し,現在で12年目(私立高校で講師経験1年)。小学校から地域の少年団でソフトボールを始め,中高と学校の野球部に所属。中学校当時の顧問の影響を受け,中学校教員を目指す。大学生のころは自分が所属した小学校のチームでコーチと監督を経験し,指導者としての楽しみを知る。
「教職員組織のチームワーク」「部活動組織論」「生徒指導」などが研究分野。「大阪一のチーム」を目指し,日々部活動指導に励んでいる。

―杉本先生は、部活動指導において、「組織づくり」を重視されています。それはなぜでしょうか?

 部活動の大会の折に、強くても統率のとれていないチームを目にすることがあります。そういうチームの生徒は、顧問の先生の指示もきちんと聴いていません。こういった姿を見過ごすことはできません。「選手である前に生徒である」という部活動指導の前提が揺らいでいるからです。そういうチームは、強くても愛されない(応援されない)チームです。私の理想は「だれからも愛してもらえるチーム」です。
 また、目標に向かって活動していくときに、個々がバラバラでは達成できません。こういう方針や目標を共有するために、組織づくりは不可欠だと考えています。

―本書では、生徒各々が活動を記録する「部活動ノート」が紹介されています。この「部活動ノート」を取り入れる際のポイントを教えてください。

 塾に習い事といろいろなことを掛け持ちしている多くの中学生にとって、部活動は生活のほんの一部です。そうなると部活動に割く時間は相対的に少なくなり、気持ちはヨソに向きがちです。そんな現状なので、私は「部活動ノート」(野球ノート)にあまり多くのことを求めず、少しでも部活動(自分の取り組む競技)について考える時間にしてほしいと思っています。気持ちが向いてくれば、おのずと書く量も増え、内容も濃くなっていきます。徐々に質と量が向上すればよい、くらいの気持ちです。
 教師がしっかりノートを見る時間がない中で、生徒だけに多くを求めるのはナンセンスだと思います。

―最近、拘束時間の長さ、生徒の重大な怪我など、部活動にかかわる問題やトラブルが頻繁に報道されています。杉本先生ご自身が現場で感じている最も大きな問題はどんなことでしょうか?

 教師という仕事は、思いついたらいくらでもやることが湧き出てきます。とはいえ、我々中学校教師の本分は、教科指導であり、校務分掌であり、生徒指導です。そう考えると、部活動指導のプライオリティはだいぶ低い位置にありますが、それに要する労力はかなりのもので、責任も小さくありません。このアンバランスさこそが最も大きな問題であると感じます。
 自身がまだ自覚していない問題も多くありそうですが、私は自身が経験してきた競技の顧問をしていることもあり、楽しく指導できています。しかし、このあたりのバランスが大きく崩れると、部活動の顧問という仕事は非常に重い負担になると思います。

―では、そういった問題やトラブルと背中合わせの状況でも、部活動の顧問にやりがいを見いだされているのはなぜでしょうか?

 部活動では、生徒の成長を感じる場面が多くあります。この成長を見守れるのが何よりのやりがいです。例えば、入部してきたときに体の小さかった生徒が、見違えるようにたくましくなって引退していく姿を見届けることができます。
 また、進路で悩んだときに、自分の担当学年ではない生徒が相談をしてくれます。部活動には、自分の担当学年ではない生徒も大勢いるので、このように多くの生徒とかかわれる楽しさもあります。
 もちろん、チームとして1つの目標に向かって取り組み、結果が出たとき、「やっててよかった」と思うこともあります。
 部活動には難しい問題も多くありますが、そのような問題を踏まえつつ、自らやりがいを見いだしていくことが大事なのかもしれません。

―最後に、読者の先生方に向けてメッセージをお願いいたします。

 今回、この『部活動指導スタートブック』は、部活動指導に困っている若い先生や、これから教師になろうとしている学生さんに多く読んでいただきたいと思って書きました。
 部活動=熱血指導というイメージで語られがちですが、一番大事なのは、ていねいかつ継続的に生徒とかかわっていくことだと思います。厳しくするばかりが指導ではありません。
 これから先、部活動指導は大きく様変わりしていくと思います。そういう中で本書がどのように受け止めていただけるか、私も楽しみです。様々な問題がある中でも、どのように指導をしていくか。どうやって組織をつくっていくか。これを機会にみなさんと一緒に考えていくことができれば幸せです。

(構成:矢口)
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