「大学は出たけれど」という映画がありましたが、百年に一度の経済危機といわれるいま、内定取り消しなどの話題を聞くと「就職戦線異常なし」とは、なかなかいかないようです。教育現場では団塊世代の大量退職を控えていますが、首都圏の教員採用試験では競争倍率の低下が続いています。そんななか、「多くの志望者を集め、競争倍率を上昇させることで、より優秀な人材を獲得したい」首都圏の教育委員会、そして採用実績を上げたい大学が新たな取り組みをはじめています。
教員採用の実態
1月18日の記事でもお伝えしたように、教員採用試験の競争倍率は年々低下しています。例えば、東京都の教員採用試験の倍率を過去5年間分みると、採用人数が少なかった19年度を除くとおよそ4〜5倍の間で推移し、21年度は3.6倍となっています。この数字は、都道府県別の倍率で3番目に低倍率であった20年度の4.7倍をさらに下回る数字です(平成20年度公立学校教員採用選考試験実施状況調査の資料(PDF)より)。このような低倍率の傾向は、東京都をはじめとする首都圏の自治体が抱える共通の課題となっています。こういった状況を踏まえ、首都圏の教育委員会が教員志望者の獲得に動き出しました。
東京の先生になろう!! バスツアー
教員志望者の獲得で白羽の矢が立ったのは東北地方です。東北地方は教員採用試験の倍率が10倍を超え、教員希望者にとっては狭き門となっています。1月22日の産経新聞の記事では、東京都教育委員会が小学校教員志望者を対象に開催する学校見学ツアーについて伝えています。このツアー、参加者は世田谷区内の小学校にて授業を参観し、給食指導の様子や現場の先生と懇談しながら、東京の学校現場にふれるというもの。テレビドラマや、マスコミなどの影響で先入観をもって捉えられがちな東京の学校現場を実際に肌で感じてもらい、東京で教員となる人材確保をしようというのが目的のようです。
採用試験会場開設―千葉県
千葉県教育委員会では、20年度の採用試験より受験会場を県内の6会場に岩手大学を加え、東北地方の教員志望者を獲得に乗り出しました。さらに東北地方の人材のみならず、一般受験者を広く集めるためにも、大学からの推薦者に適用される一次試験の免除枠を広げるなど、より受験しやすい環境を整えているようです。
大学側も積極的に支援
首都圏の教員採用の問題は教育委員会だけの話ではありません。1月21日の読売新聞の記事では、弘前大学の教員志望の学生獲得のための埼玉県教育委員会によるPRの様子を報じています。同大学のある青森県は、東北地方のなかでもとくに倍率が高く、20年度の倍率では16.3倍と全国で3番目の高さとなっています。そのため地元の青森で正規採用の教員になるのが困難なことから、首都圏の教員試験も受験する学生がでてくるようになってきました。そこへ採用実績を上げたい大学側が費用を負担するかたちで、首都圏の教員採用試験受験のための貸切バスを運行しはじめました。記事にもあるように合格者のなかには一定数の辞退者はいるものの、実際に教員となる学生も出てきており、大学側としても一定の効果を挙げているようです。
自治体への期待
前掲のきょういくじん記事のように、退職が増えていく一方、教員志望者の数は減少傾向にあります。また教員になったものの休職する教員、また早期に退職する教員も増えています。こういった状況を踏まえ、教育委員会や自治体は、教員として働く上でより働きやすい環境づくりや魅力的な教育政策という面から考えることも重要かもしれません。今後も教員採用の動向に注視したいところです。
無理なんじゃないでしょうか。
モンペアなんて見たことないですとキラキラ笑顔で言う
地方の教員に会って愕然としました。