大野桂の算数熱中授業づくり
わかった! 楽しい! そんな子どもの声が教室に響く算数の授業をつくりたい。 発問、板書から子どもの意見の取り上げ方まで、学級全員を熱中させる工夫やアイデアを大公開!!
大野桂の算数熱中授業づくり(7)
面積を二等分しよう(5年「面積」)
子どもの思考に沿った、どの子も自然に取り組める【課題】
筑波大学附属小学校教諭大野 桂
2013/12/25 掲載

熱中授業づくりのポイント

  1. 子どもの思考に沿った、どの子も自然に取り組める課題
  2. 「教師が教えやすい」ではなく、「子どもが学びやすい」授業を

 5年「面積」の学習で、求積の際に必要となる「倍積変形」のアイデア。多くの子どもが気付き、活用できるかというとそうでもなく、気付く子どもは気付くし、気付かない子どもは気付きません。結果として、自分は気付くことができなかったけど、気付いた仲間の発表を聞き、同意することで問題解決に至ることができた…という、他人任せの学習に陥ってしまいかねません。
 今回は、そんな倍積変形のアイデアに子ども自らが気付き、問題解決に向かえるようにするための、ごく簡単な工夫を紹介します。

1 子どもの思考に沿った、どの子も自然に取り組める課題

 導入では、面積を求めることはせず、まずは倍積変形のアイデアを見いだすことに焦点化するために、「面積を二等分する」という活動を仕組みます。具体的には、平行四辺形の面積が二等分されるように、1本の直線で分割する方法を考えさせます。

平行四辺形の面積を、1本の直線で二等分しましょう。
図

 ここで行う、面積を二等分するという活動は、逆にとらえれば倍積変形です。倍積変形とは、もともとは存在しないもう1つの同じ形を組み合わせること、つまり、「ないものをあるとみる」ことですから、思考レベルはかなり高いものであると言えます。一方で、倍積変形の逆である、面積を二等分するという活動は、「あるものを2つに分ける」ことですから、どの子にとっても自然で、ぐっと取り組みやすくなります。
 具体的な子どもの反応は、以下の通りです。

合同な2つの三角形に分けられたよ!
図

合同な2つの台形に分けられたよ!
図

 上のように、1本の直線で二等分すると、2つの合同な図形に分割されることになります。このことを逆にみれば「合同な三角形や台形を2つ組み合わせれば、面積が2倍の平行四辺形になる」と言えます。
 このように、面積を二等分するという活動が、倍積変形という図形の見方を養うことにつながります。

2 「教師が教えやすい」ではなく、「子どもが学びやすい」授業を

 この課題を通して、平行四辺形、三角形、台形の面積の求め方を統合的に理解させることができます。
平行四辺形の面積は…

・合同な三角形2つ分
・合同な台形2つ分    
   ↓
・三角形の面積=平行四辺形÷2
・台形の面積=平行四辺形÷2

平行四辺形の面積さえ求めることができれば、三角形の面積も台形の面積も求めることができるんだね!

 私は、どの子も思考が切れず、自然な学びの流れの中で形式を自ら獲得できる授業をつくりたいと考えています。確かに、教科書の順を追って指導すれば形式を理解させることはできます。しかし、それがどの子にとっても自然な学びの流れかと言えば、そうではありません。
 「教師が教えやすい」ではなく、「子どもが学びやすい」、そんな授業づくりを意識したいものです。

大野 桂おおの けい

1976年東京都生まれ。東京学芸大学卒業。私立高等学校、東京都公立中学校、東京学芸大学附属世田谷小学校を経て、2010年より筑波大学附属小学校教諭。
日本数学教育学会編集部幹事、教育出版教科書『小学算数』編集委員、全国算数授業研究会常任理事、使える授業ベーシック研究会常任理事、『算数授業研究』編集委員。
筑波大学附属小学校算数部ブログ

(構成:矢口)
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