- 著者インタビュー
- 教師力・仕事術
部活動の大会の折に、強くても統率のとれていないチームを目にすることがあります。そういうチームの生徒は、顧問の先生の指示もきちんと聴いていません。こういった姿を見過ごすことはできません。「選手である前に生徒である」という部活動指導の前提が揺らいでいるからです。そういうチームは、強くても愛されない(応援されない)チームです。私の理想は「だれからも愛してもらえるチーム」です。
また、目標に向かって活動していくときに、個々がバラバラでは達成できません。こういう方針や目標を共有するために、組織づくりは不可欠だと考えています。
塾に習い事といろいろなことを掛け持ちしている多くの中学生にとって、部活動は生活のほんの一部です。そうなると部活動に割く時間は相対的に少なくなり、気持ちはヨソに向きがちです。そんな現状なので、私は「部活動ノート」(野球ノート)にあまり多くのことを求めず、少しでも部活動(自分の取り組む競技)について考える時間にしてほしいと思っています。気持ちが向いてくれば、おのずと書く量も増え、内容も濃くなっていきます。徐々に質と量が向上すればよい、くらいの気持ちです。
教師がしっかりノートを見る時間がない中で、生徒だけに多くを求めるのはナンセンスだと思います。
教師という仕事は、思いついたらいくらでもやることが湧き出てきます。とはいえ、我々中学校教師の本分は、教科指導であり、校務分掌であり、生徒指導です。そう考えると、部活動指導のプライオリティはだいぶ低い位置にありますが、それに要する労力はかなりのもので、責任も小さくありません。このアンバランスさこそが最も大きな問題であると感じます。
自身がまだ自覚していない問題も多くありそうですが、私は自身が経験してきた競技の顧問をしていることもあり、楽しく指導できています。しかし、このあたりのバランスが大きく崩れると、部活動の顧問という仕事は非常に重い負担になると思います。
部活動では、生徒の成長を感じる場面が多くあります。この成長を見守れるのが何よりのやりがいです。例えば、入部してきたときに体の小さかった生徒が、見違えるようにたくましくなって引退していく姿を見届けることができます。
また、進路で悩んだときに、自分の担当学年ではない生徒が相談をしてくれます。部活動には、自分の担当学年ではない生徒も大勢いるので、このように多くの生徒とかかわれる楽しさもあります。
もちろん、チームとして1つの目標に向かって取り組み、結果が出たとき、「やっててよかった」と思うこともあります。
部活動には難しい問題も多くありますが、そのような問題を踏まえつつ、自らやりがいを見いだしていくことが大事なのかもしれません。
今回、この『部活動指導スタートブック』は、部活動指導に困っている若い先生や、これから教師になろうとしている学生さんに多く読んでいただきたいと思って書きました。
部活動=熱血指導というイメージで語られがちですが、一番大事なのは、ていねいかつ継続的に生徒とかかわっていくことだと思います。厳しくするばかりが指導ではありません。
これから先、部活動指導は大きく様変わりしていくと思います。そういう中で本書がどのように受け止めていただけるか、私も楽しみです。様々な問題がある中でも、どのように指導をしていくか。どうやって組織をつくっていくか。これを機会にみなさんと一緒に考えていくことができれば幸せです。