教師なら必ずマスターしたい《指導技術集》
「指導技術」を意識するかしないかで、ここまで変わる!教師なら絶対に身につけておきたい知識や技能を、具体的なエピソードをまじえて紹介。
マスターしたい指導技術集(1)
『教える』という行為が抜けていませんか?
京都文教大学准教授大前 暁政
2013/4/30 掲載
  • マスターしたい指導技術集
  • 教師力・仕事術

ある若手教師の訴えです。

掃除をダラダラしている子に注意したんです。
注意されたのに、掃除がきちんとできないんです。
不満そうな顔をして、ゴミが残っているのに、そのまま掃除を終わっているんです。

 よくある話です。

 教師が注意をしたのに対し、子どもは不満そう。
 そして、掃除はきちんとできないまま。

 もう何度、同じような話を聞いたかわかりません。
 どこの学校でも、どこの県でも、同じような話を聞きます。

 この場面の、何が問題なのでしょうか。

 答えは簡単です。教師の「教えるという行為」が抜けていることが問題なのです。

 この場面、実は、子どもは掃除をやっているつもりなのです。
 子どもにとっては、「掃除とは、ほうきを動かすこと」「大きなゴミを集めること」という意識なのです。
 でも、教師にとっては、違います。
 教師にとって掃除とは、「単にほうきを動かすだけでなく、小さなゴミも集めること。隅々までほこりをとること」なのです。

 つまり、子どもの掃除に対するイメージと、教師の掃除に対するイメージがまったく違っているのです。

 だから、教師に注意された子どもは「自分はちゃんと掃除をしていたつもりなのに」と不満そうなのです。
 前提が違う状態で注意をするから、不満が残るのです。

注意をするのではなく、先に掃除のやり方を教えるべきだったのです。

 「教える」という行為は、口で言うだけでは不十分です。

 「教える」ためには、@お手本を示しAポイントを説明しBやらせてみてCほめて助言する(できているところはほめて、できていないところは助言する。)というステップを踏まなくてはならないのです。

 『教える』の中身は、

お手本を示し→ポイントを説明し→やらせてみて→ほめて助言する

のすべてを含みます。

 このことを意識して指導できている教師が、どれぐらいいるでしょうか。

最初から掃除のやり方を知っている子どもは減ってきました。

 おそらく、家庭で掃除のやり方を教えてもらう機会が減ったのです。
 だったら、学校で教師が教えるしかありません。

 注意する前に、教師は自問してほしいのです。

掃除のやり方を、正しいやり方を、一度でもこの子に教えただろうか。

 教えるのが教師の仕事の根幹部分です。
 この根幹部分ですら、知らないとできないという事実に、毎年出会っています。

大前 暁政おおまえ あきまさ

昭和52年生まれ。岡山県の公立小学校教諭を経て、京都文教大学の准教授(理科教育)として赴任。理科の授業研究が認められ「ソニー子ども科学教育プログラム」に入賞。著書に、『子どもを自立へ導く学級経営ピラミッド』『プロ教師の「折れない心」の秘密〜悩める教師への50のアドバイス〜』『プロ教師直伝! 授業成功のゴールデンルール』『プロ教師の「子どもを伸ばす」極意―学級&授業づくりマスターBOOK―』『スペシャリスト直伝!板書づくり成功の極意』『スペシャリスト直伝!理科授業成功の極意』(以上、明治図書)、『必ず成功する!授業づくりスタートダッシュ』(学陽書房)、『NHKおじゃる丸 クイズでおじゃる 目指せ小学校クイズ王』(執筆協力、NHK出版)などがある。
著者HP:『大前暁政の教育』

(構成:及川)
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