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- 著者インタビュー
- 学習指導要領・教育課程
アクティブ・ラーニングについて、「今までの活動型授業と同じでは」「授業に話し合いを取り入れればよいのでは」など様々な言説が飛び交ってきました。いずれもアクティブ・ラーニングの一面を言い当てているが、核心部分が見過ごされています。「見方・考え方」を働かせ「深い学び」を実現する能動的な学習活動の展開です。換言すれば、知識・技能と資質・能力を結び付ける学びが求められているのです。
本書では、こうした教育改革のエッセンスを具体例を通して読み解き、授業づくりの方途や評価など改革の姿をトータルに示すことをねらいとしています。
予測困難な時代を生きるには、知識・技能を活用し答えのない問題に「解」を見いだす力、追究し続ける態度などの資質・能力が必要です。このような資質・能力は知識・技能を伝えるだけの授業では育成できません。例えば、考える力は考える方法を教えるだけでは育ちません。実際に、児童生徒に考えさせてはじめて育つものです。そのため主体的に問題を発見し考える能動的な学習、すなわちアクティブ・ラーニングという授業改善の視点が示されたのです。
児童生徒が能動的な学びをすれば優れた授業になる保証はありません。そのためには、何について、どのように考えていくのか、考えるための視点や方法、枠組みに沿って考察し教科等の本質的な理解に至る「深い学び」が必要になります。答申ではこの視点や方法を「見方・考え方」と述べています。授業でこれを働かせるためには、答申で例示された各教科等の「見方・考え方」を教材・題材に即して具体的な言葉に言いかえ、児童生徒に理解可能な形にしておくことが肝要です。
アクティブ・ラーニングの視点に基づく授業づくりのポイントは、@各教科の特質に応じた育成すべき資質・能力の明確化、Aアクティブ・ラーニングの三つの視点に対応した学習活動のイメージ化、B「見方・考え方」を働かせ考察して到達する本質的な理解内容の明確化、C限られた授業時間を効率的に使うICT活用の検討となります。
答申では各教科等の目標は「資質・能力の三つの柱」で整理されるといわれています。「観点別学習状況の評価」の観点もこれに対応して、「知識・技能」「思考・判断・表現」「主体的に学習に取り組む態度」の三観点になるようです。この実現状況は、資質・能力が実際に働いている学習場面、あるいは働いた結果を捉えなければ評価できません。そのため評価の時期と方法の検討が必要となります。
手のひらサイズの小さなスマホは図書館所蔵の書籍以上の膨大な情報を取り出すことができます。大学の授業でも私が難しい概念を使うと学生はスマホで検索をはじめます。知識を教える時代は過去のものとなり、知識を使いこなし新たなアイデア・価値を創り出す力を育てる時代に向かっているのです。授業観、教材観、指導観、評価観、カリキュラム観にわたるパラダイム転換が起きている今、アクティブ・ラーニングの本質を掴んだ先生方の指導力こそパラダイム転換に応えることができると思います。