全教科の学習評価が、同じ名称の3観点になりました。観点ごとに作成する評価規準は、学習のねらいが実現された生徒の姿を想定したものです。したがって、「音楽科が育む力や態度は何か」が他教科との比較においても明確化しました。この点は、音楽科の意義を広く共有することにつながります。
また、従前の音楽科の観点にはなかった「知識」が「知識・技能」として位置づけられました。新学習指導要領の歌唱、器楽、創作、鑑賞それぞれの事項イの趣旨をしっかり捉えることが重要です。本書では、「知識」の評価の留意点などを述べています。
学習指導要領と学習評価の基本的な事柄を述べた1章を受けて、2章では、新しい学習評価の理解を深め、評価規準を作成したり、題材ごとあるいは評定に総括したりする方法等を解説しています。そして3章に11種の評価事例を掲載しました。2章、3章それぞれの冒頭のコンセプトマップは、本書全体を見渡した上で「特に知りたい」「興味がある」項目などを選んでお読みいただけるように掲載したものです。
ワークシートは、教科書等を補完し、「ねらい」の実現に向けて学びを深めていくための教材です。特に音楽科では、授業の展開に沿いながら、生徒が自らの学びを確認し、活動への意欲を更に高め、他者との協働を充実するなど、質の高い学習活動を促すことができるように作成することが大切です。
こうしたワークシートであればこそ、指導と評価の一体化の視点から、教師は、記入内容を通して生徒一人一人の学習状況を適切に評価することができるのです。本書の各事例に掲載したワークシートを参考にご覧いただければ幸いです。
なお、学習評価にあたっては、ワークシートへの記入内容だけでなく、「観察」を併用して、あるいは、主たる評価方法として用いることも大切です。先生方の目で、授業中の生徒たちの状況を継続的に観察し、把握していくことも有効な評価方法です。
今回の学習指導要領の改訂では、生徒たちが予測困難な社会の変化に主体的に関わり、人生や社会をよりよいものにしていくために「育成を目指す資質・能力はなにか」が重視されました。今後、人工知能(AI)が飛躍的に進化し、人々の生活様式も変化していくでしょう。しかし、その目的の「よさ、正しさ、美しさ」を判断するのは、人間ならではの豊かな感性や想像力です。また、世界の多様性を理解して、互いに尊重し合えることが、持続可能な未来を創る第一歩と言えましょう。こうした人を育む点でも、音楽科が果たす役割は益々重要になっていきます。
学習評価を適切に実施するためには、新学習指導要領の目標・内容及び新3観点の理解、また、音楽科にふさわしい題材構成、評価規準・評価方法の設定など行い、それを実践に生かすことが大切です。本書がその一助になればと思います。
教育芸術社の教授用資料にて、大熊先生の文章に出会い、このページにたどり着きました。
私自身は、新学習指導要領には共感するところが非常に多いのですが、現場では不満も聞こえてきます。そのような声に対し、どう説明したら良さを伝えられるのか、度々考えておりました。(とはいっても、実際に説明するわけではありません。自分の考えを、人に伝わるように言語化したい、というだけです。)
そんな折に、大熊先生の文章の文章を読み、感動し、音楽教育の世界の広さを感じました。私はまだまだ新人ですが、学び続ける姿勢だけは忘れずにいたいと思いました。
生徒にとって良い教員であれるよう、がんばって参ります。