著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
社会科における資質・能力とは具体的にどんな能力でしょうか?55のスキルを提案します!
北海道札幌市公立小学校教頭朝倉 一民
2022/7/8 掲載
 今回は朝倉一民先生に、新刊『ICTで変わる社会科授業 実践編』について伺いました。

朝倉 一民あさくら かずひと

北海道札幌市公立小学校教頭。2009年日教弘教育相全国奨励賞受賞(個人部門)、2010年・2011年全日本小学校HP大賞都道府県優秀校受賞、2014年日教弘全国最優秀受賞(学校部門・執筆)、2015年パナソニック教育財団実践研究助成優秀賞受賞、2016年北海道NIE優秀実践報告受賞。著書は、『子ども熱中! 小学社会「アクティブ・ラーニング」授業モデル』『主体的・対話的で深い学びを実現する! 板書&展開例でよくわかる 社会科授業づくりの教科書』シリーズ、『主体的・対話的で深い学びを実現する! 社会科授業ワーク大全』シリーズ『ICTで変わる社会科授業 はじめの一歩』(いずれも明治図書)など。

―本書は、大好評をいただいております『ICTで変わる社会科授業 はじめの一歩』の続編です。今回は「ICTで育てる社会科スキル55」がテーマですが、本書の読み方について教えて下さい。

 「はじめの一歩」編は、学校にGIGAスクール構想の1人1台端末が揃ったタイミングでの発刊で、ICTを活用した基本的な社会科での活用を学年、単元ごとにご紹介しました。今回の第2段は「実践編」です。1人1台端末が揃ってから1年が経ち、「何となく使ってはいるけど…」という声も聞こえてきます。ただ使うだけではなく、1人1台端末の活用で,社会科において子どもたちのどんな資質・能力を育成させるか、社会科の「スキル」ごとに実践例をまとめています。

―社会科の学習で身につけるべきスキルという形でご紹介いただいております55の力は、「空間的な問いをもつ力」「知識を働かせる力」など多種多様ですが、このような力を育むよう授業の中に組み込んでいくポイントは何でしょうか?

 そうなんです。社会科で身につけるべき「スキル」は多種多様なんです。でもICT機器を「使うことありき」で授業を計画すると、資料をモニターで大きく提示しよう、端末で学習をまとめようぐらいのことしか思いつかないことが多いです。大切なことは、子どもたちにどんな力を身につかせ、育てたいのかということ。そのためにICTをどう活用すれば効果的な活用ができるかを考えることが大切なのです。

―ICT機器の扱いについては、自宅にあるなしの環境の違いや持っている知識など、子ども達の到達度にも違いが出てくると思います。その点については、朝倉先生はどのように対応されていますでしょうか。

 各自治体で1人1台端末の持ち帰りがはじまっていると思います。家庭に通信環境がない場合は「モバイルルーター」の貸し出しなども行っています。まずは自治体間で差がつかないように行政側で調整するとして、学校側の責任としては「情報教育カリキュラム」の作成があります。どの学年でどのような「スキル」「モラル」「リテラシー」を身に付けるかを教員間で共有することで、子どもたちの能力の差も縮まっていくはずです。また、保護者とカリキュラムを共有することでご家庭での情報教育の意識も高まります。

―社会科の授業で使えるアプリ・機能には、様々なものがありますが、様々な学校環境で使えるもので、朝倉先生おすすめのものがありましたら、教えて下さい。

 私が活用しているアプリでお話させてもらいますと、子どもたちの端末の画面をリアルタイムで一覧表示する「授業支援アプリ」には「スクールタクト(コードタクト)」、「スマイルNEXT(ジャストシステム)」、「MetaMoJi ClassRoom(MetaMoji)」、「ムーブノート(Benesse)」などがあります。子どもたちが手元で調べたWeb サイト、画像、動画などをスライド化し、整理や分析ができるのが「ロイロノート・スクール(LoiLo.inc)」です。また、協働で同時編集ができ、文章の縦書きも可能なので、新聞づくりなどに最適なのは「コラボノート(JR四国コムウェア)」ですね。他にドリルアプリと言えば、「eライブラリーアドバンス(ラインズ)」」で、解説教材が充実しているので、家庭学習にも活用できます。

―最後に読者の先生方へ、メッセージをお願い致します。

 本書の「おわりに」でも書きましたが、これからZ世代の先生たちが現場にどんどん増えていきます。ICT活用も難なくこなすことでしょう。しかし、一方で子どもを見取る、見抜く、見守る目はベテランの先生にはかないません。ベテランの経験と、若手のICTスキルがうまく融合する現場のOJTを組織が作り上げていくことが大切だと感じています。

(構成:及川)
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