
近年の「観光熱」の高まりには目を見張るものがあります。背景には、第一に、政府主導の取り組みがあると言えるかもしれません。日本を訪れる外国人の数を1000万人に倍増させようという「ビジット・ジャパン・キャンペーン」に始まり、外国人観光客の誘致に加えて日本人の観光振興をも目指す「観光立国推進基本計画」、そして来月には観光庁が発足する見通しとなっています。観光熱の高まりが教育の分野に与える影響も大きくなってきました。観光系の学部を置く大学が増加し、学生が地域の観光振興に取り組む活動も盛んになっています。
将来、観光に関る仕事に就く人材を育成する大学や、観光そのものについて学ぶ大学が増えています。8月27日の産経新聞の記事にも取り上げられています。この記事によると、政府が「ビジット・ジャパン・キャンペーン」を立ち上げた2003年以降、観光関連の学部・学科を持つ大学数と入学定員は毎年増え続けています。これは、観光熱を受けて観光産業が活性化すれば、観光に関る求人が増加し、観光について学んだ学生の就職も有利になることが予想されるからではないでしょうか。生き残りの道を模索する大学にとって、就職率アップを狙える新たな学問分野である観光は、まさに宝の山と言えるでしょう。
ところで、大学の観光学部では、実際にどのような活動に取り組んでいるのでしょうか。8月27日の読売新聞の記事で、和歌山大学観光学部の新しい取り組みが紹介されています。具体的な活動内容は、学生と教員が、
行政機関から集客状況や地域の課題について説明を受け、高齢者らに昔の様子や体験談を聞く。さらに、住民の案内で観光地や名所、旧跡などを調査する。その後行政や企業、農業、水産業などの関係者と意見交換。
という流れになっており、今月にもこの活動を始めるとのこと。
観光による地域振興を目指す自治体にとっては、学生の視点を取り入れることが新たな観光資源の開発を促し、学生にとって、実地調査を行えることは「観光」を学ぶ上で貴重な経験となるでしょう。新たな学習・研究の場を発掘できるので、大学側にとってもよい機会と言えそうです。
このように、新しい学問としての「観光」が発展しつつあります。また、観光を専門とする研究科を置く大学院も増えており、日本国内の観光振興だけでなく、外国人観光客を増やす活動に力を注いでいます。
世界的に見ると、外国人観光客誘致に遅れをとっている日本。しかし、資源の少ない日本にとって、観光は今後、国を支える産業として大きな可能性を秘めています。幸い、日本では独自の文化が発達しており、そこに魅力を感じる外国人も多いと言われます。また、治安の良さや発達した交通機関といった点も大事な要素となるでしょう。「観光立国」を目指す日本にとって、観光系の学部と卒業生たちの果たす役割は限りなく大きいと言えそうです。
外国人観光客のさらなる誘致のためには日本の通訳ガイドも優秀な人材を確保していかないといけないはずですが、現状はなかなか食える職業ではないみたいですね。