著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
今までの授業にアクティブ・ラーニングの視点を入れてみよう!
埼玉県寄居町立寄居中学校瀧沢 広人
2016/11/21 掲載

瀧沢 広人たきざわ ひろと

1966年東京都東大和市に生まれる。埼玉大学教育学部卒業後,埼玉県公立中学校,ベトナム日本人学校などに勤務。中学3年生の夏に外国人と話をした経験から英語が大好きになり,将来は英語の先生になりたいと思うようになった。教師となってからは,1人でも多くの生徒が,英語を楽しいと感じてもらえるよう,著書やセミナーで学ぶ。また自らも楽しいアイデアなどを発信するようになる。ここ数年は,授業ですぐに使えるような教材を開発したり,アイデア集を提供したりしている。

―先生の授業では、子供たちの主体的・対話的で深い学びにつながる工夫が随所に見られると思います。アクティブ・ラーニングの授業づくりで教師が押さえたいキーワードはズバリ何でしょうか。

 やはり、生徒の主体性だと思います。いかに生徒に主体的な取組をさせるかがポイントになります。しかしただ、ほおっておくだけでは主体性は引き出せません。自分から勉強しようという思いを、時間をかけて、授業で育てていくことです。例えば、ノートチェックです。これを教師が生徒のところに行ってはダメです。生徒が教師のところに来させるようにするのです。そこに、主体性が生まれるのです。Chapter 1では、今までの授業にアクティブ・ラーニングの視点を入れたアイデアを紹介しています。

―2つ目のキーワードとして「仲間とともに協働的に解決するチーム力」を挙げているのは、どのような理由からですか?

 2つの思いがあります。1つ目は、生徒が大人になる時代には、今ある職業の約半分が人工知能で補えると言われています。そのような先行き不透明な時代には、知識の量だけでなく、培った知識を活用し、仲間とともに課題を解決するチーム力の発揮が必須です。そのため、個人で学習すると同時に、仲間と協力して課題を解決しようとする生徒を育てていく必要があります。2つ目は、生徒の主体的な学びを、より確かなものとしていきたいからです。指示されてなら動ける生徒も、大きな課題を与えられて、自ら考え行動することは、訓練を積まなければ、なかなかできないものです。小さな課題を解決しながら、自信をつけさせ、自発的・能動的な活動、自ら考えて学習する生徒を育てていくことを期待しています。

―本書では領域別の活動アイデアの他に、習得・活用・探究の場面での活動アイデアも紹介されています。これはどのように活用してほしいと思いますか?

 今までの授業では、文構造を理解させ、語彙を学ばせ、読みの力を高めるなど、授業内活動のほとんどが「習得」でした。もちろん習得がなければ、その後の活用もあり得ないのですが、これからは、習った表現を使ってどのくらい表現できる(理解できる)のかの「活用」場面も、積極的に授業に取り入れたいです。特に既習事項を繰り返し使わせることは、確かな定着につながります。また「探求」場面では、大きな課題を与えられて、その課題を解決する協働学習型の場面が想定されます。小さな探究から、プロジェクト学習のような大きな探究まで、こちらは実践研究の余地が残されています。

―「活動あって学びなし」にならないよう、教師が気をつけておくべきことは何であると、先生は思いますか?

 やはり「活動にはねらいがある」ということだと思います。どんな活動であっても、本来はなんらかのねらいがあるはずです。あるはずのねらいに気づかずに、授業を行うのは、「活動あって学びなし」の状態となってしまいます。例えば、音読です。音読を日々授業で指導していますが、何を目標にして指導しているかです。そこを教師がきちんと自覚し、指導に当たっているかが大事なポイントとなると思うのです。

―最後に全国で英語を教える先生方に一言お願いいたします。

 新しい指導法、新しい授業提案がなされると、なんとしてでも授業を変えなくてはいけないという使命感にとらわれてしまいがちですが、学習者は目の前の生徒たちです。彼らにとって有益な方法を選択していけばよいのです。そもそもアクティブ・ラーニングは、もともと大学の講義形式からの脱却から生まれてきた概念です。私たち中学教師は、生徒に活動を与え、言語を対話を通して指導してきたはずです。だから今までの授業のすべてを否定しなくてもいいのです。ただ、主体性という観点からは、まだまだ課題があるように思えます。生徒がやらされ感ではなく、自分から学習しようと思う気持ち…。それらを育てていきたいと思っています。
 共に生徒のためになる授業を追い求めていきましょう。

(構成:木山)
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