著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
アクティブ・ラーニングの成功は、学級集団のチーム力にあり
上越教育大学教職大学院教授赤坂 真二
2016/10/11 掲載

赤坂 真二あかさか しんじ

1965年新潟県生まれ。上越教育大学教職大学院教授。学校心理士。19年間の小学校勤務では、アドラー心理学的アプローチの学級経営に取り組み、子どものやる気と自信を高める学級づくりについて実証的な研究を進めてきた。2008年4月から、即戦力となる若手教師の育成、主に小中学校現職教師の再教育にかかわりながら、講演や執筆を行う。
主な著書・編著書に、
『気になる子を伸ばす指導 成功する教師の考え方とワザ』(小学校編・中学校編)『思春期の子どもとつながる学級集団づくり』『いじめに強いクラスづくり 予防と治療マニュアル』(小学校編・中学校編)『スペシャリスト直伝!学級を最高のチームにする極意』『一人残らず笑顔にする学級開き 小学校〜中学校の完全シナリオ』『最高のチームを育てる学級目標 作成マニュアル&活用アイデア』『スペシャリスト直伝!学級づくり成功の極意』『クラス会議入門』『スペシャリスト直伝!成功する自治的集団を育てる学級づくりの極意』『信頼感で子どもとつながる学級づくり 協働を引き出す教師のリーダーシップ』(小学校編・中学校編)『集団をつくるルールと指導 失敗しない定着のための心得』(小学校編・中学校編)『やる気を引き出す全員参加の授業づくり 協働を引き出す教師のリーダーシップ』(小学校編・中学校編)(以上、明治図書)などがある。

―本書はベストセラー「学級を最高のチームにする極意」シリーズの第10弾として、テーマは「アクティブ・ラーニングで学び合う授業づくり」です。本書のねらいと読み方について、教えてください。

 本シリーズはみなさんの学級を協力して動けるチームにするための参考書として好評をいただいています。チームとは、協働的な課題解決集団のことをいいます。アクティブ・ラーニングは、まさにクラスのチーム力が求められる学習のスタイルです。協力をしながら課題を解決し、その解決した体験がさらにクラスのチーム力を高めるという成功のサイクルをつくるための授業づくりの情報が満載です。

―次期指導要領に向けて、学習過程の改善の視点として打ち出されている「アクティブ・ラーニング」(「主体的・対話的で深い学び」の実現)ですが、先生はHP連載(「主体的・協働的な学びを引き出す教師のリーダーシップ」)の中で、「主体的な学び」があってこその「対話的な学び」「深い学び」であり、足りないとされる“学びに向かう力”の育成は、「主体的な学び」抜きには実現は不可能と述べられています。この点について、教えてください。

 平成28年8月26日に中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会から出された「次期学習指導要領等に向けたこれまでの審議のまとめ」には、「子供たちの現状と課題」として次のことが指摘されています。「学ぶことと自分の人生や社会とのつながりを実感しながら、 自らの能力を引き出し、学習したことを活用して、生活や社会の中で出会う課題の解決に主体的に生かしていくという面から見た学力には、課題がある」。アクティブ・ラーニングとして様々な交流型の学習が実践されていますが、どうも交流する、かかわるなどの方法論が注目されているように思います。しかし、上記のような課題を克服するためのアクティブ・ラーニングです。どんなに子どもたちが対話的に学ぼうと高度な教科の特性に触れようと、そこに子どもたちの学習者としての主体性がないものは、やったふりのアクティブ・ラーニングになるのではないでしょうか。

―先生は本書の中で、アクティブ・ラーニングについて5つのポイントを挙げられています。本書でも詳しく解説されていますが、このポイントについて教えてください。

 子どもたちが主体的に学習をしているときは、学習に対して意欲的になっているときです。アクティブ・ラーニング成功の極意は、子どもたちのやる気を引き出せるかどうかにかかっています。子どもたちのやる気を引き出すには、学習における自己決定の場の保証課題に対する有能感を高めること、そして、学習の場における子どもたちの良好な関係性が重要です。アクティブ・ラーニングの成功は、授業の構想力だけでなく、学級集団づくりの能力が求められます。

―アクティブな授業づくりにおいては、「評価についてどうすれば〜」という声も多く聞かれます。本書の中でも詳しく取り上げられていますが、評価について、先生のお考えをお聞かせください。

 本書に示された実践のすべてがそうした構造になっているわけではありませんが、私が考えるアクティブ・ラーニングには、従来の学習課題と学び方にかかわる課題の2つの課題が必要だと考えています。これまでは「何ができるようになったか」を重視していましたが、アクティブ・ラーニングでは「どのように学んだか」も評価の対象になります。その2種類の課題を達成したかどうかが評価のポイントになります。

―アクティブな授業づくりや、子どもの活動的な姿については、いかに継続していくか、ということも大切なポイントだと思います。継続を生み出すには何が重要でしょうか。

 アクティブ・ラーニングが目指すところは、短期間の付け焼き刃の実践で育つようなものではありません。学んだことを社会貢献に活かすことができる社会人であり、市民の育成だと考えています。継続的な実践なくして目的の達成はあり得ません。他者と主体的にかかわり合い、助け合いながら、必要な情報を深く理解することを通して課題を達成する学修者の姿を授業者がしっかりとイメージすることが大事です。ゴールイメージとそれを実現したいと願う強い思いが、継続的な実践を生む原動力です。

―最後に、読者の先生方へメッセージをお願いいたします。

 社会が激変することが予想される近未来に生きる子どもたちが、幸せになるための力を育てること、それがアクティブ・ラーニングのねらうところだと考えています。本書に示された授業群から、協力し合ってたくましく課題を解決する子どもたちの姿が読み取れることでしょう。読者のみなさんの教室でも生き生きと学び合う子どもたちの姿が見られることを願ってやみません。

(構成:及川)
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