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「ボールクルクル」という運動だった。小学校2年生の体育授業「多様な動きをつくる運動遊び」の実践で、峯川治久先生(船橋市立若松小学校、当時は金杉台小学校)の授業を見学したときのことである。子どもたちは、テンポよく展開される授業にひきこまれていく。私も、いつしか峯川先生の準備したしかけと言葉とで授業にひきこまれていった。
「ボールクルクル」という運動は、両足を開いて立ち、股下を8の字になるようにボールを回すという運動であった。子どもたちは、始めは少し戸惑っていたようだが、すぐにボールを8の字に回しはじめ、目をキラキラと輝かせながら、楽しく学習活動をしていた。
その活動を終えて先生は、「『こんな風にやるとうまくできるよ』とは、どんなこと?」と発問した。
子どもからは、「ボールを通すときに、ボールがくるのを準備して(受ける手で)待っている」、「ボールを手に乗せる感じでやる」という答えが出た。
「ボールがくるのを準備して待っている」という回答には、驚きと感動を覚えた。こんな答えのできる子どものすばらしさ、それを引き出した峯川先生の授業の展開にである。キラキラした子どもの輝きは学習活動中に表れていたが、その思考活動が表現されたとき、その輝きがいっそう強くなった瞬間だと感じた。
体育学習は、学習内容の明確化が問われている。「何を」学ぶのか、活動する運動を意味のある端的な言葉や文字にすると、どのような表現になるのか、といったことである。授業者自身には、これまで以上に取り上げる運動と向き合うことが求められよう。そして、学習内容を確かめることができるのは、授業実践によって得られる子どもの言葉や文字である。
このような授業実践の場に私を居合わせてくれた峯川先生への感謝の気持ちと、多くの現場の先生やキラキラと輝く子どもたちとともに、学習内容の明確化に向けて、さらに取り組んでみたいとの思いがこみ上げてきた瞬間だった。