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多くの子どもの発言を引き出すには?
これまでの国語授業
良さ・相応しさなど、“物事の正しさ”を問う
教師は、より多くの子どもが考えたくなり、発言したくなるような発問の仕方を多く持っておきたいものです。
その一つが「否定発問」です。
普通、発問は「〇〇が良いのはどうしてですか。」や「〇〇が相応しいのはなぜですか。」などと、物事の正しさを問うことが多いでしょう。
国語の授業においても、「筆者の説明の仕方はどんなところが良いですか。」などと発問し、説明の工夫に気付かせることがあります。
このような問い自体は全く間違いではないのですが、問題は「正しさ」や「良さ」を真っ向から述べられる子どもは少ないということにあります。
国語科指導技術・ニューノーマル
「正しさ」ではなく、「間違い」を考えさせる
「否定発問」では、「〇〇の良くないところはどこでしょうか。」とか「〇〇はどこがダメですか。」のように発問をします。
つまり、子どもに「ダメ出し」をさせるのです。
子どもは(子どもに限らず大人も)、「ダメ出し」が好きで得意です。教師が黒板に書く字を間違えようものなら、すかさず指摘してくるのが良い例でしょう。
「正しさ」を説明するよりも、「間違い」を説明する方が得意なのです。
この習性を授業でも活用します。
先に挙げた「筆者の説明の仕方はどんなところが良いですか。」という発問を変え、筆者の説明の工夫を省いた文章を作成し、「この文章ではどこが分かりにくいですか。」と問うと、より多くの子どもから意見が出されるようになります。
「否定発問」の有効性について、詳しく知りたい方は拙稿(土居正博(2019)「小学校説明的文章指導における既有知識の再構成を促す発問の研究―「否定発問」を中心に―」『国語科学習デザイン』2(2),pp1-11)を参照されたい。
ここがポイント!
- 多くの子どもの発言を引き出したいときには、「否定発問」が有効である。
- 「間違い」を指摘させるようにすると、子どもは意欲的に発言する。
既有知識や経験と結びついた読みを引き出すには?
これまでの国語授業
叙述に基づいて考えさせること一辺倒になっている
既有知識や自身の経験と結びついた読みは、自分なりの読みであり、文字面だけを捉える読みよりも深く、重要な読みです。これができると、自分なりの感想や考えを持つことができ、文章内容を深く理解することもできるでしょう。このような読みは、学習指導要領においても重要視されています。
普段、子ども達に「叙述に基づいた読みをしてほしい」という願いを持ちながら国語の授業をする教師は多いかと思います。
そのような読み方は、本文に書かれていることを正確に読み取るときには重要です。
しかし、解釈をさせていくときには、「本文にこう書いてあるから」という叙述重視の読みよりも「自分としてはここが一番驚きで……」とか「自分もこういう経験があって……」などと、読者である子ども「自身」と結びついた読みを積極的にさせていきたいものです。
とはいえ、このような既有知識や経験と結びついた読みを引き出すのは、なかなか難しいことでもあります。
そこで私が意識しているのは、発問に「一番」や「あなたは」という言葉を組み込むことです。
国語科指導技術・ニューノーマル
「一番」や「あなたは」という言葉を組み込んで、その子らしい読みを引き出す問いも入れていく
「一番」を決めるとき、人はいい加減に決めず、自分の知識や経験を総動員して決めます。また、「あなたは」という言葉によって、作者とか筆者とか友達とか他の人ではなく、「あなた」という意味が強調されるのです。
例えば、物語文では「あなたが豆太の気持ちを一番分かるなぁ、というのはどこ?」と発問します。すると、子どもは自然と本文の言葉を自分の知識や経験と結びつけながら、最も豆太の心情に共感する箇所を探そうとするのです。
説明文でも「あなたが一番なるほどなぁと思ったところはどこ?」などと問うと、子ども自身と結びついた読みが多く出てきます。
ここがポイント!
- 子どもの「自分自身」が出てくるための工夫をする。