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文学の授業は、問いとその問いによる読みの交流がすべてと言っても過言ではありません。その点では前の本と変わらないのですが、取り上げる教材が限られてしまったのが残念でしたので、さまざまな作品を教材とした授業を考えるヒントになればという思いで編集しました。
それぞれの問いは、読みの交流を促す問いの要件に照らして検討されています。ですから、そのまま授業でやってみても良いのですが、教室は生き物ですので、学習者の状況や、これまでの学習の履歴に合わせて、柔軟に問うポイントや問い方を工夫していくことが大事だと思います。どういう問い方が目の前の学習者に響くのかは、教科担任の先生が一番良く分かっているはずです。
限られた分量ですので、そういろんなことを書けているわけではありません。しかし、問いがどのような背景をもって編み出されているのかを知ると知らないとでは大きな違いがあります。本当は、こうした理論的背景を知った上で、それぞれの先生がみずから問いを作り出していく、あるいは学習者自身が問いを作り出していくのが理想です。そうした離陸の準備となるようなものをと思って書いています。ぜひ、「私なりの問い」を生み出してほしいと思います。
文学の後退ばかりが喧伝された感じがありますが、そんなことはないし、あってはなりません。創作の重視とも言われますが、文学の創造力は、読むことそのものにもあるのです。文学を読む楽しみは、孤独な営みのようですが、教室のような他者との交流の中で、その技能的な側面も愉楽の側面もより高まるのだと思います。教室で文学を読んだ経験がその後の人生を豊かなものにするという確信をもって楽しい授業を作ってほしいと思います。
変なセミナーばかりがはやっていますが、教師の本分は地味な教材研究にあると思います。この本をきっかけにして、教材研究を深めていただきたいと思います。教育の基礎学問は、実はすべての学問です。文学にも哲学にも社会学にも自然科学にも読書の幅を広げ、「この授業は自分しかできない」という授業を作っていきましょう。