- 著者インタビュー
- 音楽
小中学校の音楽の授業に、自らの責任ではない困りごとがあり、先生の理解も得られずつらい思いをした(している)方々がいます。音楽担当の先生が、困りごとのある人の存在と実態を知ることがまず大切であると思います。本書は副題どおり「はじめの一歩」であり、内容に不十分な面があるのを自覚していますが、とにかく手に取って読んでいただけるよう、やさしく分かりやすい表現、イラストによる説明などを心がけました。
本書のChapter3で、授業づくりに役立つ30のコンテンツを、次の6つの視点で紹介しています。
(1)物的環境
(2)ルールの設定と徹底
(3)授業UDの基本的配慮事項
(4)UD化された授業
(5)先生に大切なスキル
(6)情報提供
最初に取り組みやすいのは(1)(2)(3)のカテゴリーの中の項目で、それらは「実行すれば」実現できます。
しかし本当に大切なのは、(4)に書きましたが、指導内容を徹底的に絞り込み、「ねらい―活動―評価(見取り)」の3つが整合した授業を展開することです。この視点からご自分の授業をチェックすることが、ユニバーサルデザインの始まりになると思います。
聴覚過敏の人にとっては、音自体が暴力的に作用しています。また歌唱や器楽の実技は、非常に複雑な脳神経ネットワークの働きによるものです。ましてや聴きながら・歌いながら動く、楽譜を見ながら歌ったり弾いたりする、などは、努力してもうまくいかない場合があるという理解と配慮が必要です。
また音楽を指導できる先生は、やはり聴覚からの情報処理に長けた方々です。それほどではない児童生徒が多いことに配慮し、音や音声言語による例示や説明だけでなく、視覚的な情報も丁寧にたくさん取り入れるよう心掛けることは、たいへん重要です。
まずは、児童生徒の困りごとは何かを把握しましょう。鍵盤楽器の運指が苦手、文字や楽譜を読むのが困難、聞き取ったことを理解しにくいなどの困りごとに気付いたら、まず教員間で情報を伝え合い、その児童生徒の特性を理解し、学びやすくなるよう協働して支援します。保護者との連携も重要です。
Chapter2では、発達診断の専門家と連携して、中学校生活スタート時から学びやすい支援を無理なく行うという事例を紹介しています。参考になさってください。
すべての児童生徒か楽しく学べる授業を展開していただきたいと心から願っています。本書がその一助になれば幸いです。