- 著者インタビュー
- 授業全般
本シリーズはみなさんの学級を協力して動けるチームにするための参考書として好評をいただいています。チームとは、協働的な課題解決集団のことをいいます。アクティブ・ラーニングは、まさにクラスのチーム力が求められる学習のスタイルです。協力をしながら課題を解決し、その解決した体験がさらにクラスのチーム力を高めるという成功のサイクルをつくるための授業づくりの情報が満載です。
平成28年8月26日に中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会から出された「次期学習指導要領等に向けたこれまでの審議のまとめ」には、「子供たちの現状と課題」として次のことが指摘されています。「学ぶことと自分の人生や社会とのつながりを実感しながら、 自らの能力を引き出し、学習したことを活用して、生活や社会の中で出会う課題の解決に主体的に生かしていくという面から見た学力には、課題がある」。アクティブ・ラーニングとして様々な交流型の学習が実践されていますが、どうも交流する、かかわるなどの方法論が注目されているように思います。しかし、上記のような課題を克服するためのアクティブ・ラーニングです。どんなに子どもたちが対話的に学ぼうと高度な教科の特性に触れようと、そこに子どもたちの学習者としての主体性がないものは、やったふりのアクティブ・ラーニングになるのではないでしょうか。
子どもたちが主体的に学習をしているときは、学習に対して意欲的になっているときです。アクティブ・ラーニング成功の極意は、子どもたちのやる気を引き出せるかどうかにかかっています。子どもたちのやる気を引き出すには、学習における自己決定の場の保証、課題に対する有能感を高めること、そして、学習の場における子どもたちの良好な関係性が重要です。アクティブ・ラーニングの成功は、授業の構想力だけでなく、学級集団づくりの能力が求められます。
本書に示された実践のすべてがそうした構造になっているわけではありませんが、私が考えるアクティブ・ラーニングには、従来の学習課題と学び方にかかわる課題の2つの課題が必要だと考えています。これまでは「何ができるようになったか」を重視していましたが、アクティブ・ラーニングでは「どのように学んだか」も評価の対象になります。その2種類の課題を達成したかどうかが評価のポイントになります。
アクティブ・ラーニングが目指すところは、短期間の付け焼き刃の実践で育つようなものではありません。学んだことを社会貢献に活かすことができる社会人であり、市民の育成だと考えています。継続的な実践なくして目的の達成はあり得ません。他者と主体的にかかわり合い、助け合いながら、必要な情報を深く理解することを通して課題を達成する学修者の姿を授業者がしっかりとイメージすることが大事です。ゴールイメージとそれを実現したいと願う強い思いが、継続的な実践を生む原動力です。
社会が激変することが予想される近未来に生きる子どもたちが、幸せになるための力を育てること、それがアクティブ・ラーニングのねらうところだと考えています。本書に示された授業群から、協力し合ってたくましく課題を解決する子どもたちの姿が読み取れることでしょう。読者のみなさんの教室でも生き生きと学び合う子どもたちの姿が見られることを願ってやみません。