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「学校現場は選択の連続である」これは、まさしくその通りなのです。みなさんは「選択する場面」と聞くと、次の時間が体育で、「雨がポツポツと降ってきそうだ。外でやりたいところだけれど、どうしようか…」といった場面や、遠足の当日に「昼前から降水確率が70%になっている。今も雲行きが怪しい…。どうするべきか」などといった場面を思い浮かべると思います。しかし、本当は、もっと小さな場面で私たちは「選択」の毎日を送っているのです。「先生、残してもいいですか?」給食指導中に私たちがよく子どもに言われる言葉です。その子のお皿を見てみると、子どもの口でもあと二口で完食できそうなくらいしか残っていない…。そんなときに、その子の訴えの通り残させるのか、それとも食べさせるのか…。その選択権は教師にあります。そして、どちらの選択をしていくかが、自身の学級の積み上げとなっていくのです。そうした、みなさんが普段からされている「選択」に目を向けてほしいと思います。
本書の中でも紹介していますが、「赤ペンではなく、赤鉛筆を使わせる」ということです。私は、年度初めに「赤鉛筆を使うように」と指導します。赤ペンだと、裏写りして教科書やノートが汚くなってしまうし、赤ペンを許可すると、青ペンや黄ペンと、どんどん増え、筆箱が学習で使わない筆記用具でパンパンになってしまいます。そのような理由で、赤ペンの使用は原則認めていないのですが、子どもたちは、「赤鉛筆を忘れたので、赤ペンを使ってもいいですか」と必ず聞いてきます。「じゃあ、今日だけならいいよ」とおっしゃる先生もいらっしゃるのではないでしょうか。私は、ここでも絶対に認めません。「先生の赤鉛筆を貸します。赤ペンは使いません」と言い切ります。これは、年度初めに「授業中は赤鉛筆を使います」と宣言しているからです。1回でも例外をつくると「先生は言っていることとやっていることが違う」となり「先生の言うことは聞かなくてもいい」という「ヒドゥンメッセージ」(かくれたメッセージ)を与えることになります。小さな場面ですが、大きな影響を与える場面なのです。
「小さな場面の選択を厳しくする」ということです。9月や11月が荒れやすいのはなぜか。それは、子どもたちが学校生活を送るうえで、負担を感じる時期だからです。9月は夏休みが明けて、学校のある生活リズムに体を戻すのがつらい時期です。11月は、2学期も中盤を越え、疲労もたまってくる時期でもあります。子どもにも子どもなりの事情があります(笑)。そこで、大切にするのは、小さな場面です。文字が乱雑になる、授業に少し遅れて入ってくる、授業中に姿勢が崩れる…。こうした小さな場面を大切にし、厳しくすることです。厳しくすると言っても、怒鳴るということではありません。認めないということです。「書き直していらっしゃい」「時間を守りなさい」「姿勢を正しなさい」と、短く制すれば十分です。こうした小さな場面がきちっとできれば、荒れるなどといったことはありません。
『この「選択」は間違いだった…』と振り返る選択ですか…。山ほどあります(笑)。ありすぎてどれを選ぼうか、迷ってしまいますね。そして、やはり、新採当時のことが多く思い出されます。
朝の学習の時間に読書タイムに取り組んでいたときのことです。当時の学校は、朝の学習の時間も、担任が入り込んで指導に当たっていました。ある女の子が私のところへじゃれに来ました。読書時間中ですので、本来ならば「相手にしない」「きちんと読書をしている子を取り上げてほめる」「きちんと叱る」などといった選択をしなくてはいけない場面でしたが、私は、その子の話を聞き、対応してしまいました。「なんで読書しないの?」「昨日は何時に寝た?」―その子にとってはいい先生のように思うかもしれませんが、他の子たちは、「なんで先生は読書してないのに怒らへんねやろ?」と思っていたことでしょう。新採のときのクラスは、本当に大変な状況でした。こうした私の「選択ミス」が積み重なって、招いてしまったのだと思います。
小さな「選択」を大切にしてください。一流の先生や経営者ほど「小さなこと」を大切にします。「神は細部に宿る」という言葉もあります。そして2学期、さらに学級を高めたいと思っておられる先生は「選択のレベルを上げる」ことを意識されてみてください。私もそのつもりです。教師の毎日の「小さな選択」が学級をつくっていくのです。「よりよい選択」「子どもたちを高める選択」をすることで、子どもたちを成長させていけるよう、頑張っていきましょう。