12日の 時事通信記事によると、文部科学省は現行の指導要領で高校に移行統合されていた「イオン」や「進化」などを、中学内容に復活させる素案をまとめたとのこと。内容、授業時数ともに大きく削減され「ゆとり教育」の一つの象徴だった中学理科。それだけに、「イオン」などの復活を盛り込んだ今回の素案により、新指導要領の学力重視の方向性が改めて明示されたといえるだろう。
現行の指導要領で高校へ移行統合や削除されていたのは、「イオン」「進化」の他に、「比熱」「電力量」「仕事」などで、理科全体の小項目数でいえば、81から50へと大きく削減されていた。この指導要領が告示された当初から学力が低下するとの懸念が示され、削除事項の復活を望む声も多かった。削除事項を盛り込んだいわゆる『検定外教科書』も発刊され大きな反響を呼んだ。それらの声を受けて、平成15年には 指導要領が一部改訂され、削除事項の多くが「発展的学習」として、18年度の教科書から取り上げられることになった。
この「発展的学習」、必要に応じて指導してもよいという扱いだが、多くの先生が授業で実際に触れているそうだ。というのも「イオン」などは、内容的にたしかに難しいものの、難しいからこそ理科の面白さを伝えられる単元だからなのだろう。また、「イオン」などを教えないで表層の現象だけを教えるのでは、理科が単なる暗記になってしまうという声も非常に多かった。
こう書いてくると、今回の「イオン」の復活などは大変素晴らしいことに思えるが、現行の指導要領を大幅に改訂する以上、しっかりとした現状分析と反省が必要だろう。現指導要領のねらいは、ゆとりある時間の中で「目的意識をもって観察、実験を行」い、「科学的な見方、考え方」を育成することにあった。「ゆとり」はさておき、このねらいそのものは、現在もなお継続すべき課題だろう。新指導要領での改訂が、単なるゆとり教育からのゆりもどしではなく、日本の理科教育の前進となることを期待したい。
だから、やはり難しくても、物事の原理を教えてあげるということが興味関心を深めるには必要なんだと思います。