- 著者インタビュー
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大学院生の頃から、ずっと関心を持って研究しているのが「発問」です。長崎伸仁先生、桂聖先生のもとで学び続けてきました。本書で紹介していることは、お二人の先生に教えていただいたことばかりです。令和の時代の国語授業においても、「発問」は、国語授業の成否を分ける重要な鍵の一つだと考えています。クラスの皆が参加できる発問、子供の多様さが生きる発問、子供の思考が活性化する発問、子供の発見を支える発問など、子供たち一人一人の学びのペースや個性を生かしながら、協働的に学びを練り上げる授業を目指すための発問を多数紹介し、先生方の国語授業改善のお役に少しでも立ちたいと考えました。
本書の特色の一つが、発問とセットで「指導内容」を示していることです。単にたくさんの発問のアイデアを羅列しただけでなく、「何を読み取る際に有効な発問なのか」「どんな力をつけることにつながる発問なのか」を丁寧に解説しています。国語授業は指導内容が曖昧になりがちです。本書で紹介している発問を、授業の活性化のためにご活用いただくことはもちろん、指導内容が明確な国語授業をつくるためにご活用いただけたら嬉しいです。
最も意識していることは、「直接問わない」ということです。例えば、文章に書かれていること(内容)について確認したい時には、「○場面(○段落)には何が書かれていますか?」とは問いません。「一番〇〇なものは?」のような、文章に基づきながらも、子供たちそれぞれの感じ方や考え方、生活経験などが生きる発問を行い、その話し合いを通して内容の確認をするようにしたいと考えています。文章の書かれ方(表現)についても同様です。着目を促したい表現を取り上げて、「なぜ、このように書かれているのですか?」とは問わないようにしています。「一番〇〇なものは?」「この表現は、別の表現だったとしてもいいですよね?」と仮定的に問いかけることで、その表現の良さに子供たち自身が気づくことができるようにしたいと考えています。
「選択型の発問」に対する話し合いにおいて、ICTの活用が効果的です。例えば、提示した四つの場面の中から「がまくんが一番嬉しかった場面」を選ぶことを促す発問(「お手紙」)。ロイロノート・スクール等で、全員の回答をスクリーンに一覧表示することで、学級の誰がどの立場を選んだかという思考の可視化が容易になります。立場や感じ方の違いに気づき、違いがあるからこそ意見を聞き合おうと、子供たちが学習活動への必然性を実感することにつながります。
本書で紹介している発問パターンや発問モデル、そして各教材の指導内容は、一つの例に過ぎません。本書をご活用いただきながらも、ぜひ、先生方が担任されている子供たちの姿から、授業づくり、発問づくりを考えていただけたらと思います。