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冒頭から手前味噌な話で恐縮なのですが、全国各地での僕の拙講座において、子ども達の映像を見た先生方から、「どうやったら子ども達の目がこんなにキラキラするのですか?」という質問を受けることがあります。僕の中の答えはただ1点…「素敵な子ども達だから」なんですが(笑)、もし相関する要素があるとすれば、その一つが「教師の言葉」だと思っています。
ところが、学校現場で耳を澄ませば、例えば、ユーモアがなく、ストンと心に落ちるような比喩もなく、安易に褒め過ぎたり、逆に厳し過ぎたり、何より、子ども達の心に寄り添っていない…、そんな教師の言葉が意外と聞こえてくるのではないでしょうか…。(自戒を含みます。)
本書では、そんな問題意識を起点として、僕のこれまでの教師人生で経験的に編み出し、活用してきた“言葉がけ”の中で、「これは有効であったかな…」と思われる厳選50例を、場面別に紹介しています。
ただし僕は、本書において紹介する言葉がけ群が、所詮、僕という一教師の、一面的な見方・捉え方の域を抜けないものであることを自覚しています。故に、本書を通じて僕が訴えたいことは、“言葉がけ”そのものではなく、いかにして子ども達の心に届く“言葉がけ”を生み出し、ストックしていくのか、その原理・原則らしきものを提案する、まさにこの点に尽きます。
既に本書を手にしておられる、或いはこれから購入しようとしておられる先生方を前に、著者自身がこんなことを言うのは大変憚られるんですが、「必ず届く」「必勝のフレーズ」という本書のタイトルについて、僕は編集者の方に最後の最後まで抗ったんです。「このタイトルやめてもらえませんか」と…(笑)。程度にもよりますが、教育の世界において、「絶対」とか「必勝」とか「全員」とかいう概念は時として危険…という思いがあるからです。
しかし翻って、例えば10人の子どもがいたら、その中の1人ならば、或いはこのケースならば必ず届くという“言葉がけ”を、プロの教師ならばもっていたいとも思っています。それぞれのケースでの、それぞれの子ども達の心に届く言葉をもし用意することができたなら、きっと子ども達は、苦しい場面に対峙しても、目をキラキラと輝かせて活動するのではないでしょうか。そういう意味で、本書のタイトルは、「個々の実態やTPOに応じて引き出して使うことのできる、子どもの心に必ず届けたい言葉がけの極意」と翻訳することができます。長いですが…(笑)。
その答えをお知りになりたければ本書を是非ご覧いただきたいところですが(笑)、例えばこんなことがありました。
場面:大会前の水泳練習(挙手・礼も含めたスタート練習時)
対象:小学校6年生女子
様子:自分の名前をコールされたらきちんと手を挙げる練習
中、だるそうにして全く手を挙げない子ども達。
言葉A:「こらあ!そこ!きちんと手を挙げんか!」
言葉B:(真面目な顔で)「早く、きちんと手を挙げなさい。さ
もないと、(スタート合図の)ピストルを撃たれるよ。」
Aが若かりし頃の僕の言葉、Bは僕の師匠であるベテラン教諭の言葉です。僕が怒鳴りつけるような大きな声を出しても一向に挙がらなかった子ども達の手が、ベテラン教諭のその一言によって挙がったのです。しかも子ども達はなぜか笑顔で…。その後、プールサイド全体が笑顔になったのは想像に難くないでしょう。子ども達に厳しいことを要求しているのにもかかわらず…です。それはこの先生が子ども達に対する厳しい言葉や要求をユーモアで包み込んでいるからです。
さすがにこの事例は本書では紹介していませんが(笑)、僕が主張する「厳しさをユーモアで包み込む」言葉がけの一例です。
この他にも様々な事例を通して、多くの原理・原則(らしきもの)を紹介しています。是非本書を手にとってご覧いただければと思います。
僕は未熟な教師ですが、これまで、「なんとかして子ども達を伸ばしたい」という一心で、多くの先輩教師に学び、素敵な子ども達と共に過ごす中で試行錯誤を繰り返してきました。本書は、そんな僕の学級経営を、“言葉がけ”の側面から切り取った書籍になったと自負しているところです。
本書が、志ある全国の先生方のお役に少しでも立ち、日本全国の多くの子ども達の笑顔に寄与することができるならば、それは望外の喜びです。