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ビキニ環礁、文化遺産へ―負の遺産を考える
kyoikujin
2010/8/16 掲載
水爆ブラボー―3月1日ビキニ環礁・第五福竜丸 (母と子でみる)

 みなさんは、お盆休みはいかがお過ごしでしたか。海外旅行をして世界遺産を見てきた、という方もいらっしゃるのではないかと思います。そんな世界遺産に、核実験場としての歴史を有する「ビキニ環礁」が加わることが発表されたと、1日の朝日新聞の記事は伝えています。

世界遺産と負の遺産

 世界遺産には3つの種類があります。文化遺産、自然遺産、文化遺産と自然遺産の両方を兼ね備えた複合遺産です。今回登録が決定したマーシャル諸島共和国のビキニ環礁は、さんご礁でありながら自然遺産ではなく文化遺産として登録されました。この場所で幾多の核実験が行われたという人為的な負の歴史が、世界遺産登録の基準を満たしたことがうかがい知れます。なお、「負の遺産」としての登録であるとよく目にすると思いますが、ユネスコでは「負の遺産」という定義や基準は存在しないようです。

ビキニ環礁のもつ負の歴史とは

 第二次世界大戦直後の1946年から58年にかけて、アメリカはこのビキニ環礁周辺で67回にものぼる核実験を行いました。1954年、原子爆弾の1000倍の威力を持つとも言われる水素爆弾の実験が行われた際、周辺の公海で操業中だった日本のマグロ漁船「第五福竜丸」の乗組員23名が死の灰(放射能を帯びた塵などの降下物)を浴びて全員が被爆し、このうち1名が亡くなりました。他国の数百隻の漁船や周辺の島民などの被害も合わせると、このときの被爆者は2万人を上回ると言われています。水爆実験を行った島は消え去り、今は直径約2kmのクレーターが残っています。第五福竜丸の事件を契機に、日本では原水爆禁止運動が急速に拡大し、翌年には第1回原水爆禁止世界大会が行われました。

 一般的に「負の遺産」と呼ばれるものは、他にも原爆ドーム、アウシュヴィッツ強制収容所、各地の奴隷貿易港などがあります。世界遺産というと、荘厳で見た目に楽しいものも多いですが、この機に負の遺産にも目を向けて一考したいものですね。

この記事は、『きょういくじん会議』の記事を移転して掲載しているため、文中に『きょういくじん会議』への掲載を前提とした表現が含まれている場合があります。あらかじめご了承ください。
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