長瀬拓也プロデュース エキスパートが教える!とっておきの授業スキル
ベテラン教師のコツを強力執筆陣がリレー連載! 学級・授業がもっとうまくいくヒミツ、教えます!
エキスパートが教える!とっておきの授業スキル(10)
子どもの生活に生きる「道徳」を目指そう!
小学校教諭長瀬 拓也
2015/3/5 掲載

長瀬:第10回は道徳、中嶋郁雄先生です。先生は、「叱る、ほめる」ことなどでたくさんのご著書があります。どうぞよろしくお願いします。

道徳「知識」を「実践」にうつす力を育てよう!
中嶋郁雄先生

現代の学校は、いじめ問題や情報モラルなど様々な課題を抱えています。課題の解決のカギは、「道徳的実践力」を身に付けさせることです。そのためには、「(道徳的)知識」を「(道徳的)実践」にうつす力を育てなくてはなりません。早ければ平成30年度から、教科化される見通しとなった道徳。今後、道徳教育のさらなる充実が求められています。

スキル1「反省文」で、自律の心を育てる

 「反省文」と言っても、用紙はB6大の簡易なものです(資料1)。例えば、当番の仕事を忘れたら、「当番の仕事と私」。授業中おしゃべりをしたら、「おしゃべりと私」といった具合に、些細な反省点を文章に残していきます。ほとんどの子が一日に何枚かは、この反省文を書くことになります。
 この反省文のポイントは、何も言わずに用紙を子どもに手渡すことです。「ここが悪いから反省せよ」と、教師から反省を強要しないことです。最初子どもは、「何を反省するの?」という顔をします。そして気づきます。「先生の話を聞いていなかったからだ!」と。そのうち、「私は(僕は)、『反省文的行動』をしてはいないか?」と、自分で気づき・考えるようになっていきます。

例
▲資料1

スキル2「理想と現実」を実感させる

 反省文「○○と私」は、ひと月もすれば、かなりの量になってしまいます。反省文は、子どもごとに封筒に入れて教師が保管しておき、一ヶ月後に、子どもたちに返却します。
 まず子どもたちは、自分が書いた反省文の数の多さに驚きます。さらに、「反省内容の仕分け」作業をさせます。すると、同じ事柄で繰り返し反省文を書いていることに、子どもたちはショックを受けます。
 ここからが、子どもたちの揺り動かしどころです。
  * * *
 「いじめは、いけないと思う人?」
 全員手を挙げます。
 「では、いじめを絶対にしないと、言い切れる人?」
 目の前の反省文を見つめながら、誰も手を挙げることができません。
 「どうすれば、いじめを防ぐことができるか。考えていきましょう。」
  * * *
 そう言って、授業を終えます。結論は求めません。「理想と現実のギャップ」を、子ども自身が実感できるように、学級経営や道徳教育で、一年間をかけて教えていかなくてはなりません。それが、道徳的知識を道徳的実践力に変えるために必要なことだと、私は考えています。

スキル3「強さ」を考えさせる

 道徳的実践力を身に付けるためには、「強さ」について考えさせ、少しずつ鍛えていく必要があります。周囲の雰囲気に流されない「強さ」自分の信念を貫く「強さ」です。実は、今どきの子どもは、ここが最も弱いと感じます。「孤立するのは嫌だから、自分の本意ではないけれど、その他大勢の意見に従っておこう」と考えている子がたくさんいます。現代のいじめは、まさしく、空気に逆らえない弱さ、長いものに巻かれる弱さが、子どもを支配していることから起きています。
 偉人と言われるどの人も、自分に負けない強さ、周囲から孤立しても信念を通す強さを持ち合わせています。そこで、様々な偉人の生き方を紹介して、「本当の強さとは何か」、考える機会をつくります。たとえ10分間であっても、「強さ」について、毎日継続することで、教室に、友達の目を気にして、自由に活動できないなどの「空気」がなくなっていきます。

成功に導くポイント
  • 「子どもは、失敗するから成長する」という考え方で、日々の学級経営や授業を進めよう!
  • 正論や理想論は、小学生でも知っており、論じられる。正論や理想論で終わらせることのない道徳授業を目指そう!
  • 特に道徳を教えるときは、教師の人間性が試される。日ごろから、教育観・人生観などを考える機会を持つようにしよう!

長瀬:中嶋先生ありがとうございました。次回は体育科のとっておきスキルを城ケア滋雄先生にご紹介いただきます。どうぞお楽しみに。

中嶋 郁雄なかしま いくお

1965年、鳥取県生まれ。奈良県公立小学校勤務。
「子どもが安心して活動することのできる学級づくり」を目指し、教科指導や学級経営、生活指導の研究に取り組んでいる。子どもを伸ばすために「叱る・ほめる」などの関わり方を重視することが必要との主張のもとに、「叱り方研究会」を立ち上げて活動を進めている。
『叱って伸ばせるリーダーの心得56』(ダイヤモンド社)『その場面うまい教師はこう叱る』(学陽書房)『教師の道標』(さくら社)『子どもを伸ばす叱り方』(PHP)他、著書多数。

(構成:林)
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